動物とのふれあいが子どもの心の成長に!ペット飼育のメリット

最近はペット飼育可のマンションも増え、犬や猫などを飼う家庭が増えてきていますね。動物とのふれあいは子どもにとって癒しの時間。とはいえ、同時に責任を伴うものでもあります。ペットによる良い影響&飼育時の注意点について、人間と動物との関わりにおける心理学の専門家・中島由佳准教授にお話を聞きました。

ペットへの愛着が育てる「思いやりの心」

ペットを飼うことで子どもにどんな力が身に付くのでしょうか?

「心理学研究の調査では、ペットとの間にちゃんと絆ができている子どもは、そうでない子どもよりも、人への思いやりや温かさを持っているという結果が出ています。ペットとの絆って、そのペットと一緒に遊んだり、散歩やエサを与えたりとお世話をする中で育っていくんです」と中島先生。

ただ家庭でペットを飼っているというだけでは、効果がないのですね。

「世話をしながら一緒に過ごすことで、ペットに対して『愛着』が生まれます。その愛着の気持ちが、自分よりも弱いもの、小さいものを守ろうとする『養護性』を育んで、人に対しての思いやりや温かさという行動につながっていくのです。」

養護性は、2歳くらいの幼児にも芽生えるものだとか。

「例えば、お母さんがどこかに足をぶつけて痛がっていたとします。その時に、大丈夫?とさすったり、慰めようとする行動は、養護性からくるもの。そのような人を思いやる気持ちが、ペットの世話をすることで自然と生まれてくるのです。」

話せないペットの気持ちを察することで優しさが育つ

ペットは気持ちを言葉にして伝えることができません。だからこそ、磨かれる力があると中島先生は言います。

「ペットの世話をするときは、いつもよりエサを少ししか食べないな、なんだか今日は元気がないな…など、ペットの変化に気付き、どうしたんだろう?と考えることが必要です。そして、そうやってペットの気持ちを察することは、『あの子は何も言わないけれど、こんな思いをしているかもしれない』と、人の心を推し量る優しさにつながっていきます。」

また、動物の目を介した『第三者視点』や『客観性』も身に付くと言います。

「例えば、きょうだいでケンカが始まった時、親が『やめなさい』と言っても聞かないけれど、『●●ちゃん(ペットの名前)がびっくりして心配しているよ』などと言えば、ケンカが周囲にどんな影響を与えるのかということがわかり、『ペットから見た自分』を想像して、客観的な視点を持つことができるのです。」

ペットといるとストレスが軽減

中島先生に聞くと、驚くべきことに、ペットを飼っている人はそうでない人と比較して、心臓病など血管系の病気の予後が良いという研究結果もあるのだそう。

「ある研究では、飼い犬と一緒にいると、読書をしている時と同じくらい血圧が下がっていって、飼い主がとてもリラックスしているという結果が出ました。」

「また、人前での暗算のテストでも、友人と一緒にいるよりペットといる方がストレスを感じる値が低いというデータも出ています。人間にとってペットは無条件でそこにいてくれ、裏切らず、自分を必要としてくれる存在として、心に働きかけるものが大きいと言えるのです。」

だから、子どもにとってもペットは、いつも味方でいてくれるきょうだいのような、親友のような、唯一無二のかけがえのない存在になり得るのです。

初めて飼うのにおすすめの動物&飼うときの注意点

子どもの心の成長にさまざまな良い影響を与えてくれるペット。これからペットを飼いたいと思っている子育て世代に、おすすめの動物は何でしょうか?

犬や猫などの哺乳類がベストです。抱いて温かく、一緒に遊んだり、そばにいてなぐさめてくれるなど、愛着が湧きやすい動物ですね。インコなどの鳥類も、甘えてきたり、なでると喜んだり、子どもたちはふれあいの中で優しい気持ちになれますよ。」

子どものアレルギー&ペットの病気に注意!

ただ、ペットを飼う際に気を付けたいのが、アレルギーや病気です。

小児科で子どもの持つアレルギーの検査をしましょう。もしアレルギーがある場合でも、アレルギーが起こりにくい種類もありますし、アレルギーと向き合いながらペットと共存することは不可能ではありません。清潔を心がければアレルギーが軽減することも報告されています。また、ペットには予防注射を必ずするように心がけてください。ペットも家族も健康で幸せに暮らすために大切なことです。」

親の声がけが、子どもがペットに愛着を感じるための第一歩!

また、子どもがペットの気持ちを考えたり、ペットに対して愛着を抱くには、親の声がけが重要だそう。

「エサを食べている姿を一緒に見ながら『おいしそうに食べているね』とか、一緒に遊びながら『かわいいね』とか、なでてあげて『うれしそうだね』とか、親がペットの気持ちを代弁することが大切です。そうすることで、子どものペットに対する愛情は、大きくなっていくのです。『お世話してあげなきゃ』という気持ちも、そこから育まれます。」

ペットの世話も、あくまで親が子どもと一緒にするというスタンスで、子どもに強制するのはやめましょう。『どうしてエサをあげないの?』『早く散歩に行きなさい!』と怒ると、ペットの世話やペット自体にもマイナスのイメージを抱いてしまうからです。」

ペットをただ子どもに与えさえすればいい、ということではなく、親の飼育への関わり方が大切なのですね。

ペットを飼う前に、命を預かる責任について話そう

ペットを飼うには責任が必要、ひとつの命を預かることなんだということを、飼う前に必ず子どもと話しましょう。『〇〇ちゃんだって、毎日お外に遊びに行きたいよね。それと同じで、ペットだってお散歩に毎日行きたいんだよ。』『ご飯を食べられなかったり、お水がなかったり、トイレが汚かったらいやだよね。ペットも人間と同じ気持ちでいるんだよ。』など丁寧に子どもと対話をして、お世話のルールを決めてほしいです。」

安易な気持ちで飼うことを決めるのは、親にも子にも、そしてペットにとっても良くありません。「大切な家族が増える」という気持ちで、しっかり迎え入れてあげたいですね。

ペットロス…必ず来る別れを、思い出に昇華させる

どんなに大切な存在であっても、ペットとの別れは必ず来るもの。子どもたちは『ペットの死』をどのように捉えるのでしょうか。

「だいたい3歳を過ぎると、死に対する悲しみの感情が湧いてくるようです。そして、ペットの死に際して、周りの大人がどう対応しているのかを見ることが、子どもにとって命の大切さを学ぶ大きな経験となります。」

病気のペットに対するいたわり。亡くなった時の悲しんでいる様子。亡くなったペットとどんな風にお別れをするのか。そのような大人の態度を見ることで、子どもは命の大切さや『死』の概念を学ぶのだとか。

大好きなペットの死は、子どもにとってかなりショッキングな出来事。子どもがふさいでしまったときは、親としてどう接してあげればいいのでしょうか。

子どもに『亡くなったペットへ手紙を書こう』と提案するのはいいことです。きっと天国で読んでいるよ、ずっとあなたのことを見ているよと伝えることで、ペットのことを忘れるのではなく、心の中に居場所をつくって良い思い出として留めておく。そうすることで悲しみの気持ちが少しずつ昇華されていきます。」

子どもと一緒に成長していくなかで、思いやりや優しさを育て、命の大切さを教えてくれるペットたち。1人の家族として大切に育て、子どもの成長を見守りたいものですね。

お話を聞いたのは…
中島 由佳さん
大手前大学 現代社会学部 准教授。シカゴ大学大学院Humanities修士課程修了(Master of Art. Humanities)。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(人文科学)。内閣府日本学術会議上席学術調査員を経て2013年より現職。学校での動物飼育が児童の心理的発達に与える影響に関する実証研究の先駆者。著書に『ひとと動物の絆の心理学』(2015年/ナカニシヤ出版)などがある。
大手前大学の紹介ページ

ライター紹介
佐藤 葉月
宮城県生まれ。タウン誌の記者、ブライダル雑誌の編集者を経てフリーランスに。東京オリンピックを含め、子どもたちに夢を与えるスポーツ関連の記事を書くことが目標。月に1回はライブを見に行く音楽好き。海外一人旅にはまり、アジア圏制覇を目論んでいる。

※2017年1月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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