今回は、小学6年生の息子さんを持つ保護者からのご相談です。オンラインゲームで知らない人とチャットする息子さんの安全面が心配とのこと。ネット交流について、専門家に対応方法を伺いました。
このお悩みにアドバイスをくれたのは…
青木康太朗(あおきこうたろう) 独立行政法人国立青少年教育振興機構 理事長
〈監修者プロフィール〉
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。
<相談内容>
小学6年生の息子が、インターネット上で知り合った人と連絡を取っています。安全面が心配ですが、どのように指導すれば良いでしょうか? 最近、息子がスマホで知らない人とゲームのチャットをしていることが発覚しました。「誰と話しているの?」と聞くと「ゲームのフレンドだよ」と言いますが、どこの誰かも分からない相手です。ネット上でのトラブルや犯罪も多いと聞くため、とても心配です。「危ないからやめなさい」と言っても、「大丈夫だよ」と真剣に聞いてくれません。ネットリテラシーや、安全なコミュニケーションのルールをどう伝えればいいでしょうか?
世界中の誰とでもつながれる時代に
今はインターネットの発展で、世界中の誰とでも、年齢や性別、人種に関わらずつながれる時代になりました。 今では小学生の半数以上がネット上に友達がいるというデータもあります。 そして、今の子どもたちは、リアルとネット上、それぞれの友達関係を使い分けています。
私たち親世代は、リアルな人間関係が中心にあって、ネットはあくまでリアルな交流関係をつくるための手段でした。そのため「ネットだけの友達」という感覚は理解しづらく、ここに親子間のギャップが生じてしまうのではないでしょうか。
なぜ「危ないからやめなさい」が通じないのか
昔は、親子で生活圏も重なっていたため、子どもの交友関係を比較的把握しやすい状況にありました。 そのため、「これは危ないのでは?」といった懸念も伝えやすかったのです。
しかし今のネット社会は、保護者の目が届きにくい世界です。ネットだけで繰り広げられる空間や、そこでの人間関係の実態を十分に把握しきれないことに、親は不安になってしまいます。

今や子どもたちにとってネット空間での交流は当たり前のこと。「危ないからやめなさい」と言っても「大丈夫だよ」と受け流すのは、彼らにとってそれが普通であるからなのです。
大切なのは「線引き」と「ルールの共有」
知らない人とネット上でチャットすること自体が本当に悪いことではないのです。 例えば、お子さんがゲームチャットで海外の人と英語で積極的に話しているのを見たら、「すごい!」と思いますよね。
単純に「ダメ」と禁止するだけでは、子どもは「楽しく話しているだけなのに…」と納得しません。親はその先に潜む危険性を心配しているのに、その不安が子どもに伝わっていないからです。そのため、何が良くて何がダメなのか、明確な線引きをしてルールを共有することが重要です。
最も危険なのは、身元不明の相手に個人情報を提供してしまうこと。実際のトラブルでは、最初は無害な会話から始まり、写真交換、徐々に個人的な情報のやり取りへ発展し、犯罪に巻き込まれるケースもあります。特に、相手が大人の場合や、実際に会うことを提案してきた場合は、十分な注意が必要です。
教えてはいけない情報
- 名前、家の住所
- 学校名や習い事の場所
- 顔写真
- 電話番号やメールアドレス
- 家族構成や親の職業
伝え方のポイント
実際に起きたトラブル事例を使って、具体的にどういったケースが危ないか伝えていくことが大切です。話す中でお子さんのネットリテラシーがどの程度あるか確認するのもよいでしょう。
- ニュースで事件があったら「こういう怖いこともあるよ」と話題にする
- 怪しいサイトや広告などを見せながら「これは要注意だよ」と具体的に教える
- 「お母さんにこんな詐欺メールが来た」と実例を見せて一緒に考える
具体的なルール例
そして、親子で一緒にルールを作りましょう。一例ですが、
- 個人情報は絶対に教えない
- ゲームに関する話以外はしない
- 不審なメッセージが来たら、すぐに相談する
- 相手から「会おう」と言われたら、必ず親に報告する。もし会うことになったら、人の多い場所で、できれば 初回は親も同行する
などです。
そして、これは「ダメ」をつくるルールではなく、自分の身を守るためのルールだということを伝えます。また、何か困ったときには「すぐに相談する」という約束も大切です。
親も一緒に学ぶ姿勢が大切
親が子どもと一緒にネットリテラシーを学んでいくことも欠かせません。 実際、大人もネット犯罪やトラブルに巻き込まれるケースはたくさんあります。だからこそ「親も完璧じゃない。一緒に学んでいこう」という姿勢が必要なのです。
今の子どもたちは、大人以上にネットに詳しい部分があります。「このゲームの機能は?」「安全設定はどうなの?」など、子どもから教えてもらうのも良いと思います。 ただし、子どもは怪しいメッセージなどには気づきにくいこともあるので、「これは変じゃない?」と一緒に考える機会を作ってください。

一方的に禁止とすると、子どもは隠れて行動してしまいます。大切なのは、身の守り方を教えること。昔から「知らない人について行ってはダメ」と教わってきましたが、今はそれがネット空間に変わっただけです。環境は違っても、安全を守るための基本は同じです。最近ではネット業界も犯罪を抑止する取り組みを行っています。そうした機能も活用しながら、親子で安心できる環境を作っていきましょう。
お話を伺って
私たち親世代が子どもの頃に経験していないネット社会だからこそ、親子で共に歩み寄って学んでいくことが必要だと感じました。親が時代遅れになってしまっては、何かあったときに対処できず、子どもを守ることができなくなってしまうかもしれません。ネットはたくさんのことを学べて、多くのコミュニティを広げてくれる便利なツールです。親が教えるというスタンスではなく、ときには子どもに教えてもらいながら、リテラシーを高め、安全なネット社会を楽しんでいきたいものです。
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科修了。国立青少年教育振興機構研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授、國學院大學人間開発学部子ども支援学科 教授を経て現職。専門は青少年教育、野外教育で、自然体験活動の教育効果や安全管理の研究、指導者の養成、体験活動の普及啓発に取り組んでいる。文部科学省生涯学習調査官、こども家庭庁「子ども家庭審議会基本政策部会」臨時委員等を務める。
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