ソーダを手にした主人公が、ソーダを振った回数でどんなことになるのか…? 発想の飛躍が楽しい絵本『ふりすぎちゅうい(作:もとよし ともこ 絵:ドーリー 発行:文芸社)』を紹介します。
ソーダを10000回振ったらどうなる…⁉
絵本『ふりすぎちゅうい』は、「ふりすぎにごちゅういください」と書かれたソーダを手にした主人公の少年とネコが「10かいふって ソーダを あけたら……シュワシュワの みずでっぽうに!」という誰もが想像できるところから100回、500回、1000回、10000回振ったらどうなるかを想像した世界が描かれていきます。どんどんスケールが大きくなっていったり、人々の役に立つことになってみたりと、発想が広がっていく様子が楽しい絵本です。

読み手の想像力をふくらませる構成
絵本では見開きの最後に「〇〇かいふって ソーダをあけたら……」と書かれ、ページをめくると次の見開きで主人公が想像した世界が見えるようになっています。子どもと読んでいるときに「〇〇回振ったらどうなるかな?」とページをめくる前に一緒に想像しながら読むと、より物語の世界を楽しめます。

作者のもとよし ともこさんに特別インタビュー!
未来:絵本はもともと好きだったのですか?
もとよし ともこさん(以下、もとよし):絵本はもともと好きでした。とくに五味太郎さんやミッフィーなどが好きで、子どもが生まれてからは、赤ちゃん向けの絵本に触れる機会が増えました。擬音語しかない絵本や色、数字に反応する子どもを見て「こんなに反応するんだ!」と驚き、選書の幅が広がりました。自分が選んだ絵本が必ずしも子どもにヒットするわけではないので、いろいろ試しましたね。夫も「絵本に関しては制限なく買ってもいい」というスタンスでした。
子どもとの会話が作品誕生のきっかけに
未来:「ふりすぎちゅうい」の絵本のアイデアはどうやって生まれたのですか?
もとよし:これは子どもとの会話から生まれた作品です。子どもには炭酸飲料を飲ませたくなかったのですが、年長さんになった頃に「何飲んでるの?」と聞かれたので、「飲んでみたら?」と勧めてみました。最初はびっくりしていましたが、今は普通に飲めるようになりました。その中で「ソーダを振ったら泡がたくさん出るんだよ」と話しているうちに、「もっとたくさん振ったらどうなる?」「プールになったらおもしろいね!」といった会話でアイデアがどんどんふくらんでいきました。絵本の中での発想は私が考えたものですが、アイデアは私一人ではなかなか出ないものなので、子どもとの会話がよいきっかけになっています。
未来:子どもの頃の発想ってすごくおもしろいのですが、大人になると子どものようにいかないと思います。大人になってからも、子どもが考えるような発想を持ち続けるには何が必要なのでしょうか?
もとよし:我が家は下の子が2歳なので、日常的に絵本と接する機会がいまだにあります。また、「おかあさんといっしょ」のような教育テレビも見ているので、そういった環境が影響しているかもしれません。子どもが生まれたのをきっかけに絵本用の物語を書き始めましたが、振り返ってみると小学校の頃から絵本作りのような遊びをしていました。漫画家になりたいとも思っていて、自分で紙に絵を描いて物語を作っていました。大人になってもやっていることは変わらないんだなと、思い出しました(笑)。
未来:文章を絵本にしていくうえでとくに工夫したところはありますか?
もとよし:こだわった点として、あえて「何回振って」という部分を前のページに置き「どうなるか」を次のページに持ってくることで、次に何が起きるのかを期待させる仕組みにしました。この構成により、ページをめくる楽しみが増えたと思います。文章を作ったときはこの形式ではなかったのですが、あえてこうすることで読み聞かせがしやすくなり、紙芝居のように「何が起きる?」と期待感を持たせる本になりました。
相棒のネコは絵本になるときに生まれた!
未来:絵本では主人公の少年と一緒にいるネコの表情や動作がとてもかわいくて楽しいです。こちらは文章を書いたときからいたのでしょうか?
もとよし:最初、男の子の話としてしか考えていなかったのですが、絵本になるにあたってイメージを聞かれた際に、男の子だけでは物足りなくて冷静な第三者が必要だと思い、ネコを登場させることにしました。家のイメージも団地の家っぽい感じがいいとか、冷蔵庫にすぐ手が届く台所がいいとか、具体的なイメージを共有しています。
イラストレーターのドーリーさんはネコの表情が豊かで、意地悪な顔や困った顔など、男の子に負けないくらい良い表情を描いてくれました。

想像をふくらませて、続きの物語を考えて楽しんでほしい
未来:どのくらいの年齢のお子さんから読んでほしいですか?
もとよし:絵本を作ったときに気が付いたのですが、ソーダを飲んだことがない子は「振ったら泡が噴き出す」ということがよくわからないんです。なので、ご家庭にもよると思いますがソーダを飲んだことがあるお子さんにおすすめです。また、ソーダのことがわからない子でも、数字が増えていくのを楽しんだり、ネコの動きを楽しんだりしているお子さんもいると聞いているので、それも楽しみ方のひとつです。
未来:どんなふうに読んでほしいですか?
もとよし:絵本を読んでくれた友だちのお子さんが新たな作品を作ってくれたんです。タイトルは「のみすぎちゅうい」。たくさん飲んだら頭からお花が咲いたり、顔が真っ赤になったりするという内容でした。そんなふうに遊んでくれるのが理想です。絵本の真似をして、自分なら何に注意にするか、何千回振ったらどんなことが起きるかなど、自由に発想を広げて遊んでほしいです。自分のページを増やしてもいいし、自由に楽しんでもらえたら嬉しいです。絵本をきっかけに、そんな遊びのきっかけになればと思っています。
お話を伺ったのは…もとよし ともこ さん
秋田県出身。東京都在住。複数の企業でコピーライター、ライターの経験を積む。子育てをきっかけに創作活動をスタート。「絵本テキスト創作塾」で学ぶ。第24回えほん大賞ストーリー部門にて本作が大賞に選ばれる。
「未来へいこーよ」スタッフの注目ポイント
「ふりすぎちゅうい」を読んだときに、自分が子どもの頃、寝る前によく父が昔話をアレンジして聞かせてくれたことが記憶の底からよみがえってきて「親子で想像をめぐらせながら物語をつむいでいくという体験はよかったなあ」と思い返しました。この絵本は「次はどうなると思う?」「どんなことが起こったらおもしろい?」と子どもに聞きながら、読んでいくと想像力がふくらんで楽しいです。何回目かの読み聞かせのときには、子どもに違う展開のアイデアを聞いてみるのもおすすめです。そうしたアイデアがたまっていくと、インタビューにあったようにオリジナルの展開が作れるようになるかもしれませんね!
大人になると、現実を見る機会が多くなることもあって、想像力を飛躍させることができなくなってきます。「そんなわけないよ~!」と知識や理屈が思考のフタをしてしまうんですね。だから子どもが考えたアイデアには「それはおもしろいね! どうなっちゃうんだろう?」と肯定しながら続きの世界を一緒に考えてみると、子どもだけでなく大人にとっても子どもの発想をきっかけに新しい発見につながる、楽しい読書の時間になると思います。
それにしても僕が子どものときに父がしてくれたオリジナルの昔話は、本当におもしろくなかったんですよね…(笑)。今となっては子どものほうにアイデアをゆだねたほうがよかったのかもしれないと思っています(KAZ)
『ふりすぎちゅうい』

本体1,760円(税込)、著:もとよし ともこ 絵:ドーリー 発行:文芸社
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