前回の記事では、脳医学者で東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授に、「知的好奇心」を伸ばすのに最適な自然体験や、自己肯定感の重要性についてお話してもらいました。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授 Photo:Yoshinori Kurosawa
ここからは、実際に子どもの脳の成長(年齢)に合わせた好奇心の育み方を紹介していきます。今回は、小学校入学までの未就学児向けに、取り組み方や健やかな脳を育むための生活習慣について教えてもらいました。
【子どもの「好奇心の育て方」特集】
Part1 伸びる子どもの共通点とは?
Part2 好奇心を育む「自然体験」
Part3 年齢別「好奇心」の育て方(この記事)
Part4 小学生が身につけるべきスキルとは?
0歳~1歳:愛着形成に繋がる「感覚」領域が発達
子どもの脳はすべての領域が同時に発達するわけではありません。ですから、成長過程にあわせたアプローチをすることで、子どもの能力を効率的に伸ばすことができます。
未来:0歳で発達するのはどのような領域なのでしょうか?
生まれてからしばらくの間は、何かを感じとる領域が発達します。見たり、聞いたり、温もりを感じたり…それらは子どもの愛着形成に大きく影響します。愛着とは、子どもが特定の他者に対して持つ絆のことで、乳幼児期に愛着に基づいた人間関係が存在することが、その後の子どもの心の発達に重要な役割を持ちます
とくに視覚や聴覚は、生まれてすぐに急速に発達します。ですから、この時期に絵本や図鑑で絵や写真をたくさん見せたり、読み聞かせや音楽を聞かせることは、脳の発達に非常にプラスに働きます。
生後半年~2歳:学力の基盤となる「母国語」をインプット
生後半年から2歳くらいまでの間は、母国語をインプットする時期です。母国語の習得は、そのまま学力の基盤となります。生後6~8カ月までの赤ちゃんは親の国籍に関わらず、育った国の言葉を聞き分けられると言われています。そして、10~12カ月頃を境に母語以外の音の聞き取りが難しくなるかわりに、母語の聞き取り能力が格段にアップします。
未来:この時期に日本語と同時に英語学習をしておけば、英語の聞き取り能力もアップするのでしょうか?
日本で育った赤ちゃんであれば、あるときを境に“R”と“L”の音が聞き分けられなくなります。そのかわりに“らりるれろ”の音をよりはっきりと認識できるようになります。よく使う能力を効率的に身につけるため、あまり使わない能力が排除されるからです。英語の環境で育った赤ちゃんであれば、逆のことが起こります。
とはいえ、この時期に無理に英語教育をするのはおすすめしていません。まずはたくさん絵本を読み聞かせて母語をしっかりと身に付け、さまざまな音楽を聞いて耳そのものを鍛えた方が、総合的な脳の力を養う点ではよいと思います。