幼児から大人まで楽しめる回文作りのコツ! 言葉遊びで想像力を広げよう【子育て文房具 特別編】

「とまと」「しんぶんし」「たけやぶやけた」この言葉の共通点、何かわかりますか? 上から読んでも下から読んでも同じになる文、「回文」です。今回の子育て文房具企画は特別編! 「文房具プレゼンター」のふじいなおみさんと「回文家」コジヤジコさんのお二人を招いて、回文の魅力に迫ります。コジさんの主催する回文ワークショップにふじいさんが参加されたとのことで、そのときのエピソード、そして実際に回文を作るコツなどを詳しく伺いました。

「回文」は作り方がわかると誰にでも簡単にできる!

ふじいなおみさん(以下、ふじい):先日、コジさんが主催する回文作りのワークショップに小2の娘と参加して、娘も私もとても楽しく有意義な時間を過ごしました。今回はその「回文ワークショップ」のことをお話しようと思って、コジさんに「未来へいこーよ」のことを話したら「ぜひ一緒に!」と言ってくださったので今回はコジさんをお迎えしました。

未来:ふじいさん、コジさん、よろしくお願いします。


コジヤジコさん

1977年生まれ。回文家。
会社員をするかたわら、回文づくりをライフワークとして、ZINEなどを制作。
コジヤジコさん Xはこちら

コジヤジコさん(以下、コジ):よろしくお願いします。今回のワークショップは、東京都目黒区に新しくオープンした「犬みみカフェ」で開催しました。本日は、ワークショップでどんなことをしたかを、実際に使ったフリップの写真とともにお話できたらと思います。

回文ワークショップが開催された「犬みみカフェ」。心に残るひととき 一息つけるひとときを過ごしていただきたいと願うコミュニティカフェとして2023年10月にオープン

ふじい:娘は学校で回文を習ったこともあり、ワークショップに行く前から回文がどういうものかは理解していました。早めに会場に到着したので、娘とお絵描きをして待っていたんですが、そのときに「くもくももくもく」と描き始めたんです。コジさんから「もう回文できてるね!」と褒められ、「はやくやりたい!」とワクワクしている様子でした。

未来:ワークショップはどのような流れで行っているんですか?

コジ:小さいお子さんでも、わかりやすい内容で行っています。

コジ:まず、「回文ってなに?」というところからです。上からよんでも下からよんでも同じ文になるのが「回文」です。

コジ:回文は、「誰にでも作れる」というところがポイントなんです。よく「難しそう」と言われるんですが、基本的な作り方を覚えればそこまで難しくないんですよ。

コジ:キーワードはこれ。「ひっくりかえして くっつけて ひともじたして できあがり!」

コジ:簡単とは言え、回文に「なりやすい言葉」と「なりにくい言葉」があります。なので、まずは「回文になりやすい言葉」を使って、考えてみてもらっています。

まずは「よる」「ぞう」「わたし」「ねこ」「いか」を使って回文を考える

コジ:例えば、「よる」を使ってやってみましょう。まず、「よる」をひっくり返し、それをくっつけて、「よる るよ」にします。そして真ん中にあてはめる文字を考えるんです。

コジ:ここでは「ね」を入れたので、「よる ねるよ」になっていますね。実は「よる」はすごく回文になりやすい言葉なんです。「あ」から順番に入れていってもいいと思います。

未来:「よる あるよ」「よる いるよ」「よる うるよ」。なるほど…!

コジ:だんだん、作れそうな気がしてきませんか?

未来:これなら難しくないですね! 自然と考えてみたくなってしまいます!

コジ:回文になりやすい例題で考えた後は、2文字か3文字ぐらいのご自身の好きな言葉でやってみてもらっています。

未来:ふじいさんは、どんな作品ができたのでしょうか?

 ふじい:娘が考えたのはこちらです。

よる みるよ
ぞう どうぞ
わたしが したわ
こねこ ねこ
いかと かい
みるくと くるみ
なつと つな
いえに えい
たいと いた

困ったときの秘技!左右入れ替え!

ふじい:娘は試行錯誤しながら楽しく進めていたんですが、途中でうまく思い浮かばないときもありました。そのときコジさんからアドバイスをいただいたんです。「言葉の左右入れ替え!」です。

例:「いと」
「いと〇とい」→「とい〇いと」→「といた いと」

未来:ほんとだ。左右を入れ替えるだけで、考えのバリエーションがぐっと増えますね。

ふじい:娘は、「ねこ」を考えているときに「できない~!」と苦戦していたんです。でもこの秘技を教えてもらい、「こねこ ねこ!」と突然ひらめきました。どうやら国語の教科書に載っていたのを思い出したようです(笑)。

コジ:回文は、言葉遊びの一つとして教科書の最後の方に載っていたりするんですよ。

ふじい:なので、小2の娘にとってすごくベストなタイミングでのワークショップだったなと感じました。

未来:そうですね! 私は学校で回文を勉強した記憶はないかもしれません…(笑)。

コジ:最後の方なので先生によってはやらないこともあるようですね。回文は作れるようになるととてもおもしろいので、もっとみんなに知っていただきたいです。

ふじい:そして、ワークショップでは、作った回文をイメージした絵を描くようになっています。そのときの作品がこちらです。

ふじいさんの娘さんの作品。「こねこ ねこ」

未来:おお~、いいですね。回文って少し不思議な文章になることもあるのですが、文字に合わせて絵を描くことで、その不思議な世界が受け入れやすくなる感じがします。

長い回文の作り方は?

コジ:ワークショップでは、次のステップとして、さらに長い回文の作り方も教えています。「わたし」で例を出してみますね。

例:「わたし」
「わたし が したわ」

「が」を二つに分け前後にくっつける

「わたしが 〇 がしたわ」

真ん中に入れる文字を考える

例:「わたしが にがしたわ」 「わたしが さがしたわ」

未来:なるほど…!

コジ:難しく考えるというよりは、どんな一文字を入れると成立するか、面白いかを探していくという感じです。

ふじい:娘は、「みるくとくるみ」という言葉で考え始めました。「みるくと〇とくるみ」に何を入れたかというと…

ふじいさんの娘さんの作品。「みるくと ひとくるみ」

ふじい:「くるみ」を「ひとくるみ」という言葉にして取り出したんです。それがすごいと思いました。

コジ:これはいい回文ですね。そういう風に作っているうちにだんだん変わっていってもいいんです。言葉の意味がまったく変わって、よりおもしろいところに到達したりする。「くるみ」が「ひとくるみ」になったというのはめちゃくちゃいい瞬間だと思います。

回文は偶然の発見

コジ:ゴールを決めてそこに向かうというよりは、「どこにいっちゃうんだろう」と思いながら作っていくのが回文の楽しいところだと思います。例えば、何人かの子どもたちで回文作りをしたとしたら、いつもはその輪の中で目立たない子がすごく輝いたりしますよ。がんばってきれいに作ろうとするほど、言葉の切れ目や区切れが正統派になるというか。予想外な言葉の発見は、計算などの発想とはまた違う頭を使うので、誰でもヒーローになれる可能性があるんです。

未来:なるほど。大人も子どもに負けじと本気で考えてしまいそうですね。案外子どもの方がやわらかい発想も出そうですし。

コジ:そうですね。「大人だから有利」ということはまったくないです。どっちかが優れているといった評価もないので、子どもも大人も対等です。

ふじい:他の人の作品を見るのも、とてもワクワクしたし、刺激になりました。

コジ:僕が回文の好きな要素の一つとして、「発表すること」へのハードルが低いことがあります。例えば、「短い詩を書いて発表してみましょう」となったら、自分自身が試されているようでドキドキしてしまいますよね。でも、回文は「偶然できちゃった」みたいなところが割合として大きいので、たとえそれがどんな表現だったとしても、「発表すること」に抵抗が小さくなる。子どもたちに「やってみて」と言ったら、みんなができた文をちゃんと発表してくれるし、「恥ずかしがってやらない」「見せない」ということは今までにあまりないですね。

未来:たしかに、回文が思い浮かんだら思わず言いたくなってしまうかも。偶然のところも大きい分、「恥ずかしくない」という気持ちは分かる気がします。

コジ:例えば、「わたし」を使ってみたとしたら、「わたし かしたわ」や「わたし さしたわ」などが考えられると思います。「さしたわ(刺したわ)」だとちょっと物騒ですね(笑)。

未来:たしかに(笑)。

 コジ:でも、その物騒な感じがおもしろかったりしますよね。例えば「さした(刺した)」を詩で表現したとすると、「この人大丈夫か?」と心配されるかもしれません(笑)。でも回文であれば、周りの人も「(偶然)できちゃったのね!」という雰囲気になるんです。そして、錯覚な部分もあるけれども、「自分ってこんな表現ができるんだ」と思えてきます。それが回文作りの快感の一歩目じゃないかなと思うんです。

絵を描くことでさらに表現が広がる

未来:回文に合わせて絵を描くのも、すごくいいですね。

コジ:そうですね。「この子に絵を描かせたい!」と思ったとき、意外にもこの方法が最短距離じゃないかと思うぐらい、みんな楽しく絵を描いてくれますよ。「自分の好きなように描いて」と言われたらプレッシャーを感じるし、何を描けばいいか難しかったりする。その点、回文は「なんだこれ?」みたいなシチュエーションも多いので、描きたくなってしまうというか。そして、描いてみたら素直に面白いと思えるものになるので、その場もすごく盛り上がるんです。

未来:「何を描こう?」と悩むところじゃないですもんね。そして、ちょっとおかしなシチュエーションでも絵があると説得力も増す気がします。

コジ:回文を作った本人も、絵を描くことで自分のイメージをより膨らませることができます。ましてや、上手い絵を求めているわけでもないので、ぶっ飛んでいても全然いい。酷評がまったくない世界なので、お互いに絵を見せあったときすごく平和な感じになりますよ。

ワークショップに参加した方の作品。左:「ぞう すみ すうぞ」/右:「ななばん へん ばなな」

未来:できた回文が同じでも、人によって発想するイメージが違う場合もあるかもしれませんね。例えば、「わたしが にがしたわ」を例に挙げてみると、私は刑事ドラマのようなイメージが浮かんだんです。警察に囲まれて「わたしが にがしたわ」みたいな。でも、「猫をにがした」と思い浮かべる人もいるかもしれない。絵を見せあったときに、「なるほど! その『にがした』もあるね」と予想外のことがありそうで、それもまた楽しそうだなと思いました。

コジ:そうですね。不完全であるがゆえに、想像の幅が広がるところはあると思います。

未来:先ほど例に挙がった「わたし さしたわ」も、「傘を差す」とか「将棋を差す」なども考えられますね。人によって捉え方は変わるし、言葉でドキッとさせて、絵でホっとするみたいなこともありそう。

ふじい:言葉遊びだけど、ビジュアルも生まれるのが面白いですよね。シチュエーションまで想像すると表現の幅がより広がります。

回文だけでできた絵本「よるよ」

未来:「よるよ」という回文だけでできた本を出版されたそうですが、コジさんが回文を作りはじめたきっかけは何かあったのでしょうか?

作:コジヤジコ 絵:中山信一 発行:偕成社 本体1,500円+税 
本の詳細はこちら

コジ:元々は「言葉」が好きで、回文だけに限らず短歌なども作っていたんです。作っていくうちに、回文だからこそできる言葉や文章に出会うのが楽しくなっていきました。十数年ぐらい前かな。それでTwitter(現在のX)に投稿し始めたところ、全国の回文をつくる人やイラストレーターの方などとの交流が深まり、創作活動の幅や世界が広がっていきました。

ふじい:この本も、「よるよ」という言葉をキーワードに世界が広がっていっていますよね。

コジ:そうですね。まさに、今日のワークショップをやれば、誰でも作れるかもしれません。真ん中の文字をどんどん入れて替えていくイメージで、物語が展開していきます。回文は音としても魅力があります。「よる くるよ」など、真ん中に音の山がきて、また戻っていく。朗読していてもリズムとしてのおもしろさが感じられるんです。

未来:私は4歳と6歳の子どもがいるんですが、ちょうど今逆さ言葉で遊んだりしています。その延長で、回文にもすごく興味を持ちそうだと感じました。

ふじい:絵本を通して、言葉遊びのおもしろさや不思議にもっと気づくかもしれませんね。

コジ:もちろん回文は、だじゃれ的なおもしろさがあります。でもそれだけじゃなくて、意外にもぐっとくる表現があったりするんです。回文の偶然が生み出す変な感じが、ときに情緒的な方向に進むときがあって。短歌や俳句が、文字数を制限することでより世界が広がるのと同じように、回文の不思議ななんとも言えない表現が、なんて豊かなんだろうと思えたりする。僕はそれがすごく好きなんです。そんな風に回文を見ている人ってあまりいないんですけどね(笑)。

未来:こどく どこ」とか、まさにそうですね。コジさんのX(旧Twitter)にも、すごく心に響く回文があって、ジーンときました。

なら軽くがんばるか、光る番が来るからな。(ならかるくがんばるかひかるばんがくるからな)

 コジ:それは僕も好きな回文ですね。「文学フリマ」というイベントに出展する朝、たまたま出来た回文です。「光る番」って言葉、すごくいいなあと思って。でもその「いいな」は自分が作ったからというのも半分あるんですが、残りの半分は「出会った言葉」というか、「光る番っていいよね」と誰かと会話してるような感じに思えたんです。

未来:言葉との出会い、素敵です。

ふじい:回文の作り方を知ったら、自然と作りたくなっちゃうんですよね。まずはお子さんと、作りやすいキーワードから始めてみるといいと思います。子どもたちはどんどんいろんな言葉でやってみたくなると思いますよ。お休みの日などにやってみると、すごくいい時間を過ごせると思います。

未来:電車などの長距離移動中に作るのもいいですね。

コジ:回文は構想とかいらないので。日常に転がっている言葉で、いつでもどこでも誰にもできますよ。

回文が教えてくれる「正解はひとつじゃない

お二人のお話を伺ったその後、ふと自然と回文を考えている自分がいました。コジさんが「言葉との出会い」とおっしゃっていましたが、まさしくそうで、日常や仕事の中では中々登場しない文章が出来たときは、「ラッキー!」「いいもの見つけた!」みたいな感覚がありました。そして、そういうときって誰かに聞いてほしくなるし、言いたくなる。回文は、日常に何気ない幸せな気持ちをくれる言葉の遊び道具だと思いました。

最近ひらがなを読めるようになった娘。一生懸命回文を朗読していました。隣で聞いていた私は、夢の中にいるような心地いい気分に。決まった正解はないこと、答えは一つではないということ、回文はそんな大事なことを子どもたちに教えてくれる気がします。(osa)

コジヤジコさんXはこちら 
「よるよ」本の詳細はこちら 

コジさんと一緒にお話を伺ったのは…ふじいなおみさん 。文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。

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2人の子育てに奮闘中。レコード会社、タイ古式マッサージセラピスト、PR代理店勤務と様々な業種を経験する。子どもとのおでかけや旅行を楽しみに日々過ごしている。子どもから「ママの特技は怒ること」と言われ、反省することも多々…。

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