幼魚水族館

「小さな体に詰まった壮大なロマンを感じて欲しい」館長・鈴木香里武さんが語る幼魚水族館の楽しみ方

漁港で幼魚をタモ網ひとつでつかまえる岸壁幼魚採集家の鈴木香里武さんが「幼魚」をテーマにした水族館を静岡県駿東郡清水町にあるショッピングセンター「サントムーン柿田川」にオープン! 鈴木香里武さんに直接お話を伺って幼魚水族館の魅力を紹介するとともに、実際に館内を見たおすすめポイントをお届けします。

幼魚水族館 鈴木香里武さん

駿河湾の漁港を再現!ゴミすら利用する幼魚のたくましさ

未来:念願の水族館のオープン、おめでとうございます! 鈴木香里武さんは以前「岸壁採集の幼魚展」の監修を担当されて話題になりましたが、幼魚水族館ではどんな展示が見どころになっていますか?

鈴木香里武さん(以下、香里武):「岸壁採集の幼魚展」は期間限定のものでしたが、ここでは常設の水族館として作りまして、名前の通り幼魚が中心の水族館です。幼魚は、普通の水族館ではバックヤードにいて表に出ることは少ないんです。この幼魚水族館では、さまざまな幼魚が持つ「小さな体に詰まった壮大なロマン」を感じていただきたいと思います。

未来:水族館の設立にあたり「海の手配師」としても有名な有限会社ブルーコーナー代表・石垣幸二さんにご協力をいただいたと伺っています。

香里武:石垣さんとはもう20年来の付き合いでして、僕が小さいころから漁港に這いつくばって「ようぎょ! ようぎょ!」と言っていたのを知っていたので「そんなに言うんだったら、香里武の頭の中を具現化しよう」ということで、今回のお話をいただいたんです。

ブルーコーナー 石垣幸二さん

写真は幼魚水族館のプレオープン時の石垣幸二さん。「ごきげんようぎょ」のポーズで撮影に応じていただきました。

未来:香里武さんの「頭の中を再現した」展示のなかで、見どころを教えてください。

香里武:入ってすぐのところにあるエリアは、僕が岸壁幼魚採集をしている漁港を再現したものです。まさにいつも僕がはいつくばっている「足元の海」で、身近なところにある「幼魚パラダイス」を表現しています(笑)。ここは個人的に「推し」のエリアです。とくに壁面にある大きな水槽に入っている小さな幼魚をみんなで探すのがおすすめです。

幼魚水族館

香里武:浮かんでいる海藻の中に幼魚が隠れているほか、水槽には実際に港から拾ってきたゴミも一緒に展示してあって、そのゴミにも幼魚が隠れています。

幼魚水族館

漁港を再現したエリアには、鈴木香里武さんが実際にやっているように、上から見下ろすことができる水槽も。

未来:確かに、水族館の水槽に塩化ビニールのパイプやペットボトルなどが入っているのはとても珍しいですよね。

幼魚水族館

ビニール袋と一緒にクラゲの赤ちゃんが浮いています。身近なゴミを巧みに使った幼魚たちの生存戦略がわかる水槽です。

香里武:ゴミは「汚い」とか「悪者」という見せ方だけではなくて、そのゴミさえも利用して幼魚たちが身を隠して生き残っているという「幼魚のたくましさ」をまず知ってもらいたいです。そこから海の環境問題にも興味を持ってもらえたら、というコンセプトがあります

幼魚と成魚の比較や学術的なコーナーなど、個性豊かな展示がたくさん

未来:漁港を再現したコーナー以外には、どんな展示があるのでしょうか?

香里武:「成魚と幼魚を比較するエリア」は隣同士の水槽に成魚と幼魚を並べていますので「この幼魚が大人になるとこう変わるんだ」というのがわかりやすいと思います。

未来:幼カリブと成カリブが並べて置いてあるのもおもしろいですよね(笑)。

幼魚水族館

香里武:ありがとうございます。それから「幼魚アイドルベスト10」は僕が独断と偏見で選んだ幼魚が展示してあります。

幼魚水族館

未来:これも水族館にはあまりない展示だと感じました。20年以上も幼魚と向き合ってきた、香里武さんの愛が感じられます。

香里武:ほかにも自分の体を守るために毒やトゲを持った危険な幼魚をまとめた展示もおもしろいです。

幼魚水族館

香里武:さらに幼魚のときに海面近くに上がってくる深海生物を展示したエリアもあります。

幼魚水族館

香里武:そして静岡の水産試験場や養殖場などとコラボしたエリアもあります。例えば深海生物のタカアシガニをタマゴから孵化して育てる挑戦的な展示や、アワビやトラフグなどの食べて美味しい海産物の赤ちゃんを、育てている人と一緒に展示しています。

幼魚水族館

食用のために養殖している幼魚を、育てている人と合わせて展示。お名前が入っているパネルは時間によって幼魚の生態などの紹介映像に切り替わります。

中部大学で魚に関する研究をしている武井史郎先生による、幼魚の透明標本も展示。幼魚の体の中をすみずみまで観察できます。

子どもを連れてきたときの楽しみ方は?

未来:大人が子どもを連れて幼魚水族館にきたときに、おすすめの楽しみ方を教えてください。

香里武:ここは一応水族館ですけど、実際に噓偽りがない「海の足元にいる生き物たち」なんです。今まで魚にあまり接してこなかった子どもでも「こんなに身近におもしろい世界があるんだ」という発見につながったらうれしいです。その発見から今まで見てこなかった自然に興味を持ってもらえるような、入口になってくれたらいいのかなと思います。

幼魚水族館

香里武:「ウォーリーを探せ!」という絵の中にいる人物を探す本がありますが、幼魚水族館ではお子さんと「魚(うお)ーりーを探せ!」をやっていただきたいです。水槽の中に隠れている魚を探すだけでなく、魚名板には書いていない魚が入っていることもありますので、いろんな発見があると思います。

幼魚水族館

幼魚水族館の魚名板のイラストはすべて香里武さんによるもの。幼魚愛に満ちたコメントを読むのも楽しみ方のひとつです。

未来:ええっ、そうなんですか!? 魚名板に載っていない魚を見つけて、写真を撮ったりして調べてみるのもおもしろそうですね。

幼魚水族館

香里武:入口近くの漁港を再現した水槽は、今のこの季節の駿河湾の漁港を意識したものになっていますので、季節ごとに入っている幼魚が違います。陸上にある水族館と海がちゃんと連動していることを感じていただけるとうれしいです。

未来:季節ごとに違う幼魚が見られるし、新しい発見があるというのは何度も訪れたくなりますね! ちなみに、大きくなった幼魚は展示できなくなると思うのですが、どうなるのでしょうか?

香里武:幼魚水族館には幼魚の間しかいられないので「卒魚(そつぎょ)」ということで「卒魚式」をします。卒魚した魚たちは全国の水族館に成魚として展示されるようになります。運営に携わっていただいているブルーコーナーの石垣さんは、世界中の水族館にパイプがあるので心強いです。

未来:さすが、卒魚後の進路も万全ですね(笑)! 本日はありがとうございました!

お土産コーナーも充実! 細かな遊び心あふれる演出にも注目

ここからは鈴木香里武さんのインタビューでは伺っていなかったものの、実際に回って気になったポイントを紹介します。まずは幼魚水族館の入口に向かって右側、出口からすぐのところにあるお土産コーナー「幼魚屋」。幼魚に振り切ったお土産コーナーです。

幼魚水族館

注目は幼魚水族館オリジナルのお菓子たちです。本物のリュウグウノツカイの幼魚の長さが実感できるバウムクーヘンなど、見た目がユニークな商品が並んでいます。

これらの包装に使われているのは生分解プラスチックの「バイオニュート」で、使ったあとは水と二酸化炭素に分解されて自然に還るようになっています。さらに印刷は「水なし印刷」で川や海を汚さないようにできています。お土産品も環境のことを考えているとはさすが!

幼魚水族館

幼魚水族館にある、鈴木香里武さんが描いた魚名板のイラストがキーホルダーや缶バッジで販売されています。幼魚水族館でお気に入りの幼魚を見つかったら、ぜひここで購入してくださいね。

幼魚水族館

入口に入ってすぐにある料金表も要チェック! 大人は「成魚」で若魚、幼魚、稚魚と年代別に呼び名が変わっているんです。水族館に入る自分自身も魚になった気分が味わえます。

受付ではスタッフから「ごきげんようぎょ~!」と声をかけられます。「ごきげんようぎょ」は幼魚水族館の合言葉です。スタッフの方にも合言葉が書かれています。

幼魚水族館

受付のスタッフと(鈴木香里武さんも含む)館内で対応してくれるスタッフは、じつはユニフォームのデザインが違います。袖に書いてある「ごきげんようぎょ」も違うデザインです。

幼魚水族館

近くには日本三大清流のひとつ「柿田川」の水源も

幼魚水族館があるサントムーン柿田川から徒歩5分ほどの距離のところに、柿田川湧水群があります。柿田川は日本三大清流のひとつと呼ばれている川で、その水源は雨水や雪解け水が約8500年前の富士山噴火による三島溶岩流を通って、その先端部から湧き出したもの。通り抜けるのに20年以上かかっていて不純物が少ないため、湧き出る場所から見ると「水が青く見える」神秘的な場所です。周囲は公園になっているので、行き帰りに散歩してみるのもおすすめです。

柿田川湧水群

 

鈴木香里武さんが20代のときの達成したい目標のひとつが「水族館を作ること」でした。幼魚水族館はその夢と情熱と愛がふんだんに詰め込まれている水族館で、実際に漁港に行って幼魚を観察している雰囲気が味わえますし、成魚と幼魚を比べてみたり、危険な幼魚たちの生態を知ったりして、出口に出ることには幼魚にとても詳しくなること間違いなしの施設です。さらに香里武さんと魚の研究者や養殖をしている方などとコラボしたコーナーもあって、香里武さんの活動がいろいろなところとつながっていっているんだなあと感動しました。ぜひ子どもと一緒に「足元の海」の世界を満喫してみてください(KAZ)

「幼魚水族館」公式サイト

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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