ペンをはじめ、ハサミや定規、絵具、カッターなどの文房具は生活していくためになくてはならないものです。とくに「書く」「描く」「切る」などの基礎を学ぶ未就学児や小学校低学年のタイミングで、文房具を楽しく使えるようになれば一生の宝物になることでしょう。そこで、文房具のさまざまな魅力を知っている「文房具プレゼンター」のふじいなおみさんに、子どもと一緒に楽しく使えて、子どもの成長に役立つ文房具を紹介していただく企画です。今回はふじいさんが「子どもへの初めてのノート」のおすすめをご提案いただきました。(石田製本株式会社から献本いただきました)
子どもの初めてのノートに「バイブルサイズのハードカバー」がおすすめの理由
ふじいなおみ(以下、ふじい):今までは「〇〇社の××」とメーカーと商品名を指定して紹介してきましたが、今回は「子どもにちょっといいノートを渡してみる」ことを子育て中のみなさまに提案したいと思います。
未来:そういう切り口もすごく素敵ですね。子どもにノートを渡すとき、なんでも書いていい「自由帳」や、ぐしゃぐしゃに描いてもいいようにチラシの裏などを渡しているご家庭が多いと思うのですが「ちょっといいノート」はどんなものでしょうか?
ふじい:じつは娘が3歳のとき、結婚記念日に夫婦のプレゼントとしてオリジナルノートを作ったんです。もともと2冊作る予定だったのが娘も「欲しい!」と言ったので、結局3冊作って娘にあげました。それがこのノートです。
未来:わあ、かわいい絵がプリントされていますね!
ふじい:この絵は娘が初めて「せんせい」という磁気お絵かきボードで描いた自画像です。それを写真に抜き出して電子データにしたものを布にプリントするサービスでカバーにして、とある個人の製本屋さんにお願いしてノートにしてもらいました。
未来:へぇ~、それは凝ったプレゼントですね。お嬢さんは実際にはどんなふうに使われたのですか?
ふじい:当時はパティシエが主人公のアニメが放送されていたこともあって、オリジナルのレシピを書いたり、アニメのコラボ商品のカレーやふりかけに入っていたシールなどを貼ったりしましたね。それからまだひらがなが上手に書けないけれど、自分だけが読める文字もたくさん描いていました。そのとき、どんな内容を書いていたのかをメモしておけばよかったなぁと後悔しています。あとで見返したら本人ですら読めなくなっていたので…(笑)。もし、今同じようなことをされているお子さんがいらっしゃる方は、内容を聞いて端に書き留めておくのがおすすめです。

ふじいさんのお嬢さんが書いたノートには、数字の練習をしたものも残っていました。
未来:それは惜しいことをしましたね。今も読めていれば何倍もおもしろくなったかも…。でも、そうして同じノートに書いていくようにすると、だんだん上手になっていくのがわかっていいですね。
ふじい:そうですね。私が提案したいのは、そのときに好きだったものや描いたものを集約する「宝箱」のような「思い出を残すノート」です。ハードカバーのノートをおすすめするのは、落としたり踏んだりしても破れにくいからです。また、文庫本より少し大きめのバイブルサイズだと旅行などにも持っていきやすく、それでいて描くスペースが十分にあるのが魅力です。
未来:なるほど「思い出を残すノート」というのはすごくいいですね。でも、ふじいさんが作ったノートは「個人の製本屋さん」ということでしたよね。個人の方にお願いするとお値段が高くなりそうなのが心配です。
ふじい:私の場合は結婚記念日のお祝いに作ったものなのでコストがかかってもよかったという事情もありますし、今はその個人の製本屋さんが休業されているようですので、代わりにちょうどいいサイズのノートを販売している会社を紹介します。北海道にある石田製本株式会社の「booco」シリーズです。
ふじい:「booco」は長年培った「手仕事」の製本技術を文房具に生かしたいという考えから誕生したブランドです。ブランド名の「ぼっこ」は北海道の方言で「棒」の意味で、北海道ではミトンのように親指だけ分かれている「ぼっこ手袋」が知られています。それで「手編みのぼっこ手袋ってすごく温かみがあるよね~」という話が、手仕事を大切にするブランドの名前の元になっています。
ふじい:「北海道にある会社なので、デザインは北海道にちなんだものに」ということで、トウモロコシやジャガイモ、牛乳、ウニなどをモチーフにした「DELICIOUS COLOR hardcover series(写真左)」や「北海道の窓シリーズ(写真中央のクマ・シャチ・モモンガ)」、「沖縄の窓シリーズ(写真右のウミガメ)」がおすすめです。同じシリーズでも表紙が違っていて、見比べてみるのもおもしろいです。特徴は製本に「かがり糸」を使っていて、それぞれ違う色で使っているというのが文房具好きにはたまらないこだわりです。

ノートの紙を綴じている「かがり糸」の色が水色→紫→白→黄色と変化。製本会社ならではのこだわりを見つけるのが楽しいノートです。
未来:こういうところは「製本会社らしさ」が光りますね。かがり糸を使うと、色以外にどんなメリットがあるんですか?
ふじい:そうそう、これは本の背の部分を糸を使って綴じていく「糸かがり綴じ」と言われる製本方法で、仕上がりが丈夫になるので辞書や教本などページ数が多いハードカバーの書籍に多く使われています。これなら子どもが少し乱暴に使ってもページが破れにくいです。同じくらいのサイズのノートを探すと、リングノートがよくあるんですけど、リングノートは構造上破けやすいので、子どもが使うのには「糸かがり綴じ」のものがおすすめですね。
未来:なるほど、勉強になります。
ふじい:製本屋さんが作ったノートなので、紙へのこだわりも素晴らしいんです。表紙に近い色4色の紙がグラデーションのようになっていて美しいんですよ。
未来:使い進めていくうちに色が変わっていくのはおもしろいですし、北海道の食べ物に興味を持つきっかけになりそうです(笑)。
ふじい:そんな素敵なハードカバーのノートなのですが、1点だけ子どもが使うにしては惜しいところがありまして…よく見るとミシン目が入っているんです。
未来:そうか! メモを書いて誰かに渡したりできるようなんですね。
ふじい:先ほど言ったリングノートよりは切れにくいですし、横から引っ張ったりしたくらいでは切れないのですが、ミシン目に気づくと子どもでも切り離せてしまいます。子どもが気づくとおもしろがってやってしまうかも…という心配はありますね。
未来:ミシン目以外は、ふじいさんにとって子どもへの最初のノートに理想的なんですね。「booco」シリーズのなかでは「北海道の窓シリーズ」と「沖縄の窓シリーズ」も素敵なノートです。ハードカバーの中央にテーマとなっている動物の形の穴が開いていますし、表紙に描かれているイラストが凹凸で描かれていますね。こういう遊び心は大人も好きな人が多いと思います。
ふじい:こちらもハードカバーでバイブルサイズ、「糸かがり綴じ」を使っているので丈夫で破れにくいノートです。イラストレーターの高旗将雄さんとコラボしたシリーズで、ハードカバーのイラストもかわいらしいです。紙の色は白で統一されています。ミシン目はこちらにも入っていますが、「DELICIOUS COLOR hardcover series」と見比べて気に入ったノートを選んでみてはいかがでしょうか?
未来:大人と子どもで同じシリーズの違うものを持ってみるのもいいですよね。
ふじい:大人と同じものを持つのって、子どもにとってもワクワクすることですし、いいですよね。文字やお絵描きに興味を持ち始めた幼児期(3~5歳)くらいなら、表紙など自分のこだわりもそれほど強くない子が多いので、この時期に「初めてのちょっといいノート」をプレゼントする文化ができたらいいなあと私は思っています。幼稚園や保育園で作った折り紙なども貼ったりできますし「今、好きなもの」がいっぱい詰まったものができあがりそうです。ちなみに私が結婚記念日に作ったノートは、もったいなくてなかなか使えなかったのですが、娘は潔くどんどん使ってくれていました(笑)。
適度な厚みとサイズで長く使えるノート
石田製本株式会社の「bocco」シリーズを実際に手に取ってみました。「北海道の窓シリーズ」と「沖縄の窓シリーズ」は表紙にかわいい動物の穴が開いていて、その抜き取った部分もついています。これは、型はめパズルのように元の位置にはめこんで使うこともできます。表紙のイラストが凹凸で描かれている点も特徴で、手で触るのが気持ちいいです。サイズは新書版とほぼ同じ大きさで厚さはカバー含めて約14mmです。サコッシュなどにも入りますし、子どもの手提げかばんなどにも入れられます。
「DELICIOUS COLOR hardcover series」は、ひと回り大きく、厚いのが特徴。写真のタイプは、カバーに光沢があってツルツルしていて、こちらも触り心地がとてもいいです。色が徐々に変わるので、何回もページをパラパラとめくってしまいます(笑)。色ごとに違うテーマに分けて描いてももいいかも。どちらも紙の厚みがあるので、筆圧が高い子どもが使っても裏移りしにくいのがいいですね。実物に触ってみると「子どもだけでなく、僕も欲しいなあ」と(笑)。親子でセットで買ってもいいですし、まず自分用に1冊買ってみて、気に入ったら子ども用を検討してみるといいと思います。
「表紙が直接描けるノート」を抽選で10名にプレゼント!
文房具プレゼンターのふじいなおみさんが「今回の記事を読んで、オリジナルカバーのノートが欲しくなった方が、ノートを入手できるようにしたい」と石田製本株式会社さんに相談したところ、「表紙に直接描けるようにしたノート」を製作して「未来へいこーよ」の読者に10冊ご提供いただけることになりました! こちらも表紙がハードカバーになっていて、さらりとした手触りです。クレヨンや色鉛筆などで名前やイラストを描けばオリジナルノートになります。
プレゼントが欲しい方は以下の応募フォームに郵便番号・住所・氏名・電話番号と記事の感想を入力してご応募ください。応募の締め切りは9月12日(月)中まで。なお、当選者の発表は発送に代えさせていただきます。
※プレゼントキャンペーンの応募は締め切りました
お話を伺ったのは…ふじいなおみさん 。文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」、 日経BP「日経xwoman DUAL」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。
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