子どもが妖怪に興味を持つと想像力が育つ
未来:小松先生は「妖怪のたおしかた」という本の監修を務めていますが、本に登場するなかで好きな妖怪はどれですか?
妖怪を調べるようになったきっかけなのは、私が「師匠」と呼んでいる石田英一郎さんの「河童駒引考」を読んだことです。河童のような水の妖怪が馬を川や湖に引き入れる伝説が世界中にあるのですが、それを調べた本です。日本だけでなく、世界的な視点で河童を研究することができるんだとわかったのがすごい。
未来:小松先生のイチ押しは河童なんですね。
「河童駒引考」を読む前から芥川龍之介の「河童」を読んだりして、河童の世界をいろいろ考えていたのもあって好きです。ポピュラーでもあるし、妖怪の代表として推したいです。

妖怪の代表が河童なら、個人的にすごく好きなのは小豆洗い。姿形が見えないで音だけする。闇夜に遠くで小豆を洗っているような音がする現象を「小豆洗い」と名付けているんですけど、こうした「聞こえる音が元になった妖怪」は小豆洗いに限らずたくさんいて、例えば「天狗倒し」は山に行くとバリバリと木が倒れる音がします。「あれは天狗が木を切っているんだ」と昔の人は言ったわけです。そういう音の妖怪はおもしろいですね。

未来:確かに「音は聞こえるけど、姿が見えない」のは怖いですよね。それを見えるようにしたのは、人間の「発明」といってもいいような気がします。
妖怪が「見える」ようにすると、子どもにもわかりやすくなります。私が幼いころに豆まきをしたんですが、最初は誰も鬼役がいなかったんです。ある年に父や兄が鬼をやったとき、ものすごく興奮したのを憶えています。鬼に向かって豆をぶつけてキャッキャしながら、玄関から退散させたとき、すごくうれしかったなと。
未来:「見えない鬼」を見える形にしたことで、退治したことがわかりやすくなった体験だったんですね。妖怪はどちらかというとビジュアルが先行しているイメージがありますが、何かわからないものを妖怪としたのは「退治する」のが目的なんですよね。「妖怪のたおしかた」は、弱点まで描かれているので怖い部分はありながらも、そこまで怖くなく読めるのがいいと思います。
見えない存在を見えるようにした例は妖怪以外にもあって「サンタクロース」もそうです。よく「サンタはいない」と子どもに言う大人がいますけど「サンタはいる」と言っていた方が子どもの想像力を育むにはいいと思います。
未来:確かにサンタクロースのイメージは、世界共通のものができあがっています。
あの姿も「ホントは違うかも?」と考えてみたり、どうやって家に入ってくるのかを考えるだけで子どもの想像力がふくらむんです。
未来:そういえば、家にやってきたサンタさんをねぎらうためにミルクとクッキーのお礼を置く話や、手紙を書く子どももいます。
大人が「いない」と言ってしまうと、そういう相手を思いやる気持ちを持つ機会がひとつ減ってしまいます。
未来:なるほど、想像することは、思いやりの気持ちを育むことにもつながっているんですね。
豊かな人間になる「遊び」とは?
未来:「未来へいこーよ」では「生きるチカラ」をテーマにしていますが、小松先生が考える「生きていくために必要な能力」はどんなものでしょうか?
たくさんのことを知ることです。同じものを見るのでも、いろんな視点から見てみると違うことがわかります。「虫の目も大事。鳥の目も大事」といって、虫のように低く小さい場所から見てみたり、鳥のように高いところから俯瞰してみたり。そうしたことをしていくことで豊かな人間になれます。
未来:大学教授時代、生徒たちに授業をするときにいつも心がけていたことは?
「寝る前に今日一日あったことを思い出してください。その中で一番印象に残っていることを書いてください」といった宿題をよく出していました。
未来:あぁ~、それは子どもだけでなく、大人がやってもおもしろそうです! 親子で一緒にやってもいいですね。
経験したことは、思い出さないといつか忘れてしまうんですね。「記憶を書く」ことを続けているだけで、いつか物語になっていきます。宿題を出した身からしても、生徒それぞれが違うことを書いていて読んでいておもしろかったです。
未来:小松先生のように、「好きなことを極めていく」のに必要なものは?
オタクやコレクター的な気持ちでいることが大事かなと思っています。
未来:それは仕事というより、趣味のように楽しむ気持ちを忘れないでやっていくという感じでしょうか?
そうですね。とにかく深く調べていく。私はまだまだ研究の途中にいると思っていて、世界中の妖怪を現地で調べた本を出版するのが夢です。それを実現するにはおそらく何百年生きるか、何回か生まれ変わらないとダメですけど(笑)。でも、私は「誰もしないようなところまで謎を解く」つもりでいます。
妖怪研究の第一人者と言われている小松先生は、子どもの頃に目覚めた「謎を解く」おもしろさをずっと持ち続けたまま、今なおワクワクしながら謎を解いているんですね。「謎を解く」ことは、「どういうふうになっているんだろう?」と想像力をかきたて、好奇心をたくさん使って、謎が解けたら自己肯定感も育まれそうです。それから「親に隠れて暗いところで本を読んでいた」というお話は、僕自身も経験があってとても親近感が沸きました(笑)。電話でインタビューを実施したのですが、先生のお人柄と元気が声から伝わってきて、とても温かい雰囲気のインタビューでした。貴重なお話をありがとうございました!
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