小学3年生~5年生の子どもたちによる「子ども記者団」が、義手(ぎしゅ)や義足(ぎそく)を作っている川村義肢(かわむらぎし)株式会社を取材! パラ陸上選手たちを名実ともに支える義肢(ぎし)がどのように作られているのかを調べました。
※小学生でも読みやすいよう、小学5年生までに習わない漢字はよみがなをつけています。ご了承ください。
子ども記者団とは?
2024年5月に行われる、神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会(りくじょうきょうぎせんしゅけんたいかい)をもり上げるため、兵庫県神戸市などの小学3年生から5年生までの4人の小学生で結成されたのが「子ども記者団」です。4月30日に行われた「WPA公認(こうにん) 第34回 日本パラ陸上きょうぎ選手権大会(主さい:一般社団法人日本パラ陸上きょうぎ連盟(めい))」を取材した際に、子ども記者がとくに興味を持ったのが義足でした。パラ陸上選手の義足は、カーボンファイバーでできているため軽くて高くとべるようになっているほか、一人ひとりの足に合わせて調整してあります。今回はおおしま かなみ記者(小学5年生・兵庫県)と、きのした こうき記者(小学3年生・奈良県)が、取材した前川楓(まえがわ かえで)選手の義足を製作した川村義肢株式会社をおとずれました。
歴史展示室(れきしてんじしつ)で義肢(ぎし)の材質や技術の進化を知る
川村義肢株式会社には、会社の創業時から残る「実際に使われていた義手や義足」が展示(てんじ)されています。子ども記者が見ているのは昭和の初めのころの義足で材料は木や革(かわ)でできたものが多かったそうです。関節(かんせつ)の部分をアルミなどで作ったり、セルロイドとよばれる合成樹脂(ごうせいじゅし)を使っていました。

昭和50年代には、技術の進歩で見た目では本物の足と変わらない義足が登場しました。写真のポスターにえがかれている女性、どちらかの足が義足なのかわかりますか?

正解は、右足です。義足だけでなく義手の展示(てんじ)もたくさん。大工さんが木をけずる道具であるカンナが使える義手や、障(しょう)がいを持って生まれた人に対応した義手など、使う人にあわせてさまざまな義手が作られていることがわかります。

動物の義肢も製作!
川村義肢株式会社が手がけているのは、人間だけではありません。こちらは歩くのがむずかしくなったキリンが、歩きやすいようにつけた装具(そうぐ)です。

また、工場内にはサメに前ヒレを食べられたウミガメのヒレを作った写真もありました。スタッフに話を聞いたところ「今までに例がなかったことなので、ヒレの動きを再現して泳げるようになるまでさまざまな試行錯誤(しこうさくご)があった」とのこと。人間だけでなく、動物の脚(あし)やヒレを支える技術の高さに子ども記者もおどろいていました。
義肢(ぎし)は、多くの人の手で作られていた!
歴史を知ったあとはいよいよ工場内を見学! 義手や義足は使う人にあわせて作られているので、細かい調整や作業は人の手によるものが多くなっています。また、溶剤(ようざい)などを使うこともあり、大きなダクトで空気をつねに入れかえていました。

川村義肢株式会社は積極的に工場見学を行っている会社で、入口に義足ができるまでの流れが説明してありました。サイズをはかってから足の型をとり「ソケット」とよばれる入れ物や足首などの部品を取りつけて、本人と調整をして完成するのが大きな流れです。
現在作られている義足のサンプルもあり、実際にさわってみることができます。義足の長さだけでなく、素材や形、使い道などによってもさまざまな義足があります。シリコンでできた足をさわって「本物みたいにやわらかくてすべすべしてる!」と子ども記者の二人も感心していました。

義手も手のしわや血管などが再現されていて本物そっくりです。
体の型をとる「採型(さいけい)」の方法はいくつかあり、そのひとつは歯医者さんで歯の型をとるピンク色のゲル状の素材です。今回は特別にこれを使って子ども記者の指の型を取ってみます。こうき記者は肌(はだ)にひんやりとしてピッタリとくっつくゲルの感触(かんしょく)にとまどっていましたが、少しすると「あっ、もう固まってきた!」とおどろいていました。
指をぬくときれいな型ができています。

できた型に石膏(せっこう)を流しこんだものがこちら。左側はこうきくんの妹とおかあさんの指が入ったものです。
義足の型を取るときは、石膏包帯(せっこうほうたい)を使います。布のような形をした包帯をくるくるとまいたあとに水をつけるといったんやわらかくなったあとに固まってきます。とった型に石膏を流しこんで足を作ります。
採った型にギプス泥(でい。液体状の石膏)を流しこんで、足の形を再現します(写真下側)。これにさらに石膏包帯を巻いて固めると、画面おくのたなに並んでいるような足や手をすっぽり包む白い筒(つつ)の形をした「ソケットの型」ができます。
チェックソケットと呼ばれる透明(とうめい)なソケットを製作します。足を入れてもらって痛いところやすき間ができないよう微調整(びちょうせい)をくりかえして、ようやく次の段階(だんかい)に進めます。
義足の人が使う「ソケット」は強化プラスチックでできています。型ができたら強化プラスチックでソケットを作ります。

工場では一人ひとりにあわせたさまざまな義手や義足を作っています。できた義足がしっかり動くか確認(かくにん)し、微調整(びちょうせい)をするのに人の手が欠かせません。
子ども記者は、スポーツ義足の元になっているカーボンファイバーもさわらせてもらいました。固い手ざわりながら、これがスポーツ義足のように足を支えるものに変わっていく話を聞いて興味津々(きょうみしんしん)!

義肢(ぎし)製作を手がける神田さんにインタビュー
工場見学が終わった後、川村義肢株式会社で義肢製作を手がける神田(かんだ)さんに子ども記者がインタビューを行いました。
小学生のお子さんがいる神田さん。子ども記者のストレートな質問にも、子どもに教えるお父さんのように笑顔で答えてくれました
こうき記者:義足をつけたときに足のバランスが維持(いじ)できるのはなぜですか?
神田さん:まず工場で見てもらった「ソケット」という部分が「大きくないか?」や「痛くないか?」きちんとその人にあっているかどうかが大事です。あとは、もしも足の長さが右足と左足がちがってたらどう思う?
こうき記者:まっすぐに歩けないと思う。
神田さん:そうそう。高さがあわないとダメです。靴(くつ)も左足用のものを右足ではくと歩きにくいよね。少しむずかしい話だけど義足を取り付ける位置によっても立ちやすさが変わります。ソケットの調整と高さなど、いろいろなところが全部うまくいって初めて義足が使えるようになるんです。
こうき記者:一人ひとり歩きやすい角度や幅(はば)や長さがちがうから、人ごとに変えているんですか?
神田さん:そう、みんないっしょじゃないよね。それを一人ひとりあわせています。
こうき記者:それはすごくたいへん!
かなみ記者:義足を作るときだけの特別な材料などはありますか?
神田さん:工場ではナイロンや綿など、Tシャツや靴下(くつした)などに使われる材料を使っています。あとは特ちょう的なのはカーボン。カーボンは飛行機や新幹線にも使われていて、軽くてサビない。「ここを強くしたい」というところに、カーボンが使われています。義足だけの特別な材料といったら樹脂(じゅし)かな。義足のメーカーさんが作った特別な樹脂で固さを変えることができるんです。
こうき記者:義足でネジで止まっているところがありますが、どうやってくっつけているんですか?
神田さん:そう! このネジが取れたらもう走れなくなるよね。ここは人の体重がかかるところなので、はずれないようにしないといけない。だからネジがゆるまないような特別な液体をつけています。最後の調整がすんで「義足をおわたししますね」というときに全部のネジにぬっています。さらにトルクレンチという工具を使って、ネジがゆるまないようにもしています。
子ども記者:絶対にはずれないですか?
神田さん:それでもゆるむ可能性はゼロではないですが、いきなりはずれるわけではなく、ゆるんだときはガタガタとなるのですぐにわかると思います。
こうき記者:パラ陸上選手の義足はカーボンでできているから、ジャンプしやすいというお話を聞いたのですが、折れたりはしないんですか?
神田さん:あるよ。何年も使っていると折れてしまうことはあります。
かなみ記者:選手のせいでなくても、こわれたら修理にお金はかかりますか?
神田さん:お金はかかります。実際は義足の足の部分が折れたら修理できなくて新しいのを買うしかないです。だいたい2~3年に一回は買いかえてもらう必要があります。使っていくうちに、最初のころにあった「たわみ」がなくなって、やわらかくなってきます。パラ陸上選手は0.01秒の世界で争っているから、カーボン部分の固さだけで全然タイムがちがいます。ほかにも軽さや角度、長さなどでも変わってくるので義足に関しては選手がすごく繊細(せんさい)にあつかってくれています。そのため、義足が折れそうになっているということは、気づいたらすぐに直さないといけないレベルの問題です。ケガしてしまったら元にもどすのに何日もかかるから、そうならないように事前にやっています。
こうき記者:カーボンの義足ってゴムみたいなものかなと思っていたけど、実際にさわったらすごく固かったです。
神田さん:さっき見せた黒いネクタイみたいなうすい布がカーボンで、そのカーボンが何十枚(まい)も入って義足ができています。黒い線が入っているけど、この繊維(せんい)の入れ方で固さが変わってたわみやすくなります。例えば、ダイヤモンドだって同じ炭素でできています。組み方を変えた部分だけ固くしたりやわらかくしたりできます。
かなみ記者:義足の色はどうやってつけていますか?
神田さん:今の義足はいろんな色が作れるようにしています。樹脂(じゅし)に色の元を混ぜて作ります。
かなみ記者:そういえば歴史展示室で見た昔の義足は全部茶色でした。
神田さん:あれは樹脂ではなくてアルミや鉄でできた部品に革を巻いてます。一般(いっぱん)的な革靴(かわぐつ)などは今でも牛などの皮を専用(せんよう)の液体につけて色を染めてます。
かなみ記者:一般(いっぱん)的に知られていない秘密(ひみつ)はありますか?
神田さん:ストレートな質問だね(笑)。意外に自分たちがやっていることが世間的に秘密(ひみつ)なことってあまりない気がします。うーん…選手の義足では使っていないんですけど、日常用に使う義足を作るときにiPadとカメラで足の写真を撮影(さつえい)して3Dスキャンでソケットを作ることができます。業界(義肢(ぎし)を作るメーカーなど)内でもほとんどやっていないです。まだ実験中ですが、秘密といえばそれかな…(笑)。
子ども記者団スタッフ:ユーザーの方や選手から出た要望で「できないかも」と思うようなむずかしいことってありますか?
神田さん:いっぱいありますよ(笑)。でも「できません」と言っちゃうともう終わりなので、なんとかその場では答えられないけど、いろいろな方法を調べたり考えたりしてお客様や選手といっしょに考えていきます。例えば、特しゅな例ですが工場見学で見ていただいたウミガメの人工ヒレなどはまさにそうですね。ウミガメが「これすごいいいわー」と言ってくれないので(笑)、どこまで満足してもらえたかはわからないですけど、元々のヒレがあった状態に近づけられたという意味ではできたかなと思います。
子ども記者団スタッフ:選手の場合はどうでしょうか?
神田さん:選手になると人生をかけて義足を作っているので、少しでもタイムをのばすために1mm単位で調整していきます。地道な仕事ではありますが、選手が納得(なっとく)いくまでとことんつきあいます。
子ども記者団スタッフ:最後に、このお仕事をしていてよかったと思うことはなんですか?
神田さん:やっぱり、お客様に「ありがとう」と言われたことです。義足や義手を作るのは毎回ちがうので、その一人ひとりに満足してもらって「ありがとう」と言われたときがうれしいです。有名な選手の義足を手がけましたが「ありがとう」のうれしさはどの人もいっしょです。
子ども記者:ありがとうございました!
子ども記者団スタッフより
実際に工場を見学させてもらうと、思っていた以上に人の手で作られている部分が多かったのが印象的でした。義手や義足はほんの少しでもズレや違和感(いわかん)があると思い通りに動かせないもので、まさに「相棒(あいぼう)」のような存在(そんざい)。そのために、川村義肢株式会社のスタッフはお客様にとことんつきあって義足を一本一本作っているから、インタビューで神田さんがお話したように「ありがとう」がすごく心にしみるんですね。川村義肢株式会社さんは、相棒(あいぼう)を作るための「最高の相棒」なのだなと感じました(KAZ)。
2024年は世界のパラ陸上選手を神戸で見られる!
今回取材した川村義肢株式会社で作っている義足や義手を使って、たくさんのアスリートがパラ陸上に挑戦しています。2024年には世界中からトップアスリートが集まって、東アジアで初開催となる神戸2024世界パラ陸上が開催されます。世界の最新技術や職人に支えられた日本や世界のパラ陸上選手を生で観戦するチャンス! ぜひ今のうちから選手はもちろん、義足や競技用車いすなど、競技にたずさわる人たちのことを知って、神戸へパラ陸上選手を応援しにいきましょう!
<今回取材をしてくれた子ども記者のみなさん>
おおしま かなみ記者(小学5年生・兵庫県)、きのした こうき記者(小学3年生・奈良県)
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