企業が持つ商品力や技術力を使って、子どもたちの学びにつながる取り組みを紹介する「企業発!未来を創る学び場」。第1回はクラシエ株式会社が実施している「知育菓子先生®プロジェクト」を紹介します。クラシエ株式会社のフーズカンパニー マーケティング室で菓子部 係長を務める渋井弘美さんに、プロジェクトが誕生したきっかけや実施したときの子どもたちの反響、今後の展望など伺いました。
■ ねらい
・クラシエ(株)フーズカンパニーの理念である「世界中に笑顔を届ける」を実現するため、子どもたちに楽しい思い出に残る授業を提供することを目指す
・オンライン授業が増えるなかで「子どもたちが楽しむための授業」を探していた小学校の先生から知育菓子を授業で使う要望を受けた
■ 効果
・クラシエの知育菓子で、教育として「授業」ができた
・知育菓子先生®からのアイデアがすばらしく、社内だけでは思いつかなかった授業の幅ができた
・子どもたちにとっても学校の授業の中でお菓子を食べるという楽しさ、特別感が体験できた
知育菓子先生プロジェクトとは?
クラシエの知育菓子®を活用した「子どもたちがより楽しめる授業」を開発するため、授業を考えて実践する先生を募集するプロジェクト。応募された授業案は厳正な審査を行って「知育菓子授業」として採択されると希望の知育菓子を無償でクラシエより提供してもらえます。さらに、そのなかでもとくにすぐれた授業を実践した先生には、クラシエ認定の「知育菓子先生®」の資格が授与され、希望する知育菓子の無償提供など積極的なサポートを受けられる仕組みです。

知育菓子先生は、クラシエが主催するワークショップなどでも活躍しています。
クラシエ「知育菓子先生」公式サイト
【きっかけ】コロナ禍での先生の課題と企業の理念がマッチ
未来:知育菓子先生プロジェクトのきっかけについて教えてください。
渋井:知育菓子先生プロジェクトはクラシエ(株)フーズカンパニーの理念である「世界中に笑顔を届ける」を実現するため、子どもたちに楽しい思い出に残る授業を提供することを目指すプロジェクトです。きっかけとしては、お客様相談センターに「学校の授業で知育菓子を使いたい」という問い合わせが増えてきたことと、コロナ禍でオンライン授業が増えていく中で「子どもたちに楽しんでもらえる授業をしたい」という先生方の声も多く寄せられたことにあります。同時期に、社内でも「学校教材として知育菓子を活用できないか」ということを模索していました。これらの要因が重なり、知育菓子を使った授業コンテンツの作成を始めることになりました。
未来:プロジェクトの実現に向けて、どんな課題があったのでしょうか?
渋井:まず現場の先生方の課題をヒアリングしたところ、コロナ禍で子どもたちの表情が見えにくくなったこと、昨今、40分間集中して授業を行うことが難しくなってきていること、新しい授業を始めるには管理職の説得が大変であることなどがわかりました。
未来:企業側の課題はどのようなものでしたか?
渋井:我々企業側としても新しい授業の開発は簡単ではありませんでした。CSRで「ねるねるねるね」を使った酸性・中性・アルカリ性の授業はやっていましたが、教員免許を持っているわけでもないですし、教育現場が大きく変わる中で、新しい取り組みへの一歩を踏み出すのは難しいと感じていました。
これらの課題解決のため、まずはECサイトで授業用スライドや指導書をセットにした教材を提供する「知育菓子授業プロジェクト」を始めました。ギガスクール構想など教育現場の変化にも対応しつつ、先生方が新しい授業を作りやすいようサポートしています。さらに知育菓子先生という認定制度を設けることで、様々な授業アイデアを集めることができると考えました。
【効果】子どもたちが喜び、五感を通じて体験できる特別感のある授業
未来:実際に知育菓子を使った授業を実施しての反響やよかったところを教えてください。
渋井:「現場の子どもたちが本当に喜んでくれた」というお話はよく聞きます。授業の最後にお菓子を食べられるという特別感があるので、最後まで集中してくれるようです。また、今の小学生はタブレットを一人1台持って授業を受けているので、子どもたち同士のコミュニケーションが薄くなっている面があります。
しかし授業では「クラスで知育菓子を食べたことがある子がいて、作り方を迷っている友だちに教えてあげている」というお話を伺って、知育菓子先生の授業は実際に作って食べるなかで学びの要素を出すことと、子どもたちの手元のタブレットを使って解説する要素があるのですが、アナログの手作り感とタブレットを使って解説するデジタルの両方のよさが出ていますし、子どもたちの成長にとっても大きな要素になっていると感じました。

未来:自分が知っていることを人に教えてあげることは、教えてもらう側だけでなく教えたほうにも思いやりや想像力が身につく体験なので、とてもいいですね。そもそも子どもたちにとってお菓子は遠足のときなどの例外を除いて学校には持っていけないものだと思っているので、学校で教材としてお菓子を食べること自体がワクワクするのもいいですね。
渋井:ほかにも理科の授業では基本的に「絶対に口に入れちゃダメ」と教えますよね。でも、この知育菓子の授業では、粉の状態で少し舐めてみて、どういう感じか、酸っぱいのか甘いのか体験できます。今までは五感で感じることができなかった実験を、五感を通じて体験できるんです。色が変わって膨らむ様子を実際に見て、その原理を体感できることは子どもたちの記憶に深く残り、体で授業の内容を理解してもらうのにすごく効果的だと感じています。
知育菓子先生が少数精鋭の理由
未来:知育菓子を使った授業案を一般の先生から応募し、その内容で知育菓子先生を選出する取り組みはいつから始まったのでしょうか?
渋井:2023年から始めました。初年度は46案の応募があり、6名の先生を認定してます。今年は38案の応募がありました。
未来:結構狭き門ですね。
渋井:弊社としては知育菓子を使った授業に楽しみを感じ、子どもたちに笑顔を届けたいという想いを共有できる先生方と一緒に活動を広めていきたいと考えています。そのため、あまり数を増やさず、質を重視するようにしています。また、先生方にも楽しんで授業をしていただける方を採用していて、あえて人数を絞らせていただいています。昨年より今年のほうが授業案が減っていますが、それは今年から1人1案までにしたためです。
未来:これだけの応募があるのは先生方に注目されているということですね。採用された先生方のイベントはどのように開催されているのでしょうか?
渋井:募集は公式のリリースと、イベントのチケットなどを販売する「Peatix」などで行っています。場所は基本的には本社で開催していますが、今年の夏は4都市(名古屋、大阪、東京、静岡)で開催しました。

未来:地方の先生方も参加されるのでしょうか?
渋井:はい、群馬や佐賀、大阪など、全国から来ていただいています。
【今後】子どもたちと先生、クラシエの「三方よし」の取り組みを進めていく
未来:先生からアドバイスを受けたことで、新しい商品開発につながった例はありますか?
渋井:先生と相談しながら作った商品があります。プログラミング的思考を育てるお菓子と組み合わせた商品「なぞとき!ふしぎなグミ☆ラムネ」です。表現方法や設計の基本は我々で決めましたが、内容やクイズ形式については先生にアドバイスをいただきました。
未来:お菓子屋さんやスーパーでプログラミング的思考が学べる知育菓子が買えるのはすごいですね。今後もこのような商品は増える予定でしょうか?
渋井:知育菓子自体は今後も開発していきますが、知育菓子先生の名前を使った商品開発は考えていません。我々の基本はスーパーで子どもたちが楽しめるお菓子を作ることです。それを使って教育現場に笑顔を届けるのがこの事業の役目だと思っています。教育に偏りすぎず、純粋に楽しんでもらいながら学びがある方が良いと考えています。
未来:先日、取材をさせていただいた知育菓子先生のイベントは、一般の先生方のシンポジウムも兼ねていて、いろんな教育関係の方もいらっしゃっていました。実際の授業の様子を見たり体験したりしたなかで、どんな感想をお話されていましたか?
渋井:「こういう授業もあるんだ」と素直に驚かれている先生もいらっしゃいましたね。あとは来ていただいた先生方も企業と教育の現場をどうやってつなげていくかにすごく意識を持たれた先生方が多く、その一例として取り組みに強い関心を持っているようでした。あとは純粋に「とにかく子どもたちが楽しんでくれる授業をやりたいから見に行きたい」という先生方が圧倒的多かったです。

未来:「ねるねるねるね」を実際に作ってみて「何十年かぶりに食べるよ」とおっしゃっている先生もいました。私も子どもの頃に食べた記憶がありますが、それよりもさらに美味しくなっている印象でした。
渋井:長年開発をしておりますし、味については日々改良しています。取材していただいたイベントでも使った「ねりキャンワールド」では、ソフトキャンディを粘土のように使えるものですが、その色付けは野菜の色素やイカスミを使っています。そこに注目して「色のふるさとはどこ?」という授業をした先生もいらっしゃいます。

ねりキャンワールドを開封したところ。5色のソフトキャンディが入っていて、粘土のように色を混ぜ合わせたり、形を作ったりできる。
未来:シンポジウムに参加された一般の先生方から要望などはありましたか?
渋井:学校の授業は文部省の学習指導要綱に合わせて作られています。知育菓子先生プロジェクトでは現在は無理に合わせてはいないのですが、先生方のほうで学習指導要綱に合うように考えたいとおっしゃる方もいました。また、アレルギーの問題や予算が必要になることが導入へのハードルだと感じているという声もいただいています。
未来:このあたりが今後クリアになっていけば、さらに導入する学校も増えていきそうですね。このプロジェクトを始めて、気づきや実感したことはありますか?
渋井:クラシエの知育菓子が、子どもたちに喜んでもらえる商品だということをあらためて実感しました。私が学校に実際に訪問したときには、子どもたちからさまざまな質問を受け、子どもたちがすごく興味を持っている商品を開発しているんだという自信にもつながりました。先生方からも「子どもたちが最後まで集中して楽しんでくれる」と好評です。子どもたちはもちろん、実施している先生たちも楽しい授業になっているので、三方よしのプロジェクトだと感じています。

知育菓子先生カンファレンスの取材時には、40分の授業を2つ受けましたが、我が家の自閉症の子どもでも最後まで集中して取り組むことができました。
未来:知育菓子先生プロジェクトに対して、社内での評判はいかがですか?
渋井:社内には新しいチャレンジを評価する制度「CRAZY KRACIE」があり、知育菓子先生プロジェクトが昨年大賞をいただきました。取り組みについて報告したときは、社内から多くの反響がありました。他の部門からも応援をいただいており、全国の小学校を対象に今後も広げていきたいです。
取材を終えて
知育菓子先生カンファレンスに、息子を連れて取材しました。「ねるねるねるね」で、最初の粉を水で溶いた段階でさわって匂いをかいで味を確かめて、次に2つの目の粉を混ぜ合わせて膨らませる。その違いなどをまとめていくとまさに「探究」の授業になっているんです。日常でも食べる機会がある知育菓子に、探究の要素が加わって、さらに絵本でストーリーまでついています。授業を受けている子どもたちが楽しそうにしている姿が印象的でした。クラシエの渋井さんにお話を伺い、「世界中に笑顔を届ける」という企業としてのミッションが軸となり、子どもたちの好奇心や想像力、思いやりの心を育むプロジェクトになっていると実感しました(KAZ)

お話を伺ったのは…渋井弘美さん
クラシエ株式会社 フーズカンパニー マーケティング室 菓子部 係長。2018年にクラシエフーズに入社、マーケティング室で知育菓子を担当し、キャンディ担当を経て2022年4月より再び知育菓子の担当に。同年10月より知育菓子授業®プロジェクトを担当。知育菓子への熱意を持った先生とともに新しい授業案を創り、知育菓子授業®の実践例を全国の教育現場に伝えていく活動を行っている。
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