しつけや子育てに「ご褒美」は本当にNG? 大事なのは親の行動

「お手伝いをしてくれたらお菓子をあげる」「宿題をしたらゲームをしていい」といったご褒美は、ご褒美自体が行動の目的になるので良くないという意見があります。ご褒美をあげることは、子どもにとって本当に良くないことなのでしょうか。こどもの発達心理学に詳しい専門家に聞きました。

ご褒美には2種類ある

ご褒美と言えば、「○○をすれば○○がもらえる」のように、何らかの行動に対して報酬をもらうイメージです。子どもに限らず大人の世界でも、職場でボーナスをたくさんもらうために仕事を頑張るなど、ご褒美を目的に行動することは珍しくありません。

ご褒美とは、人にどんな影響を与えるものなのでしょうか。また、しつけとしてご褒美をあげることは、あまり良くないのでしょうか。

ご褒美による影響は、ご褒美の与え方やその子どもの性格によっても変わるので、一概に良い、悪いと言えるものではありません

こう答えてくれたのは、東京成徳大学こども学部で発達心理学について教える富山尚子教授。

そもそもご褒美は、お菓子やお小遣いなどの物理的なものと、褒め言葉などの精神的なものの2種類に分かれます。どちらにしても、子どもに『自分の中から出てくるやる気』を起こさせるものが、良いご褒美と言えるでしょう」

自分の中からやる気を起こさせるのが良いご褒美

ご褒美をあげたときの子どもの様子をしっかり見ることが大切

「自分の内側から出てくるやる気のことを心理学では『内発的動機づけ』と呼びます。これは、何かのためとか、誰かに言われたからではなく、自分から『これをやりたい!』と思える状態のことです」

「一方で、何かをするとお小遣いがもらえるといったことは、外側からの働きかけによって行動を起こすので『外発的動機づけ』と呼ばれます。子どもにとってより良いご褒美になるのは、先に話した内発的動機づけにつながるものです」

たとえば、もともとお絵かきが好きな子どもが絵を描いている時に、ママが「すごいね!上手だね!」と褒めた場合。

その言葉で子どもの満足度が上がり、「もっと絵を描きたい!」と思えたなら、それは内発的動機づけにつながり、その褒め言葉がとても良いご褒美になったことになります。

ですが、もともと好きでお絵かきをしているのに、「上手に描けたからこのお菓子をあげる!」など、必要以上に物理的なものをご褒美としてあげてしまうと、逆にどんどんやる気がなくなってしまうことも。

ご褒美はあげ方によって、子どものやる気を向上させることも低下させることもあります。大切なのは、ご褒美をあげたときの子どもの様子をちゃんと見てあげることです

「子どもの性格はそれぞれ違います。やる気を高めようと『上手だね!』と褒めても、たとえばシャイな性格の子どもなら、描いた絵を人に見られるだけで恥ずかしくて、絵を描く気持ちが薄れていく場合もあります。だからこそ、どんなご褒美のあげ方が我が子にとってベターなのか、様子を見ながら理解していってあげてほしいですね」

物理的なご褒美がやる気を生むきっかけになることも

物理的なご褒美が有効に働くこともあります

では、基本的には、何かを買ってあげるとか、お小遣いをあげるといった物理的なご褒美は良くないのでしょうか?

「実は、それも一概に良くないとは言えないのがご褒美の難しいところです」

お手伝いをしたらお小遣いをあげるとか、習い事にちゃんと通えたら何かを買ってあげるといった『これをやったらこれをあげる』というご褒美がきっかけで始めたことでも、やっていくうちに子ども自身が『面白いな』『もっとやりたいな』と思えるようになれば、内発的なやる気が生まれて、結果的には良いご褒美になります

たとえば、お小遣い目的で始めたお手伝いでも、「ありがとう。すごく助かったよ」などの感謝の言葉をもらううちに、家族の役に立っていることがうれしくなり、責任を持って自発的にそのお手伝いをするようになることも。

「子どもの場合は、何かを始めるきっかけを大人が与えるケースが多いので、ご褒美を与えた後の働きかけ一つで、その行為そのものを好きになることもあります」

物理的なご褒美がきっかけでも、それが内発的動機づけにつながるようにうまくサポートできれば、結果的に良いご褒美になることもあるのですね。

ポイントは「約束を守る」こと

大事なのは親の行動

あげ方次第で、子どもに与える影響が変わるご褒美。では、ご褒美をあげるときに注意しておきたいことはあるのでしょうか。

「まずはご褒美のあげ方がブレないことです。『このお手伝いをしてくれたら10円』などのようにご褒美を決めたら、それは約束として親がしっかりと守ること。気まぐれに金額をアップしたり、逆にあげなかったりということがあると、子どもが親を信頼しきれなくなります」

「また、気まぐれに金額をアップさせる日などがあると、『この間は100円くれたのに、10円でお手伝いするのはもう面倒臭いな…』と、子どもの中で『やらされている感』が生まれ、『これからは100円じゃないとやらない!』など揉め事につながることもあります」

ほかにも「○○をしないと○○させてあげない」のように、罰を与えるようなやり方も良くないのだとか。

「こうした言い方を続けると、子どもは『自分は○○しないと、○○させてもらえない子なんだ…』と思い、自分に自信が持てなくなります。否定的なやり方で子どもをコントロールすることになるので、子どもは自分をどう肯定していいのかわからなくなるのです」

とはいえ、あまりにも言うことを聞いてくれないときは、ついそうした言い方をしてしまうことも…。でも、たまに「もうっ!」という感じで言ってしまうことがあっても、日頃から子どもとの約束をちゃんと守っていれば、そんなに気にしなくても良いそうです。

ご褒美の効果を勝手に期待しない

最後にもう一つ、ご褒美をあげるときに覚えておいてほしいことがあるようです。

ご褒美の効果を過剰に期待しないでいてほしいんです。子どもは昨日まで夢中だったものに、急に興味を失うということが少なからずあるもの。たとえば、お絵かきが好きな子どもに高価な画材を何かのご褒美としてあげたのに、全然使ってくれないといったこともありますよね」

「そんなときは、『こんな高価なものをあのタイミングであげてはいけなかったな』という反省材料にすればいい。『もう二度と買わない!』などと怒ってしまうと、子どもが萎縮してしまいます

失敗を恐れるよりも、積極的に子どもと関わりながら、どんなご褒美が子どもにプラスになるのか考えていけばいいとのこと。

「習い事などもそうですが、きっかけはご褒美目的でも、最終的に子どもが『やりたい!』と思えれば、コツコツと続けていけるし、それが才能として伸びる可能性もあります。そうした気持ちが生まれるように、ご褒美をあげたときの様子をよく見て、我が子にプラスになるご褒美のあげ方を見つけてあげられるといいですね

ご褒美は、うまく使えれば子どもの「自分の中から出てくるやる気」を生むきっかけに。どんなご褒美が我が子を生き生きとさせるのかよく見てあげることが、「良いご褒美」につながるのですね。

お話を聞いたのは…
富山 尚子先生
東京成徳大学子ども学部子ども学科教授、博士(人文科学)
認知発達心理学を専門とし、人間の感情とその行動の関連について、発達的見地から検討することに興味をもっている。また、子どもや親の環境への適応の問題など、子育てに関わる問題や、「学ぶ」ための心理的要因についても興味をもつ。
東京成徳大学子ども学部

ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

※2017年10月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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