アマビエや河童、花子さん…「妖怪」はなぜ日本人に『愛される』のか?

SNSで広がった「アマビエ」ブームをはじめ、河童や鬼など本来なら「恐れるべき存在」の妖怪たちが、日本人にとって身近で親しみの持てる存在になったのはなぜでしょうか? 人気アニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第6期 2018~2020年)」のプロデューサーへの取材から「妖怪はなぜ日本人に『愛される』?」というテーマに迫っていきます。

なぜアマビエが人気になったのか?

コロナ禍で注目を浴びたことのひとつが妖怪「アマビエ」です。「もしも疫病が流行したら、私の姿を描いた絵を人々に早く見せなさい」と予言をし、江戸時代に描かれたその姿をSNSで描く人がたくさん現れ、厚労省のグッズや駅のポスター、御朱印などにも使われました。

なかでも2007年にアニメ「ゲゲゲの鬼太郎(第5期)」にアマビエが登場していたことや、原作者の水木しげる先生もアマビエを描いていたことがSNSやニュースなどで広まり、アニメのアマビエのようにピンク色の髪をしたアマビエを描く人や、そこからインスピレーションを受けてオリジナルのイラストを描く人も多数現れました。

コロナ禍で家で過ごす時間が増えたとはいえ、これだけたくさんの人がアマビエを描いたのはなぜでしょうか? それは日本人が昔から疫病や人間自身から生まれる負の感情などの見えない存在を「妖怪として見える形にして追い払ってきた」歴史と文化があること。さらにアマビエのような「厄を払うよい妖怪」がいることが素直に受け入れられるほど、妖怪に対する親しみを持っていたのではと考えられます。

その一因として、前出したアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の影響も少なからずあったのではないでしょうか?

そこで2018年4月から2020年3月までフジテレビで放送されたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の第6期のプロデューサー・永富大地さんにお話をうかがいました。

「妖怪」という言葉を世間一般に広めたのも「ゲゲゲの鬼太郎」

(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

未来:妖怪がこれだけ身近な存在になったのは「ゲゲゲの鬼太郎」がアニメで長い期間、何度もアニメ化されていることにあることも理由のひとつなのでは?

そう言っていただけるとうれしいです。最初に「ゲゲゲの鬼太郎」がアニメ化されたのが1968年で、そこから71年、85年、96年、2007年、2018年とアニメ化されています。私が携わった第6期はちょうど最初のアニメ化から50周年という節目を迎えました。また、「妖怪」という言葉自体は民俗学者の柳田國男さんもお使いになられていると伺っていますが、一般的に広めたのは水木しげる先生のマンガ「墓場鬼太郎」やアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」の存在が大きかったと聞いています。

未来:初めてアニメ化された60年代から6度に渡ってアニメ化されているんですね。アニメ化の回数だけでも幅広い年代がアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」を知っていることは納得できます。

10年前からアマビエは人気!

未来:アマビエは2007年放送の「ゲゲゲの鬼太郎」第5期に登場する妖怪ですが、当時の反応はいかがでしたでしょうか?

第5期は先輩たちの作ったアニメですが、僕も営業側のスタッフとして見ていました。妖怪横丁が舞台として出てくるのですが、アマビエは砂かけばばあや子泣きじじいのようなレギュラーの妖怪たちに次ぐ準レギュラーとして登場していました。その中でも、やっぱりひときわ輝いていたと思います。商品としても人気がありました。

未来:「妖怪アイドル」として登場したアマビエは、水木しげる先生が描かれたものよりも日本のアニメ的なかわいい妖怪になっていますね。

そうですね。そこは当時のプロデューサーである櫻田博之さんをはじめ、脚本を担当された三条陸さんや、キャラクターデザインの上野ケンさん、声を担当した池澤春菜さんなど、制作チームのみなさんがそれぞれの場所で力を発揮したことによるものだと思います。

未来:なるほど、アニメのキャラクターは外見はもちろん、声や設定、ストーリーも合わさって、初めてキャラクターの魅力になるんですね。

安易にブームに乗ることはしなかった

未来:テレビ放送から10年以上経って、第5期のアマビエが再びSNSで脚光を浴びたことに関しては、どう感じられましたか?

SNSでアマビエの話題が急速に広がっていったのは、まさに今の時代にしか起こりえなかった広がり方をしたんだろうなと感じました。我々としても「アマビエでみなさんの気持ちが癒されている」というのは、うれしかったですね。

当時は「第6期の絵でアマビエを描いたり、グッズを作って売ったら?」ともよく言われたのですが、アマビエは第6期には登場していない妖怪ですし、安易にブームに乗ってビジネスをするのは違うと考えていました。東映アニメーションとしては、水木しげる先生の命日を偲ぶイベント「ゲゲゲ忌2020(11月21日(土)~30日(月))」で、満を持して第5期の鬼太郎とアマビエをポスターに起用しました。

水木しげる先生の「妖怪愛」が親しみやすさを生んだ

未来:本来妖怪は「怖い」はずの生き物なんですが、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」にはかわいい妖怪やユーモラスな妖怪も数多く登場するのはなぜでしょうか?

左上から「すねこすり」「河童」「花子さん」「かわうそ」など、第6期にもかわいい妖怪たちがたくさん登場する。
(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

水木先生ご自身が「妖怪はいたずらをするけど、どこか憎めなくて、かわいいところがある」ということをおっしゃられていて、実際、先生の絵を見るとユーモラスでどこか憎めない感じがあります。

先生は画力がすごく高い方なので、怖く描こうと思えば描けると思いますし、江戸時代の文献に出てくる妖怪などは実際怖いものも多いです。それを先生の中で、どこか愛嬌のある姿に「昇華」させていたのだと思います。

(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪は、水木しげる先生がお描きになった「日本妖怪大全」などの資料を元にしていますので、妖怪がどこか憎めないデザインになっているのは「水木しげる先生のお力」なんだと思います

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6歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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