自由研究にも最適!深海のプロに聞く、知られざる深海魚の魅力

光が届かない、暗く深い海に住む深海生物たち。ダイオウイカやリュウグウノツカイなど、テレビで深海生物を特集しているのも見かけるようになりました。独自の進化を遂げたユニークな深海生物たちは、夏休みの自由研究にもピッタリ! そこで深海の特徴や深海生物のユニークな生態などを専門家の方にうかがいました。

暗く冷たい「深海」の世界

お話をうかがったのは「深海ブーム」の火付け役であり、沼津港深海水族館の館長を務める石垣幸二さん。あらためて「深海」とはどんな場所なんでしょうか?

「一般的には水深200mより深い海が『深海』と呼ばれます。光が届かないため、暗いうえに水温も低いです。深くなるほど水圧も高くなります。過酷な環境のため生物の数は少ないのですが、1年を通して変化が少ない環境でもあるため、一度この場所に適応した生物にとっては住みやすい環境ともいえます。」

このような厳しい環境で生きるため、深海生物たちは独自の進化を遂げているそう。例えば、暗い中でもエサを探したり、敵から身を守ったりする必要があるため、多くの深海生物が「発光」をしています。

「水深500mを超えると、9割の深海生物が何かしらの方法で発光します。自分で発光するのもいますし、発光バクテリアを自分の体の一部で培養するものもいますね。」

「また、魚は水中で浮き沈みをするため体内に“浮きぶくろ”を持っていますが、深海の水圧ではガスが入った浮きぶくろはつぶれてしまいます。そのため、ハダカイワシなどは浮きぶくろの中身が油脂でできているものがあります。」

浮き袋の中身が油脂でできていると、浮き袋がつぶれにくいのはなぜでしょう?

「これだと水と油の比重の違いにより浮きやすく、ガスと違って水圧の影響を受けにくいんです。環境に適応した機能を持っているんですね。」

なるほど! 一般的な魚のイメージとはかけ離れた姿をみせる深海生物たち。暗い、冷たい、水圧が高い…といった悪条件に適応するための姿なんですね。

次はとくにユニークな生態を持つ深海生物を紹介しましょう。

ユニークな深海生物たちを紹介!

光の届かない深海でどうやって暮らしているのか、まだまだ謎が多い深海生物たち。その中でも暗さや水圧の高さに耐えるため、とくにユニークな生態をもった深海生物について、石垣さんに教えていただきました。

ダイオウグソクムシ

メキシコや西大西洋の海底に生息しているダイオウグソクムシ。ダンゴムシのような見た目でも、体長は20〜40cm、体重は1kg以上というかなりの大きさ。海底に沈んだ魚の死がいを食べるため「海の掃除屋」と呼ばれていますが、「絶食」にも強いのが特徴です。

「深海ではエサとなる生物が少ないため、深海生物たちは絶食に強い特徴があります。とくに絶食に強いのがダイオウグソクムシです。鳥羽水族館で飼育されていたダイオウグソクムシは約5年2カ月の間、何も食べずに生きていました。」

どうして何も食べずに生きていられるのか、どうして何も食べないのに体が大きいのかなど詳しいことはわかっておらず、未だ謎の多い生物です。

サケビクニン

北海道の深海に生息するサケビクニンはウロコがなく、体がとてもブヨブヨ。ウロコが無いのは深海生物の特徴でもあるのだとか。

「水圧が高いため、普通の魚のウロコだと水圧に負けて割れてしまいます。ウロコが無いと体を守れず、病気にもなりやすいんですが、水圧につぶされてしまうよりウロコが無いほうを選んでいるんですね。逆にシーラカンスなど、水圧に負けない固いウロコを身につけている深海生物もいます」

ヒカリキンメダイ

ヒカリキンメダイの特徴はその名の通り光る目。人間で言うと涙袋の位置に発光体があり、中で発光バクテリアを培養させています。1つの発光体に生息する発光バクテリアは1億を超えるそう。

「発光体を半回転することで、光を点滅させることもできます。危険を察知するとパパパッと素早く点滅させて仲間を集めます。小さい魚が集まって大きな魚に見せかけ敵を追いはらう、絵本の『スイミー』のような感じですね。頭のいい魚ですね。」

ミツクリザメ

板状に飛び出した頭が特徴的なミツクリザメ。噛みつくときには鋭い歯と共にアゴが飛び出し、一度見たら忘れられないインパクトです。その恐ろしい姿から英語では「ゴブリンシャーク(Goblin shark:悪鬼のようなサメ)」とも呼ばれています。しかし、顔の怖さとは反対に……

「体は水分が多くぶよぶよしているので、ヤドカリやイソギンチャクにもやられてしまいます。『世界で一番弱いサメ』ではないかと思ってしまいます。」

ヌタウナギ

ミツクリザメの強烈な見た目とは逆に、何も無いゆえにインパクトがあるのがヌタウナギ。目が退化しており、物をかむアゴもありません。

「目が無い、アゴも無い、そしてかわいくないんですが(笑)、 興奮すると大量の粘液を出すのが特徴です。粘液は粘り気が強く、ほかの生物の口やエラを塞いで窒息させるほど。テレビでもよく紹介され、なぜか女性の人気も高いですね。」

続いては、子どもの自由研究で深海生物を題材にする際のヒントをお届けします。

本で調べて水族館に見に行こう

子どもの自由研究で深海生物を題材にする場合、どのように進めたらいいでしょうか?

石垣さんによると、今は深海生物に関する本がたくさん出ているとのこと。さらに実物も確かめるとよいそうです。

「最近は水族館や博物館などで深海生物を取り上げているので、本で深海生物に興味をもったら実物を見てもらえればと思います。沼津港深海水族館にも本を片手に展示を見ている子どもがたくさんいますね。実際に見ることで新しい深海生物との出会いもあるかもしれません。そこからさらに本で調べるのもいいですね。」

また、深海生物について学ぶことは、地球環境について学ぶことにつながると石垣さんは言います。

「深海にも人間が捨てたゴミが沈んでくることがあり、深海生物が食べてしまうことがあります。山から流れてくる川も、海水浴場などの浅い海も、すべて深海とつながっているんです。『深海』はあくまで人間が決めた言葉であって、本当は特別な場所ではないんですね。」

深海は海洋の約8割を占めており、地球上の二酸化炭素を吸収する役割も持っているそう。

「深海は環境が安定しているのですが、裏を返せば1〜2度水温が上がっただけで環境が崩れてしまうことになります。深海生物に魅力を感じたら、彼らがどんな環境で暮らしているのかも知ってもらいたいですし、ひいては地球の生物が暮らすさまざまな環境に目を向けてもらえばと思います。」

深海生物たちの珍しさや見た目のおもしろさを入口にして、深海とはどんな場所か、ほかの場所はどうか…と興味を広げていくと、自由研究の幅も広がりそうですね。まずは親子で水族館に出かけてみてはどうでしょうか。

お話を聞いたのは…
石垣 幸二さん(沼津港深海水族館 館長)
1967年生まれ、静岡県下田市出身。2000 年に有限会社ブルーコーナーを設立。世界各国の水族館、博物館、研究室などに稀少な海洋生物を供給する仕事から「海の手配師」と呼ばれ、「情熱大陸」「子ども科学電話相談」などメディア出演も多数。2011年に沼津港深海水族館の館長に就任。
沼津港深海水族館

ライター紹介
井上 マサキ
1975年生まれ。小学生の娘と保育園の息子を持つ二児の父です。SE時代に会社で男性初の育児休暇を取得。フリーライターに転身後も家事育児を続け「ほぼ主夫」状態に。IT、ネット、スマホが得意分野。路線図が好きで、額縁に入れて飾るほど。

※2016年8月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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