豊かな感覚体験とたくさんの創造的な遊びを通じて健やかな身体と子どもの生きる力を育む「シュタイナー教育」の幼稚園とはどのようなものでしょうか?
この記事では、東京都東久留米市の「NPO法人南沢シュタイナー子ども園」の子どもたちの1日の過ごし方を例に、シュタイナー幼稚園で身につく力を紹介します。
シュタイナー幼稚園の朝の風景

「おはようございますー」
朝8時45分をすぎると小さなお家のような「南沢シュタイナー子ども園」のドアが開いて子どもが次々と登園してくるのを、担任の先生が教室の中央の定位置に置かれた椅子に座って出迎えます。
登園した子どもはまず上履きに履き替え、帽子や上着、お弁当や歯ブラシを所定の場所に置くとトイレへ行ってから先生の机の横にある自分のマークのついた櫛で髪を整えます。
子どもの用意が整うと、例えばまなみちゃんなら「おはようございます。まなみ」と先生はいつも決まったリズムでゆっくりと声をかけます。それに子どもは「おはようございます香代子先生」と答えると、その日の活動をしに行きます。毎朝変わらずにくり返されるシュタイナー幼稚園の朝の風景です。
「フォルム」のある生活が、その子の意志を引き出す0歳から7歳の時期
未来へいこーよ(以下、未来)「とても落ち着いた雰囲気で幼稚園の1日がはじまりますね」

鴨狩香代子(NPO法人南沢シュタイナー子ども園)
鴨狩香代子先生 (以下、 鴨狩先生)「静かに幼稚園の1日がはじまるのは、することが決まっているからです。毎日同じことを繰り返しているので、子供が『先生、今日は最初に何をするの?』『どうやってやるの?』と聞くことがありません」
【南沢シュタイナー子ども園の1日】
・登園
・その日の活動
(月)昼食づくり(味噌汁)
(火)ぬらし絵
(水)オイリュトミー
(木)昼食づくり(パン)
(金)おやつづくり
・室内自由遊び
・ライゲン(リズム遊び)
・おやつ
・外遊び
・おはなし
・昼食
・降園
「南沢シュタイナー子ども園」の生活をもっと知る
「シュタイナー幼児教育では、0~7歳の時期の子どもには1日、1週
このように決まったリズムで生活することをシュタイナー教育では『フォルムがある』と表現しますが、『フォルム』のある生活をすることで、『次に何をするんだろう?』『どうやってやったらいいんだろう』といった不安や疑問から子どものアタマを開放して、子どもは安心して自分のやりたいことだけに集中できます」
「また、教師の方も毎日同じフォルムとリズムのある生活を繰り返すことでその子らしさや1人ひとりの子どもの個性をよく見て取ることができます」
教師は子どもが自由に遊ぶ中で、意志を引き出していく
未来「シュタイナー幼稚園の室内遊びや外遊びについて教えてください」
鴨狩先生「『フォルム』のある生活をしている一方で、室内でも屋外でも、子どもの自由遊びは本当に自由で、何でもやりたいことに力を注ぐことができます。1人でクレヨン画を描く子、お友達と電車ごっこやお店屋さんごっこする子などさまざまです。教室の中にはいつも決まった場所に決まった様子でおもちゃや道具が並んでいて、遊ぶときには教室にあるものを子どもが何でも自由に取り出して使います。例えばこのテーブルの上に乗るのも自由です」

「外遊びも同様です。季節ごとに遊ぶ場所がありますが、外遊びをする山(がけ地)へ出かけると、教師はまずエリア全体を子どもたちに案内します。『遊べるのはここからここまでね。小川のそばに行くときはお友達と一緒に。先生に言ってね』という具合です」
「案内が終わると子どもは思い思いに遊びはじめます。先日遠足に行ったときには、そうこうしているうちに、子どもの一人が土がこんもりと盛り上がったところで転んでその小山が土の滑り台になったりして、楽しい屋外での自由遊びの時間になりました」