タブレット学習のメリットと、効果的な利用法って?

現在、急速な広がりを見せているタブレット学習。そのメリットや紙学習との違い、効果的な使い方など気になるあれこれを、タブレット学習についての著書を持つ、「東京工業大学」名誉教授で「日本教育情報化振興会」会長の赤堀侃司さんに伺いました。

学校・家庭での普及が加速!タブレットが身近な存在に

文部科学省は2020年までにすべての学校で1人1台のタブレットを使うIT授業を実現するとしており、最近ではタブレットを導入している学校も増えてきました。現時点での普及状況はどのくらいなのでしょうか。

平成26年の調査では、全国の小・中・高校で導入されていたタブレットの台数は7万台でした。それが平成27年には16万台と、倍以上になりましたね。佐賀県の武雄市のように1人1台導入しているところもあります。」

さらに「各家庭での普及数はもっと多い」と赤堀さん。タブレットはすでに子どもたちにとって身近な存在となっているようです。

タブレット学習で子どもの理解度&やる気をアップ!

ではタブレット学習のメリットとは、どんなところなのでしょうか。

「パソコンと違い、タブレットは手で直接触れたりタッチペンを使って操作したりできるので、ノートを使った学習にとても似ています。タブレットならではのメリットとしては、音声や動画など文字以外の情報があるのでより理解しやすいというところ。英語などではネイティブの発音を聞くこともできます。」

「もうひとつのメリットは、勉強をする動機付けになるところでしょうか。子どもたちが勉強のために机に向かうというのはかなりのエネルギーを必要とします。ノートと教科書を開いて勉強をするよりも、自分の五感を使って楽しみながら勉強できるタブレットのほうが、より抵抗なく机に向かうことができます。」

赤堀さんいわく、タブレット学習では「楽しそうだからやってみようかな」と自ら進んで学習する子どもが増えるとのこと。机に向かうことを習慣づけるには効果的といえるでしょう。

ただし、タブレットもパソコン同様、勉強以外のサイトにアクセスできてしまう点に注意が必要です。インターネットの使用環境などはあらかじめ設定しておき、使い方や使用時間をお子さんと相談しておくとよいでしょう。

タブレット利用で学習効果が高まる!?紙学習との違いとは

子どもの学習意欲を向上させるなど、メリットも多いタブレット学習ですが、親として一番気になるのは、学習効果ではないでしょうか。

ここで、タブレット学習と紙学習についての、興味深い実験結果をひとつ紹介します。

実験内容は、タブレットと紙を使いそれぞれ一カ月間算数の勉強をして、成績を比べるというもの。タブレット学習は計算ドリルに子ども1人で取り組み(親は教えてはいけない)、紙学習では従来どおりの勉強法で20分間勉強をする(わからないところは親に聞いていい)という条件です。

「親に聞ける紙学習のほうが学習効果が高そうに思えますが、結果的に成績がよかったのはタブレットを使った子のほうでした。なぜなら、タブレットは何度間違えても、いつも同じように教えてくれるからです。一方の紙学習はというと、親が何度か間違えるとつい怒ってしまう。怒られることで、子どもは『自分はダメな子だ』と思ってしまうのです。」

なるほど、せっかく勉強しているのに怒られてしまってはやる気もなくなってしまいますよね。どんな時でも叱らず、何度も同じように教えてくれるタブレットは、子どもたちの強い味方なのかも。

しかし、学習内容によっては、紙学習のほうが有効な場合もあるのだとか。

「タブレットは、音声や動画などを使うことでより発展的な学習ができますが、自分で書き取ったことを理解するのに紙学習はとても有効です。ですから、家庭での学習においては『時間割』を作り、タブレットを使う学習と、教科書やノートを使う学習の両方を取り入れることが大切です。」

オススメは、自室ではなくリビングでの学習

最近では「リビング学習」がいいと言われますが、タブレット学習も、リビングでするのが効果的とのこと。

とにかく見守ることが大切です。子どもがタブレット学習をしているときには、親も家事など自分の仕事をしましょう。子どもは親が仕事をがんばる姿を見て、自分も勉強をしっかりしようと思うのです。一番してはいけないことは、タブレットで遊んでいるのではないかと疑うこと。その気持ちはすぐに子どもに伝わってしまいます。」

タブレットは、音声や動画で自分の問いに反応してくれるインタラクティブな道具です。せっかくですから、道具にできることは道具に任せてみましょう。そして親は、子どもを信じて見守ることを忘れずに。タブレットをきっかけとして、子どもたちが学ぶことを楽しんでくれるといいですね。

お話を聞いたのは…
赤堀 侃司さん
東京工業大学名誉教授、(一社)日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長、ICT CONNECT 21会長、(NPO)教育テスト研究センター(CRET)理事、白鴎大学理事、工学博士。主な著書は、「タブレット教材の作り方とクラス内反転学習」(ジャムハウス、2015)、「タブレットは紙に勝てるのか」(ジャムハウス、2014)「教育工学への招待・新版」(ジャムハウス、2013)など。

ライター紹介
飯田 友美
出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

※2015年10月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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