タモ網だけを使い、漁港の足元で稚魚&幼魚を探す「岸壁幼魚採集家」の鈴木香里武さんが、「魚の目」に注目した写真集のような図鑑を発売! 今回は「この目、誰の目? 魚(うお)の目図鑑」(著:鈴木香里武、発行:株式会社ジャムハウス)」の魅力を著者の鈴木香里武さんに伺いました。(株式会社ジャムハウスから献本いただきました)
鈴木香里武さん監修の「岸壁採集の幼魚展」のインタビューはこちら!
ひときわ輝いていたのが「目」だった
未来:「魚の目図鑑」を拝読させていただきましたが、「魚の目」だけにとても目のつけどころがいい図鑑ですね。魚の目をこれまでそんなに意識したことがなかったのですが、ひとつひとつが絵画のように美しいです。
ありがとうございます。そう言っていただけるのが一番です(笑)。これまで出した本のなかで、かつてないほどマニアックなテーマだったので、ダメ元で出版社に企画書を持ち込んだら、なんと実現してくださったという、自分でもびっくりした企画です。
未来:魚の目をすごく観察されてきた香里武さんならではの視点なのだと思います。「魚の目が素敵だな」と思ったのはいつごろですか?
ここ数年、海で出会った魚の写真を撮るようになって、マクロレンズで夜な夜なのぞいていたんです。全身写真はもちろん、正面顔や顔、ヒレのアップなど、いろんなところを撮っていたら、ひときわ輝いていたのが目だったんですね。とくにこのハナハゼという魚の目が、僕が最初に「惚れた」目です。

ハナハゼの目(幼魚)
ハナハゼという魚は全身美しいんですが、目を見たときに「なにこれ! CDの裏側みたいにキレイじゃないか」と(笑)。
未来:なるほど、よくわかる例えです(笑)。こういう絵画もありそうなくらい、芸術的な色と形をしていますね。

ハナハゼ(全身)
それからほかの幼魚の目も見るようになりました。幼魚は体長1~2cmくらいで、さらに目となるとミリ単位のサイズなんですけど、そのなかに「宇宙が広がっている」と感じました。光の入り方によっては宝石のように輝いたり、オーロラのようなものが見えたり、黒目の周りに色彩があふれていたり、幼魚展のときにもお話した「目を守るためにこの模様があるんだ」という発見など、ホントに目だけからも生き様がいろいろとにじみ出てくるなあと気づいたんです。

鈴木香里武さんのおすすめの魚のひとつ、サツマカサゴの目。まるでマッスルポーズを取っているような形に見えるが、じつは丸い目に虹彩被膜(こうさいひまく)という膜が垂れ下がっていて、外からは目の形に見えないようにしている
岩に擬態している魚などは地味で、全然キレイというイメージがないんですけど、目だけ見てみるとてもキレイで、そのギャップもおもしろいんです。一般的な図鑑にある全身写真では気づきにくい魚の「輝き」を、目を単体で見ることによって気づけることをこの本を通じて伝えたいなと思いました。
未来:鈴木香里武さんのほかの著書では文章をわかりやすく、読みやすく書いている印象でしたが、「魚の目図鑑」ではキャッチコピーがとても詩的になっているのも特徴ですね。
この本のキャッチコピーを考えるのに、2021年の夏を費やしました(笑)。今回は図鑑といいつつ写真集みたいなものにしたくて、文字をなるべく減らしています。魚の解説文もなるべく短く、説明が多くならないようにしています。

「海底砂漠を監視するサーモグラフィー」など、魚の目を詩的な表現で紹介しているところが魅力のひとつ
未来:この本をどのように読んでほしいですか?
この本は魚の目のアップがあり、ページをめくると全身が見られるクイズ形式のように読めるのが特徴ですので、まずは右ページの魚の目を見て「どんな姿なんだろう?」と考えてみてほしいです。ヒントがページの左上にあるので想像してみたらページをめくって「あ、こんな形をしているんだ!」というギャップを楽しんでもらったらいいなと。目の形状や色を観察して「生き様(海のどんな場所で生活したり、身を守っているか)」を想像して読むのもおすすめです。また、今後、水族館に行ったときに「目」にも注目してもらえると、一番うれしいなと思います。
「未来へいこーよ」スタッフの注目ポイント
初めて手に取ったときに「変わった図鑑だなあ」と思っていたのですが、実際に読み始めると魚の目が宝石や絵画のように美しい! ホントに「目のつけどころがいいなあ」と感心しました。同時に「この目が自然にできたもので、生きるためにそうなっている目もある」というのもすごい。生き物の進化の多様性に圧倒されます。
インタビューでは「解説文は短めにした」とありますが、読んでみるとギュッと短くしてあるぶん内容が詰まっています。問いかけのようになっているところは、鈴木香里武さんが隣にいて解説してくれているような雰囲気があっていいですね。そして本の中にあるコラムもおもしろい。「魚の目と人の目」など、「魚の目と〇〇」というテーマで書かれていて、ネコの目や「魚の目」にちなんだ四字熟語、できもののほうの「ウオノメ」と「タコ」の違いなど、これを読むとまたひとつ「魚の目」が好きになる内容です。
鈴木香里武さんに「この本を作ったときに楽しかったことは?」と聞いたら「自分で『魚の目』カードを300枚くらい作って、最初の企画会議で編集者と4人で分類分けをしたこと」との答えが返ってきました。そのエピソードがあとがきに書かれていて、背景には「テーブルに広げた魚の目カード」が! ここも見どころです。なぜ、こんな質問をしたのかというと、この本を読むと「鈴木香里武さんがものすごく好きなことを、とても楽しみながら作った」ことがナマズのヒゲのようにビンビンと伝わってくるからです。
写真集として読んでもいいですし、普通の図鑑とは違った切り口の図鑑としてもよく、子どもの興味や大人の知識を広げるのに役立ってくれる本です。また「好きなこと、楽しいことを突き詰めていくと、こういう本を作る人になれる」という子どもへのひとつの提案としても素敵な一冊になるのではないかと思います(KAZ)。
この目、誰の目? 魚(うお)の目図鑑
本体1,870円(税込)、著:鈴木香里武、発行:株式会社ジャムハウス
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