勅使河原郁恵さん

「△△のように生きなさい」元ショートトラックスピードスケート日本代表・勅使川原郁恵さんを育んだ父の言葉

ショートトラックスピードスケートで3大会連続で五輪に出場、引退後はスポーツキャスターを務め、現在は二児の母で「一般社団法人ナチュラルボディバランス協会」の代表を務める勅使川原 郁恵(てしがわら いくえ)さんへのインタビューを前後編にわたってお届けします。前編では子ども時代から五輪の舞台に立つまでのお話です。子どものときにどんなことをしていたのか、小学生時代から日本代表クラスになった原動力、大人がどう接してくれていたのかなど、子育てにも役立つエピソードが満載です。

勅使河原郁恵さん

撮影・根津理恵子

勅使川原 郁恵さん プロフィール
岐阜県出身。日本ショートトラックスピードスケート界の草分けのひとり。中学2年で全日本選手権に総合優勝し、高校1年から5連覇を達成。また、世界ショートトラックジュニア選手権においては日本人として唯一、総合優勝を果たす。3大会連続で五輪に出場し、個人・リレーで入賞するなど長く日本の中心選手として活躍した。引退後は、現役当時から目標としていたスポーツキャスターとしてメディアに出演。ショートトラックの解説・リポーターをはじめ、さまざまなスポーツに挑戦し、その分野で資格を取得。特にテレビ出演をきっかけにウォーキングでも認知度を高め、年間多数のイベントに出演する。現在は22もの資格を武器にヘルスケアスペシャリストとして幅広く活動中。

子ども時代はなんでも挑戦させてもらえた

未来:勅使川原さんはショートトラックスピードスケートで五輪に3大会連続出場されています。将来の一流アスリートは子ども時代にどんなことをしていたのでしょうか?

私は岐阜県岐阜市の出身で、育ったのは山が近くにあって、すごく自然が豊かなんですけど、名古屋まで電車に乗って18分で行ける「ちょうどいい田舎」です。

未来:山や川などの自然が遊び場だったのでしょうか?

そうですね。小学校の隣も山でしたし、自分の住んでいるところも山が近くにありました。普段の遊びでも、山を駆けあがるとか自然の中で遊ぶことが多かったですし、父親が消防士をしていたので、よく父親のトレーニングに一緒についていってました。

未来:消防士さんは普段から体を鍛えているので、子どもからしたら相当過酷な内容だったのでは?

その通り! 「相当過酷」なんですよ(笑)。でも、父や父の周りにいる人たちがいろいろ挑戦する姿を近くで見ていたので、自分も自然といろいろなことに挑戦するようになりました。
挑戦しながらも、危ないことはちゃんと父親が「ここまではいいけど、ここからは危ないよ」と言ってくれたので、伸び伸びとしながらも、ちゃんと危険なことはわかる子どもでしたね。

小学生くらいの時に、父親が「なんでも挑戦しなさい」とよく言っていたのがすごく印象に残っています。「やりたい」ということに対して「だめだよ」と言われたことが1回もないんですよ。私が「こういうことしたい」というと、すべて受け止めてくれて「じゃあどうしようか?」とできる場所を探してくれたり、行かせてくれたりと、やりたいことをやらせてくれました。

風を切るスピード感が気持ちよくてスケートに夢中に

勅使河原郁恵さん

未来:いろいろなことに自由に挑戦できる環境だったんですね。具体的にはどんなことをやってましたか?

スケートは3歳から始めました。じつは父親がスケートをやっていて、コーチもしていたんです。私が生まれたときには2人の姉がすでにスケートをやっていたというのもあって、私は3歳からスケートを始めました。はじめは屋外で行う一周400メートルのロングトラックを滑る「スピードスケート」を小学校5年生までやっていました。

未来:小学5年生から先は違う競技に?

当時にふと「なんで冬しか滑れないんだろう?」と思って、父親に「一年中滑りたい」とお願いしたんです。そしたら父親が調べてくれて、フィギュアスケートと同じ、屋内で行うショートトラックスピードスケートを見つけてくれて。「ここなら一年中滑れるぞー」とスケート場まで連れてきてもらったとき、たまたまショートトラックの選手がすごい勢いできれいに回っていたのを見て「私、これやりたい!」と言ったのがきっかけです。

未来:フィギュアスケートではなく、ショートトラックスピードスケートが気に入った理由は?

小さいころはスケートの風を切る感覚がすごい快感で! スピードスケートのほうがフィギュアスケートよりもスピードが早いので、それが気持ちよかったんですよ。冬の時期になるとカップルの手と手の間をすり抜けるのを小さいころによくやっていて(笑)。そんな遊びをしていたように、当時から「スピードを極めたいな」って思いました。

未来:その頃の将来の夢は?

じつは小学校1年生でスピードスケートの小学校低学年の部で優勝したんです。それで、賞状をもらうだけでもうれしいのに、新聞の1面に載ったり取材を受けたりして、「がんばれば、注目を浴びたり褒められたりするんだ」ということを小学校1年という早い時期に体験したんですね。

さらにたまたま小学校1年生の時に優勝した大会で姉も2人とも優勝して「家族で喜んだ」という印象が強いんです。うれしくて、今でもそのときに取材してくれた方や場所のことを覚えているくらいです。

未来:勅使川原さんのなかで自己肯定感の土台がそのときにできたんですね。

そうです。小学校高学年のときには「日本一になりたい」という夢を持っていて、中学生で「五輪に出たい」という夢に変わりました。

未来:夢がどんどんスケールアップしていってますね。

結局「日本一になりたい」という夢は、中学2年生のときにもう叶ったんですよ。それもスケート界の中では史上最年少で、大きく取り上げられたことがまたうれしくて。

未来:五輪まで行くような人って、そうやって早い時期から結果が出てくる人が多いのでしょうか?

人それぞれだ思いますが、多分私は本当に好きにスケートをやらせてもらって、毎日スケート場に連れていってくれて、そういう両親のサポートがあったからこそできたことかなと思います。

遊びが運動になって鍛えられた

未来:幼少期にスケート以外にやっていたことでおもしろかったものは?

水泳とボートですね。父親が消防士をしていて、よく父親のトレーニングに一緒についていっていたのですが、どちらも父の消防の訓練の一つで、私にとっては「遊んでいるうちに自然に身体が鍛えられる」ものでした。遊びと言えば、父とよく山を駆けあがっていましたが、現役の消防士は駆けあがり方がすごくて、普通の山登りではなくて、急な道なき道をしかも早いスピードで行くんですよ。そういう時も、「待って~!」って言いながらついて行って遊んでいるうちに、結果的に自然と体が鍛えられました。

あと、父親がスケートのコーチ以外に新体操のコーチもしていて、子どもたちに教えていたんですよ。マット運動を基本的な動きから教えて、前転ができない子をサポートしているのを見ながら、私は「ああやってやるのね」と幼いながらも横で見て、一緒にコロコロ転がったりして。

未来:遊びが常に運動になっていたんですね。中学2年生のときに全国大会で優勝して、五輪の強化選手に選ばれていますが、そのころはどれくらい練習をしていましたか?

中学生なので学校はもちろん行って、勉強もしっかりするという親との約束の上で、朝学校に行く前に最低1時間走って、体を整えて持久力をつけて、それからご飯を食べて、学校に行って、学校からすぐに家に帰って、その時も全力疾走で(笑)。

未来:ここまで聞いただけですごいハードですね…。

学校の行き帰りともにいつも走っていました。帰ったらすぐにスケート場に行って、仲間がくる前に一時間半ぐらい自主トレです。走ったり腹筋背筋など、自分だけでできる筋トレなどをやって、さらにスケートの自主トレが終わったあと、みんなと一緒に練習。自分の中では、1日に3回練習している感じです。

未来:それだけの練習量をやらないといけないからやっていたと言うわけではなくて、好きでやっていたんですか?

好きでやっていたんです。好きでやってがんばると、結果が残るっていうのがもう小学1年生の頃からわかっていたので。

未来:小学校1年生の時の優勝が、その後のすごくいい人生の土台になったんですね。

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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