なっとうを片手で食べたい 原 深唯さん

「達成感は生きがいにつながる」自由すぎる研究EXPO2024「五冠」の高校生が探究をし続ける理由

みらいのたまご
幼少期に見つけた「好き!」を追求して、ずば抜けた才能を開花させた若者にインタビューする人気企画「みらいのたまご」。その卓越した能力で天才・奇才とも呼ばれる人たちが、どのような幼少期を過ごしてその芽を伸ばしているのか秘密を探ります。

全国の中高生が制作した自由研究作品を、さまざまな業種の企業や大学などの多彩な視点から称賛する「自由すぎる研究EXPO2024」の最終審査結果が発表され「未来へいこーよ賞」として「なっとうを片手で食べたい」が受賞しました。そこで受賞者の原 深唯さんに研究のきっかけや、失敗や苦労した経験を重ねながらも研究をやり続けられた理由、子ども時代にどんなことを体験していたのかなどを伺いました。

「自由すぎる研究EXPO」とは?

全国の中高生から自由研究作品(探究の成果物)を募集し、さまざまな業種の企業や大学などで構成される「称賛団体」が、作品の称賛を行うコンテストです。社会の一線で活躍する大人たちが、それぞれの専門領域から多様な観点で生徒の探究を称賛するのが特徴です。

「自由すぎる研究EXPO2024」公式サイト

「なっとうを片手で食べたい」が未来へいこーよ賞を獲得!

「自由すぎる研究EXPO2024」の称賛団体として、子育てサイト「未来へいこーよ(アクトインディ株式会社)」も参加。「次の世代に価値を残せるような、ドキドキやワクワクが詰まった」研究に「未来へいこーよ賞」を贈ることにしました。数々の応募作品のなかから賞に選出したのは、岡山県立岡山操山高等学校 3年の原 深唯(はら みゆ)さんによる自由研究「なっとうを片手で食べたい」です。この研究は「みんなのヨコク賞(コクヨ株式会社)」や「くらし気持ちピカピカ賞(木村石鹸工業株式会社)」などの企業からも金賞を授与され、計五冠を達成しました。

「なっとうを片手で食べたい」とはどんな研究?

原さんは自身が右手の指を負傷していたときに、片手では納豆が食べにくいという経験をして「『食べたいときに、自分で食べることができる』ことが生活において生きがいにもつながる」ということに気づき、片手でも納豆を食べられる自助具(さまざまな理由で身体機能が低下した方が、日常生活をより自立して送れるように工夫された道具や装置のこと)を作ることにしました。

納豆を片手で食べる様子を動画で撮影して分析したり、納豆を食べるまでにどの方向に力がかかるのかを計測したりした結果、納豆パックを開ける、袋を取る、タレを開ける、ほぐして混ぜるのすべての工程で左手を使って固定していることと、タレの袋を開けるときに口やハサミ、カッターだとタレが飛び出てしまうことに気づきました。そこで片手で納豆パックを固定する自助具「なっとうさん」と、タレの袋を固定して開けられる自助具「たれたれさん」を開発。

自由すぎる研究EXPO2024 自助具

写真の中央が「なっとうさん」。写真左右にあるのが「たれたれさん」。パックを支えるかわいい人形を置くことで、日常的に使いたくなるような工夫も

動画や研究発表では、最初に試作した「たれたれさん」は針が長く、タレがそのまま刺さって抜けなったりしたので、改良を重ねて自助具を使いやすく工夫していったことがわかりやすく説明されています。

作品詳細はこちら (外部サイトでPDFが開きます)

受賞の理由
PR動画からして本人の「好き」と「熱意」が伝わる内容でした。「片手で納豆を食べたい!」という自身の欲求からスタートして、試行錯誤を繰り返しながら改善していく様子からも楽しく取り組んでいるのが伝わりましたし、自助具を作成した経験を土台にしているのもステキです。「自分でできたときの達成感は、生きがいにつながる」という思いは、本研究以外にも応用性があり「未来へいこーよ」のテーマにもつながるものだと感じました。

受賞者の原 深唯さんにインタビュー!

「未来へいこーよ賞」を授与させていただいた縁で、受賞者の原 深唯さんにインタビューをさせていただきました。自助具を作るようになったきっかけや、子どものときにしていたこと、ご両親からどんな言葉をかけられて育ったかなど、5冠を獲得した自由研究の源に迫ります。

自助具づくりのきっかけは中学校時代のプロジェクト

未来:「未来へいこーよ賞」の受賞、おめでとうございます。「なっとうを片手で食べたい」の研究は中学校時代に「自助具プロジェクト」を行ったことが先行研究になっていると作品に書かれていますが、自助具を作るようになったきっかけは?

原 深唯さん(以下、原):中学校3年生のときに「未来航路」という探究のプロジェクトが週に1回あったんです。そのときの担当の先生の息子さんであるSさんが、片手麻痺の障がいがあって「みんなと一緒にゲームをするときに、同じように友だちと遊べない」という悩みがあると聞いたんです。そこで私が片手で遊べるコントローラを自助具で作って、友だちと一緒にゲームできるようにしようと思ったのがきっかけです。

未来:探究の時間が中学校3年生のときからあったんですね。片手で遊べるコントローラはうまくできましたか?

原:授業では中身を作るところまではいけなかったのですが、コントローラのデザインを私が行いました。実際にSさんに持ってレビューをしてもらうという経験をさせてもらいました。レビューをしたことで「指が3本動かないだけで、握ることはできる」など、片手麻痺がどんなものかをSさんと直接話をして具体的に聞くことができたのと「デザイン」→「模型作成」→「設計・試作」→「チェック」の自助具作成の効率的な設計サイクルを確立できたのがよかったです。

タレたれさん 原 深唯さん

自助具作成のサイクルを確立したことにより、まずは作ってみて、使いにくいところと対策を検討して新たな試作品を生み出していった

自助具にかわいさを求める理由

未来:「なっとうさん」にかわいい人形がついている理由は?

原:私の自助具は、持ったときに「ほっこりするかわいさ」があることを目指して作っています。私が骨折したときに使った自助具もそうだったのですが、一般的な自助具は蛍光グリーンのような色使いだったりして、使っている人から「人の前で使いたいかと言われると、ちょっと抵抗を覚える」という意見を聞いたんです。それでおしゃれな自助具を作ろうと思って…。おしゃれといってもいろいろな方向性があるので、自分の中では「ほっこりするかわいさ」にしています。

母とは一緒によく討論を行い、父からは意見のよいところを見つけることを学ぶ

未来:実際にお話をしてみると、すごく話しやすく自分の考えをまとめて言葉にできることに驚きました。幼稚園や小学校のときはどんな子どもでしたか?

原:外で遊ぶのが好きで、鬼ごっこやドッジボールを女子とも男子とも関係なく遊んでいました(笑)。今思えば(人見知りせずに)誰とでも話せるというのは、そのような小さい頃の環境もあったと思います

未来:ご両親によく言われていたことやしてもらったことで覚えているものはありますか?

原:私の母は、わからないことを聞いたときも、すぐに答えを教えてくれるのではなくて、どちらかというと一緒になって考えてくれるほうでした。夜ごはんを食べるときにテレビで社会問題やSDGsの話題が出ると「どう思う?」と話題を振ってくるんです。そこで「こういう場合もあるよね」や「じゃあどうすればよかったんだろうね」みたいな討論をよくやっていました。社会問題に対する自分の意見の出し方はおそらく、日常的に自然に討論をしていた習慣からきていると思います。

未来:お父様はどんな方ですか?

原:父は物事のいいところを見つけるのが上手で、どんな意見にもプラスになることを言ってくれます。私がプレゼンや大会に出たときに、前向きな言葉が自然と出てくるのは父の影響が大きいと思います。あとは「未来航路」プロジェクトの担当の先生が「とにかくやってみよう。やってみないとわからないよ」ということをいつもおっしゃっていたことが、私の研究の根底につながっていると思います。(授業では)自助具の研究は試作品の設計図を書いて終わりということがよくあるのですが、実際に作ってみてわかることがたくさんあるんだなということを、先生のおかげで気づかせていただきました。

人を驚かせることと、想像をめぐらせることが好き

未来:これまでに自分の中で影響を受けたマンガや映画、ゲームなどはありますか? あれば自由研究との共通点も教えてください。

原:ミステリー小説やホラー小説が好きで、息抜きによく読んでいます。ミステリー小説と自由研究との共通点は「人を驚かせること」だと思います。私自身、ミステリー小説ではよく驚かされたりだまされたりするので(笑)、プレゼンでも見ている人に驚きや楽しさが伝わるように工夫しています。ホラー小説は読後に「このあとどうなったんだろう?」と思うことがあって、その先を自分で想像してみるのが好きです。自由研究の発表でも、発表時点では完結していないことが多いので、その研究がこのあとの研究や未来にどうつながっていくかを想像してまとめるところが共通点かもしれません。

努力の積み重ねが達成感になり、生きがいにつながる

未来:プレゼン動画でも「達成感は生きがいにつながる」とお話されていましたが、納豆を片手で食べる以外にもそう感じたことはありますか?

原:私は2歳の頃から13年くらいピアノを弾いていて、発表会や大会に出ていました。大会に出るまでの練習の積み重ねが、大会で結果を出すことで昇華された瞬間の達成感は生きがいにつながっていると思いました。

未来:「なっとうを片手で食べたい」という研究をすごく楽しそうに取り組んでいる様子が動画や作品から伝わってきていますが、自由研究や探究をすることにはどんな魅力があると思いますか?

原:研究の内容にもよると思うのですが、自分が今まで研究・開発していたものが実際に動いたとき、自分の理論が現実において正しかったんだって、自分で立証できたときがもう一番うれしいです。レビューしてもらったときに「使いやすい」と言ってもらえるのもうれしいのですが「もっとこうしたほうがいい」と言われるほうが個人的には好きで、その意見があるから研究が伸びていくと思います。たくさんのレビューが自分の研究のひとつに活きてなおかつどんどんいいものになっていく「進化の図」ができあがっていくのが、すごい魅力です。

未来:少しいじわるな質問ですが、一生懸命作ったのに使いにくいと言われて落ち込んだり怒ったりはしないのですか?

原:すべての批判意見を真に受けると、自分の芯がずれてしまうから控えているんですけど、自分で全部試してみて「本当にこれはいいな」と思ったものをレビューしてもらって、直すところがあったら「まだそんな発見があったか!」と思います。自分だけでは見られなかった視点で見てくれているので、それに感動したり奥深さを感じます。

未来:最後に、今後研究してみたいことや、挑戦してみたいことを教えてください。

原:今後は困りごとがある人に直接話を聞いて、その人が持っている本当の悩みを聞いたうえで自助具をデザインし続ける人でいたいです。

未来:同じ片手が使えない人でも困りごとは人それぞれですし、本当の困りごとが解決できたら、その人の生きがいにつながりますね。これからの活躍も応援しています!

取材を終えて
原さんは高校生とは思えないくらい、落ち着いてしっかりとした受け答えができて、とても話しやすかったです。自由研究のプレゼンをしたり、ピアノの大会に出たりと人前に出る経験をしていたこともあって、大人の前でも自分の意見をしっかり言えるのに驚きました。お母様と一緒にテレビで出てきたことについて討論したり、お父様から物事のポジティブな面を見出すなど、普段の何気ない生活が、探究に必要な想像力や最後までやりぬく力に結び付いていたのは、聞いていてすごく納得感のあるお話でした。また、実際に作ってみて、使う人の意見を聞いて自助具を進化させていく姿勢を中学時代から忘れずに持ち続けているのも素晴らしいと感じました(KAZ)

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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