子どもの成長や子育てに役立つ本を厳選して紹介します。今回は「『鬼滅の刃』流強い自分の作り方(井島由佳著、発行・アスコム)」です。(株式会社アスコムから献本いただきました)
「鬼滅の刃」は「強く生きるための教え」の宝庫
マンガ「鬼滅の刃」は週刊少年ジャンプで連載され、コミックスの累計発行部数が累計1億部(2020年10月2日発売の22巻発売時)を突破。2020年10月から公開した劇場版は興行収入でも驚異的な記録を伸ばしている作品です。鬼になった妹を助けるため、鬼を狩る「鬼殺隊」に入った主人公・竈門炭治郎(かまど たんじろう)が、厳しい修行を耐え抜いて成長し、仲間たちと切磋琢磨し合いながらながら、妹を人間に戻す方法を知っているかもしれない「鬼舞辻無惨(きぶつじ むざん)」に迫っていきます。
著者の井島由佳さんは「鬼滅の刃」や「ONE PIECE」「NARUTO」などマンガを使った講義や研修、セミナーなども行うほか、大東文化大学で社会学科を教える助教授で、ママでもあります。その著者が「こんなにも親や教師が伝えたいメッセージが、熱く、わかりやすく詰め込まれたマンガは、ほかにない」と語っています。その理由は「どうすれば、人は強くなれるのか。強いといわれる人は、どうふるまうのか。何を考えているのか」がキャラクターを通して描かれているからです。
生きているうちにはさまざまな困難が待ち受けています。この本には「鬼滅の刃」のセリフやシーンを通して「どんな困難に直面しても、自分の手で未来を切り開き、夢をかなえるための一歩を踏み出せる」ヒントを教えてくれています。
原作の名場面+教育心理学の観点でわかりやすく解説
「鬼滅の刃」には自分の能力を信じることができる感覚「自己効力感」を持ったキャラクターが多数登場します。「自己効力感が高まると、達成した喜びや満足感を得ることができ、次はどういった行動をとろうとか、どんな努力をしようかといった選択によい影響を与えるようになり、相乗効果で自分の能力をどんどん高めていく」ことができます。
本書では鬼殺隊の修行で主人公の炭治郎が絶対に切れないと思っていた大岩を斬ることができたとき、師匠である鱗滝(うろこたき)が「よく頑張った 炭治郎 お前は 凄い子だ…(1巻 第6話「山ほどの手が」より)とねぎらったエピソードを紹介しています。師匠の言葉により成功を自覚し、炭治郎の自己効力感が高まった場面です。その後の炭治郎は成功体験を積み重ねて人間としても、剣士としてもどんどん強くなっていきます。
さらに教育心理学では「同じ宿題をやっているAとBが、毎日の宿題をどういう気持ちで達成しているかでその後の学力の影響に違いが出る」など、実例をあげて補足。実際にマンガを読んでいる人は「あのセリフがそういう意味を持っていたとは!」と作品に対する理解が一層深まり、マンガを読んでいない人にも教育心理学の補足のおかげで内容がわかりやすくなっています。
「未来へいこーよ」スタッフの注目ポイント
子どもの頃って同じマンガを何回も読んでいて、劇中のセリフや場面を克明に覚えているものですよね。僕も幼少期から大人になるまでにたくさんのマンガを読んで、作品内の名セリフを友だちと言い合ったり、必殺技の真似をしてみたり、困難な場面で自分を奮い立たせたりと大きな影響を受けて育ってきました。
「鬼滅の刃」を今読んでいる子どもたちも、おそらくそういう作品の1つになるのではないでしょうか。一方で、一人の親としてこの作品を読んだ場合に、人が殺されてしまう描写があったり(鬼とはいえ)首を切断するなど、子どもに見せるにしては残虐な描写が気になる作品です。
本書を読むと作品に描かれている「確固たる使命感を持って、自分自身を鼓舞しながら物事をやり遂げる」や「自分で考える習慣をつけることで、本物の技術や知識となる『型』を身につける」、「身につけた能力をレベルアップさせていく」「現状を分析し、できることを把握して創意工夫する」ところは、子どものみならず大人も身につけたい「よりよく生きていくための力」なのではないかと感じました。
さらっと作品を読んだだけでは、気がつきにくいところを、本書では丁寧に解説しているので、マンガを読んでから本書を読むとすごく理解度が上がり「鬼滅の刃」の作品自体の印象も変わると思います。息子はまだ「鬼滅の刃」には興味を持っていませんが、読むようになったらぜひ活用したい本です(KAZ)
『鬼滅の刃』流強い自分の作り方
本体1300円(税抜) ISBN:978-4-7762-1083-2
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