2つの仕事に共通するもの
未来:アドリアンさんは総合コンサルティング会社「アクセンチュア」でデータサイエンティストとして働きながら、副業としてパズルクリエイターとしても活躍されていますね。アクセンチュアとはどんな会社で、どういうお仕事をしているのですか?
アクセンチュアはクライアントである他の企業に寄り添って、その企業が抱えている問題を一緒に解決していく会社です。私は、データサイエンティストとして、企業の課題を聞き、その企業が持っているデータを把握し、望んでいることを聞き、データから必要な情報を導き出して課題を解決するのが仕事です。
未来:データサイエンティストとしても「(企業の)問題を解いている」というわけですね。
そうですね。そういう考え方をすると、仕事も含めて人生のあらゆることがパズル的なものかもしれません。
未来:見方を変えれば、パズルが好きだと人生はすごく楽しいものになりますね。
はい。このインタビューで好きなものをいろいろ語ってきましたが、もしかしたら私は問題を解いたときに「すっきりする」ことが、一番好きなものなのかもしれません(笑)。

数学は実生活で役に立つ?
未来:数学者として、数学が実生活においてどう役立つと思いますか?
私は東京大学の数理科学博士ということもあり、毎年東京大学で非常勤講師をやらせていただいています。そこで教えるのが「社会数理」という科目です。そこでは「数学者は、社会人として何ができ、何をやっていくか」をテーマに講演させていただいています。数学では微分積分などをはじめ、たくさんの公式を習いますが、これを実社会にどう生かせるかという点でいうと「問題を解く力を鍛える」というのが数学を学ぶ一番の意味になると思います。もちろん日常生活では、微分積分を使うわけではないですし、統計学や確率学が頻繁に出てくるわけではないですね(笑)。でも、数学という科目を勉強してきたおかげで、どんな問題があっても「こんな解き方が考えられるんじゃないか?」というのは、想像できるようになりました。
未来:例えばどんなものがあるでしょうか?
例えば、語学と数学は共通点があると思います。語学には動詞、副詞、形容詞などがあって、それがどういう働きをしているのか、言葉同士の関係はどういう仕組みになっているのかというのを数学の思考を使って論理的に学ぶことができます。
未来:確かに、論理的に考える数学の土台があると、ほかの物事にも役立ちます。解き方のパターンを知っていることが人生の問題の解決に役立つし、人生そのものを豊かにするということなんですよね。
さらに、同じ解き方だけでは解決できない「問題」がある数学をやってきたからこそ、ひとつの解き方だけでなく、ほかの解き方があるかもしれない。ほかの視点からも考えてみようという考え方ができるようになりました。
未来:人生の問題を解くうえで使える選択肢や情報を、どれだけ持ってるかということでもありますね。そういうことがわかっていれば、僕も学生時代にもっと勉強してたかも…(笑)。
数理科学の博士課程を卒業したときに、自分が学んだ数学が職業としてどのように役に立つのかと言うことについて、少し心配をしていましたが、今の仕事にとても満足してしています。
未来:アドリアンさんが描く自分の未来予想図はどのようなものでしょうか?
2つのことを考えています。一つは、仕事の観点から言うと、私の仕事がお客さんや社会に貢献するものになってほしいということです。数学を博士課程までやるということは、専門性を深く突き詰めて研究することを意味します。数学のある分野のさらに狭いこの分野の研究をするというようになってしまって、いろいろな要素で構成されている複雑な社会に数学を使って貢献するというようにはなりません。ですが、私が今やっているデータサイエンティストという仕事は、様々なデータや場合によってはデータとなっていないものをデータにすることで、課題を解決していく仕事です。この仕事で、数学を使って社会に貢献したいと思っています。
一方、パズルクリエイターとしては、今の時代にあっているとか、流行しているものではなくて、今の子どもはもちろん、100年後でも遊んでいただけるようなパズル(ボードゲーム)を作りたいと思っています。そうやって私の作品が残って、いろいろな世代の人に遊んでもらいたいというのが未来への望みです。
アクセンチュアのデータサイエンティストとパズルクリエイターという2つの顔を持つアドリアンさん。子どもの頃からいろいろなものに興味があり、それを親が認めてどんどん熱中させてくれたから、今の姿があるのだと思います。僕自身、数学は苦手だったのですが、アドリアンさんの生き方や考え方を知ると「数学を学ぶことは人生を豊かにする」と思えるようになりました。「パズルをつくる人」は「数学を社会に役立てようとする人」でした。(KAZ)
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