文房具のさまざまな魅力を知っている「文房具プレゼンター」のふじいなおみさんに、子どもと一緒に楽しく使えて、子どもの成長に役立つ文房具を紹介していただく企画です。今回は一問一答形式で大人と子どもがやりとりできる交換ノート「OYAKO NOTE(販売:いろは出版)」です。(いろは出版株式会社から献本いただきました)
「3つの工夫」で楽しく続けられる
ふじいなおみさん(以下、ふじい):「OYAKO NOTE」は端的に言えば「大人と子どもで行う交換ノート」。作ったのは二児のお母さんで、大学で発達心理学を学び、児童養護施設の職員を経て、いろは出版社に入った方です。子育てをしながら仕事をしていて、子どもと接する時間が短くなった経験から「成長における母親の持つ役割や重要さについて考えながらモノづくりをしました」とお話されています。

「OYAKO NOTE」は「ぶんぐ」「はな」「くるま」と表紙が異なる3種類が発売されています
未来:対象年齢はどのくらいでしょうか?
ふじい:公式サイトによれば対象年齢は4歳~8歳。とくに5歳~6歳のお子さんにおすすめと書いてありまして、我が家でも娘が5歳になった次の日に書き始めました。でも、当時の娘はひらがなを読めましたが、書くと鏡文字になったりして、まだ字が上手に書けない時期でした。決して文字が書けないわけではないですが、娘の性格上「めんどくさい」とか「字が分からない」「書けない」と言われてしまって、一度とん挫してしまったんです。
未来:なるほど、対象年齢ではあっても子どもがどれくらい文字を書けるか、書くことが好きかどうかなども始める時期に影響しそうです。
ふじい:それで「OYAKO NOTE」のことはしばらく忘れていたんですが、小学校に通ってひらがなを書けるようになって、漢字も習い始めたので、今年の10月末ごろに娘に再び提案したところ、「交換ノートって楽しそう!」と言ってくれて再スタートすることができました。
未来:よかったです! 実際にやってみて普通の交換ノートと違うところはどこでしょうか?
ふじい:このノートには「楽しく書く、楽しく続けられる3つの工夫」があります。1つ目は「1回10分でOK」ということ。一問一答形式になっています。「今日の質問」を大人が書いて、子どもがお返事を書きます。今度は子どもが質問コーナーに質問を書き、大人がお返事を書きます。それが見開きになっていて、1日の交流になります。
ふじい:我が家のやりとりでいえば、私が「皆既月食は楽しみですか?」と質問したら「はい」とだけ書いてありました(笑)。
未来:それだけですか(笑)。
ふじい:最初のうちはそれでいいんです(笑)。
未来:確かに返事だけでも、一問一答にはなっていますね。でも、毎日やっていると質問の内容がなかなか出てこなかったりしませんか?
ふじい:それが3つある工夫の2つ目「誰でも簡単に続けられる」です。「OYAKO NOTE」には、おすすめの質問や使い方を解説したガイドブックがついています。子どもの質問はノートの中に書いてあって「今日1番楽しかったことはなに?」という定番のものや「もしも魔法が使えたらどうする?」など想像力が膨らむ夢のある質問、「自分の生まれたときのことを教えて」といった、対話のきっかけになりそうな例題をあげてくれています。大人に関しては別冊の資料があって、「誰とどんな遊びしたの?」「好きなお菓子3つ教えて」「赤ちゃんのときのことを覚えてる?」など50個ぐらい質問例が載っています。
未来:なるほど、それはいい工夫ですね。50個も質問例があったら、大人もしばらくネタに困らないですし、そのうちにどういう質問をしたらいいかわかってきそうです。
ふじい:3つの工夫の最後は、「字をきれいに書かなくてもいい」です。「OYAKO NOTE」の一番の目的は「大人と子どものコミュニケーションを大事にすること」なので、間違えても気にすることなく、気楽に取り組めるようになっています。
ふじい:ノートには水色の丸と赤い丸の欄があります。水色が子どもで、赤い丸が大人の欄です。
未来:なるほど、それぞれの欄の大きさが違いますね。
ふじい:大人のほうが小さい文字をかけるので、スペースは少なめ。子どもは書く字が大きいので大きめのスペースになっています。字を間違えたら鉛筆で塗りつぶして続きを書いても大丈夫です。実際にやってみておもしろかったのは、普通の日記だけではなく、何日かに1回「絵を描くページ」があることでした。
ふじい:写真のようにお互いの顔を描きあうページもあります。
未来:子どもがどんな絵を描くんだろうと想像しながら、自分もほかのことをやりながら何を描こうかなと考えたりするのは楽しそうです。そもそも、大人になると絵を描く機会が減ってくるので、趣味や仕事で絵を描かない人は逆にハードル上がるように感じるかも(笑)。
ふじい:私が描いたときも「子どもよりも上手に描かなきゃ!」という軽いプレッシャーがありました(笑)。でも、こういうページがあることで、普段のやりとりの中でも絵が出てくるようになるんです。子どもが描いた絵に「これは何?」と聞いたり、私がポテトの絵を描いたら「お母さん(ポテトの絵に)マクドナルドのマーク描いてる!」など、喜んでくれましたし、コミュニケーションに役立ってくれています。
子どもが返事を心待ちにしてくれる喜び
未来:実際にやってみて、娘さんにどんな変化がありましたか?
ふじい:始めたときからそうだったんですが、子どもが書いた質問に対しての返事をすごく楽しみにしてくれるんです。最初1、2回やり取りをしてみて、こういうものなんだとわかったからというのもあります。返事がもらえるうれしさから「すぐに返事書いて!」と言われます(笑)。
未来:「交換ノート」は本来、相手に預けて1日待つ仕組みですが、家族でやると「直接急かしてしまう」という懸念点がありましたか…。
ふじい:すぐに返事を書いていると、あっという間に1冊終わってしまうので、あえて私は「書いたものを1日寝かせて、学校に行っている間に書いて戻す」という使い方をしています。
未来:返事を待っている間も楽しい時間ですしね。ふじいさんご自身にはどんな変化や発見がありましたか?
ふじい:子どもが学校で習ったという漢字を書くようにしたら、「どの漢字を覚えたんだろう」とか、「この時期はどんな漢字を習うんだろう」ということを知る材料になりました。娘も書かれている漢字を自分で真似て書いたりしていました。
未来:文字や漢字に興味を覚えるきっかけになるんですね。今の学校の授業がどうしているのかはわかりませんが、学校では書き取りや写しながら何回も書くような、文字や漢字を覚えるための練習を少なからず今もやっていると思います。そうなると自分の自由な意思で文章を書く機会って、じつは子どものときって意外にないのかなと思ったんです。「OYAKO NOTE」を使えば自分の言葉を紙に書いて、共有できる体験ができるというのもいいですね。
ふじい:先日祖母に手紙を送る機会があったので、一緒に書いたんですが、中々上手に書けていておばあちゃんも喜んでいました。
未来:続けていると、手紙や作文の苦手意識も減っていくかもしれないです。
ふじい:そうですね。私の実家は札幌なんですが「おばあちゃんちに行ったら何したい?」と書いたら、「こたつに入りたい」「雪遊びしたい!」「そりで遊びたい!」と返事がきて、それを祖母に伝えて準備してもらったりもしています。大人が聞きたいことをうまく聞き出すきっかけになるので、「誕生日プレゼントは何がいい?」とか「サンタさんに何お願いする?」とかにも使えますよね。純粋に「この頃こういうこと考えていたんだ」という記録になるのもうれしいですよね。単純なノートなので、応用もきくし、負担が少ないのがいいポイントです。
未来:仲良しのときはスムーズにコミュニケーションできると思うのですが、けんかしたときや怒っちゃったときはこのノートを書いたことはありますか?
ふじい:ちょうど最近、おでかけ中に約束を守ってもらえないことが多くて、家に帰ってから怒りました。その日はノートは書かなかったんですが、次の朝に「ごめんね」と言いました。こういう日は、ノートに「昨日はごめんね」と書いたり、「こういうところが嫌だったんだよ」という点を書いて伝えるというのもいいですね。大人が怒っているときは、子どもは「怒られた」というショックが大きいので、冷静になったときに「こことここがダメだったんだ」とわかるように書いてあげるのも1つの方法かなと思います。
未来:アンガーマネジメントでもよく言われますが、時間をあけて冷静に振り返れるのもいいところですね。
マンネリ化しにくい自由度の高いノート
未来:今後も「OYAKO NOTE」を使って交換ノートを続けていきますか?
ふじい:冊子もついているし、作りもしっかりしているノートで書きやすいノートなのですが、そのぶんお値段が1冊990円(税込)と普通のノートと比べると高いので、どれくらいまで続けられるのかは少し考えています。毎月買っていくのもいいですけど、徐々に卒業して普通のノートで交換ノートをしてもいいと思います。小学校高学年になると、子どもは大人よりも友だちとの交流のほうが楽しくなってきますし、そういう意味でも「対象年齢が4歳~8歳」という公式サイトの表記は適切だと感じています。
未来:仕事が忙しくて子どもとのコミュニケーションが取れないお母さんが開発した商品ですが、お父さんとやってもおもしろそうですね。普段子どもと会話があまりできていないほうがやればいいと思います。遅い時間まで仕事をしている人でも、子どもが何を書いたか見たくて早く帰ってくるようになったりして(笑)。
ふじい:お母さんとしばらくやって、ひとしきり質問ができたらお父さんとやってみるとか、1冊終わったタイミングなど途中で交換ノートの相手が変わってもおもしろいですね。公式サイトにも「気分にむらがあって、やろうとしない時はどうすればいい?」というときのポイントを3つあげています。1つ目は「無理にしなくていいよ、またやりたいときに書いてねと、やらないことをOKにしてあげる」こと、2つ目は「親が楽しそうに取り組む」こと、「3つ目は、書く内容に変化を。なぞなぞや算数の問題を混ぜて飽きさせないようにする」こと。使い方に正解はないので、家庭ごとに子どもの性格に合わせて使い方ができる、自由度が高いノートです。
子どもに対する大人の「愛情」が目に見える形で残る
ふじいさんのお話を聞いて「文章や絵、質問と回答のやりとりが残るのはとてもいい」と感じました。というのも、手書きの文字にはそのときの気持ちや愛情が込められていると思うからです。子どもの側からしたら、もしも今日怒られるようなことがあったとしても「OYAKO NOTE」を振り返れば、質問に誠実に答えてくれたり、イラストを描いてくれたりと、愛情を注ぎこんだ証にいつでも触れることができ、自分はこんなに愛されているんだということが再認識できる、自己肯定感につながっている文具だと思います。
僕は小学校1年生のときに両親が離婚して、それから母とは現在までほぼ交流がありません。小学校高学年になったあるとき、タンスから幼稚園の連絡帳が出てきました。書かれていたのは今までの怖いイメージの母とは違う、子どもの身を案じたり、幼稚園で息子ができたことを素直に喜んでいる母の言葉でした。それを小学1年生当時の僕が知っていたら、未来は少し変わっていたかもしれません。
また、中学生になってからは、グループで1冊ずつノートを持って担任の先生と交換ノートを行い、僕が質問した内容に返事をもらったときのうれしさを今でも覚えています。僕のために相手が自分の時間を使って書いてくれたことを想像すると、その文章には、やはり「愛情」が乗っていると感じるのです。
7歳の息子がいる現在では、仕事が終わってからも家事育児のゴールデンタイムになり、子どもとあまり遊べる時間がありません。夕方に仕事が終わる我が家でもそうなので、下手をすれば深夜帰宅して子どもの寝顔しか見られないという家庭もまだまだ多いのではないでしょうか。「OYAKO NOTE」は、日々の暮らしで子どもと時間が作りにくい大人が子どもと「愛情のキャッチボール」ができるツールです。しかも、その場だけでなく、あとで見直して思い返すこともでき、文章や絵の形で愛情が残せます。対象年齢のお子さんがいるご家庭は、ぜひ「OYAKO NOTE」で愛情を送り合う体験をしてみてください。
お話を伺ったのは…ふじいなおみさん 。文房具のさまざまな特長・長所をより多くの方々に広める(プレゼンをする)「文房具プレゼンター」として活躍。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」をはじめ、ステイショナー「文具のとびら」、 小学館「HugKum」、 日経BP「日経xwoman DUAL」などのweb連載、動画「イロブンの引き出し開けていこう」など、さまざまなメディアで発信を行っている。万年筆のインクにも造詣が深い。
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