「自分の短所は克服しちゃ絶対ソン!長所もがんばって伸ばしたらアカン」。唯一無二の“水族館プロデューサー“中村 元さんは、厳しい条件があったからこそ逆転の発想でユニークなアイディアを出し、様々な水族館を大人気水族館に再建、リニューアルしてきた。「常識は間違っていると思うことから始める」と話す中村 元さんは、どのように奇跡のアイディアを生み出してきたのか。原点となる子ども時代にまで遡って話を聞いた。(中編/全3回)
もの事には裏道がある、って子どもの頃気づいちゃった
未来: 中村さんがどうやって「逆転の発想」をするのかお話を聞かせてください。
僕ね、子どもの頃、結構勉強できるって思ってたんです。本も好きでした。親が学校の先生で、家にこどものためのいい本がいっぱいあって、よく読んでました。 それなのに、そうじゃないと気付いた。九九でつまずちゃって。記憶力が最悪に悪かったんですよ、九九が。このままじゃコイツはアホだということにされると思いました。
足も遅くてね、それで勉強もできないというんじゃ、ほんとダメじゃないですか。それまで自分は運動より勉強と思って生きてきたのに(笑)。 それであせりまくって、九九を必死で覚えて、好きだった本を読むこともやめてがんばったわけです。でも覚えられなくてね・・・。
ところが必死に九九の表を見ているうちに、途中で気づいたんです。九九って、半分覚えたら、半分は覚えなくていいやん、半分は覚えた九九をひっくり返したら一緒やん、って(笑)。それが、ものには裏道は絶対あるって思った最初でしたね。
自分の短所は克服しちゃ絶対ダメ!長所もがんばって伸ばしたらアカン(笑)
未来:水族館プロデュースでの弱点を強みに変えるという発想はご自身の体験からですか。
自分の弱点はね、認めた方がいいです。そして、克服するのは絶対やめたほうがいい。克服したって元々出来る人には絶対追いつけないですから。 僕、足が遅かったんです。幼稚園児の時に小学校の運動会で大勢の見てる前で小学校1年生の子が単独ビリになって泣きそうな顔で走ってた、それ見て、あの格好悪い子、来年は僕やと。だから恥ずかしい思いをしたくなくて走る練習とかしてました。でもぜんぜん速くなれないわけ。
生卵飲めば足が速くなると聞いて、運動会の日の朝に生卵を2個も食べたら、小1生だから下痢するよね、調子悪くてトイレ行ったりしているうちに肝心の1年全員走が始まっててね。トイレから出てきてその辺でうずくまっていたら先生にお前なにやってんねん、って引っ張ってかれて押し出されちゃった。
しょうがないからすでにみんなゴールしてる校庭をたった一人で走ってたら、それがみんなに大ウケだったんです(笑)。こっちももう、手を振って走ったりしてね(笑)。そしたらヒーローみたいになっちゃった。それで、なんかよくわからないけど、よかったな、と。足遅いのも、めちゃくちゃ遅かったら目立てるんや!って思ったんです。
小学校高学年のときには、長所に頼るのもダメとわかった。僕、子どものころ絵とかマリンバ演奏とか得意でね、金賞もらったりしてました。文章書くのも結構うまくて、読書感想文をコンクールに選出されたりね。そうしたら、三重県で2位だったんです。1位じゃないのが恥ずかしくて表彰式に行けなかった。そして悟ったんです、日本は三重県よりも広い、全国にはすごいやつがいっぱいいるのに、僕なんかじゃ通用せん!と思いました。文章書くことで飯食えるくらいに思ってたのに、三重の時点で2位じゃ日本で勝てないやん!ただの凡才やったやん!と(笑)。
世の中に天才がいるのは知ってます。秀才がいるのも知ってます。秀才って、そこそこ才能あって、そして努力ができるやつ。それも天才の一種なんです。
ボクら凡才はそいつらと勝負したらアカン(笑)。長所で勝負すると天才や秀才がライバルになるんです。違うところで努力しないと。長所を伸ばすと長所天才が次々にライバルとして現れて、現れる度にどんどん強敵になっていく、そんな闘いは凡才にはしんどいからやめたほうがいい。凡才にとっての長所っていうのは、努力しなくてもある程度できることと思っておくのに限るんです。