【世界の子育て:フランス】学校は宿題禁止&ママ快適の労働環境

文化や習慣が違えば、子育ての常識も変わるもの。そこで、世界の子育て事情を国別にシリーズで紹介していきます。海外ではどんな子育てが行われているのか、実際に現地で暮らすママに実情を明かしてもらいます。

今回は、フランス南部のトゥールーズ在住で、2人の子どもを育てる兒玉ゆきこさんに現地の実情を聞きました! 「自由・平等・友愛」を国家スローガンとしている芸術の国フランス。最近の教育や子育て事情、ママパパの労働環境なども紹介します。

【学校教育】創造性と自由の精神を大切にする教育方針

朝の学校前の風景

国家スローガン「自由・平等・友愛」の1つである平等主義を大切にするフランス。人々が平等の精神を愛し、死守している同国では、すべての子どもに学習の機会が与えられるだけでは不十分と考えられています。家庭環境による児童間学習力の差にも敏感で、しばしは政治的争点になります。

幼稚園から「おちこぼれ対策」の補習制度があり、幼稚園で平等に学習の基礎を身につけた後、5年間の小学校、4年間の中学、3年間の高校生活に進みます。

3歳になると「ABC」と「123」を学ぶ

フランスでは、幼稚園に上がることを「学校に行く」といいます。実際に、フランス語では幼稚園を「レコール(学校)マテルネル(母性)」といい、「ガーデン(園)」でなく、学校という言葉が使われています。その年の12月31日までに3歳になる子どもは全て、9月の年度始めから公立の幼稚園に通う権利が与えられます。

幼稚園は義務教育ではありませんが、「OECD(経済協力開発機構)」のレポートによると、3歳児の幼稚園入園率はほぼ100%と高い就園率なので、2歳児が「もう9月から学校に行くのねぇ」と言われている光景も、特別なことではありません。

幼稚園では、学問の「始めの一歩」として、ABCの読み書きと数字の概念を学びます。フランスの幼稚園は勉強を始める場であり、「学校に修学する」という感覚が日本とは違う点かもしれません。

日本と大きく違う! 小学校では「宿題禁止」

小学校までは保護者が送り迎えをします

平等に敏感なフランスでは、宿題が禁止されています。学校や担任が宿題を義務づけることが禁止されているのです。裕福な家庭、低所得層、母子家庭、父子家庭など、児童間の環境はさまざま。環境による不平等をなくすため、国教育省により採択されたのが「宿題禁止令」です。

小学校教諭を務める何人かの友人に個人的意見を聞いてみたところ、「低学年のうちは宿題はいらないのでは?」という答えが多く返ってきました。「宿題がなければ余計学力に差が出るのでは…」と思うところですが、家で宿題ができない環境の子どもの精神的負担を少なくするための配慮なのだそうです。

また、授業の足並みを乱すという理由で予習をさせないことや、子どもが疲れるので家での復習も15分以上させないことを担任の先生から最初に注意されます。

ちなみに、娘たちは毎年帰国する度に、日本の小学校に体験入学をしていますが、学校の宿題の多さに悲鳴を上げています。

「自由」の精神も徹底されている教育現場

フランスには、日本のように計算・漢字ドリルで繰り返し学習するという観念がなく、小学校の授業内容は、記憶したり正解を導いたりというよりも、創造性や会話を展開させる「能力育成」に重点が置かれています。国語と数学以外の教科で教科書もないことも多々あります。

国語と数学の2大科目のほかに、社会や理科などの教科もあるのですが、同じ学校に通った3歳違いの2人の娘たちが学校で学んできたことにほぼ共通点がありません。また、デッサンやスポーツの時間が多く、コンサートや映画鑑賞など、文化にまつわる校外活動が盛んです。「いつ勉強しているのだろうか」と思うときもありますが、中学に進学する11歳頃には、読み書きと数学の基礎知識を修得していました。

型にはめられる事を嫌うのは子どもだけでなく大人も同じようで、校長も担任も楽しくやりたいことを自由にやっているように見えます。これには理由があり、フランスの小学校運営は、国と市から、各学校または各クラス担任に一切委ねられているからです。

国家教育省から、取り扱い教科、指定教科の達成履修時間といった大枠の全国統一方針が指示され、予算が割り当てられます。その予算内で学校、あるいは担任が自由に学校行事や授業を組み立てるため、近隣の小学校や同じ学年でもクラスごとに別の教科書で別のことを学んでいます。

ラグビー好きの先生にあたると、ラグビーのルールから歴史、強豪国などのラグビーがらみの知識に強くなります。生物好きの先生なら、キノコの種類に詳しくなったりします。学校や担任の当たり外れが出てくるということにもなりますが、このような「平等と自由の精神のパラドックス」が見られるのもある意味フランス的といえます。

ちなみに飛び級をする生徒も結構多いようで、学年に1人か2人はいるようです。平等と大騒ぎしても、結局は各家庭の取り組みがキーポイントになり、教育熱心な家庭の子どもは勉強がよくできます。勉強が出来る子どもには飛び級が奨励されるという微妙な矛盾が、ある意味フランス的だとも思います。平等を尊重する教育システムのはずが、結局は格差を生み出している矛盾の国です。

芸術と文化の国らしい「エリート養成カリキュラム」

コンセルヴァトワール(芸術学院)

フランスの学校制度のなかでも、文化と芸術の国フランスらしい、ちょっぴり特異な教育システムがあります。「コンセルヴァトワール」と呼ばれる芸術学院と公立学校が提携した音楽家舞踏家を養成するコースです。

フランスの小学校では、音楽の授業も学校や先生によってあったりなかったりしますが、音楽を習わせたいという親も多く、学校外でお稽古をしている子どもが多いです。経済的にお稽古に通わせることが難しい低所得の家庭でも、公立のコンセルヴァトワールであれば、小学1年生からソルフェージュ(楽譜を読む基礎訓練)からピアノ、バイオリン、フルート、ハープなど、あらゆる楽器を一流の先生に師事できます。

「どの子どもにもチャンスを平等に」という目的とともに、国にとっても若い才能を早い段階で発掘する恰好の場といえます。なかでも、才能に秀でた子どもやモチベーションの高い子どもは、コンセルヴァトワールと提携した公立の小・中・高校に通いながら、昼休みも利用して、学校の時間割の中で音楽やダンスのレッスンを受けられる「エリート芸術家養成クラス」に所属します。フランスの芸術家はこうして育成されていきます。

公立校と私立校の違い

キリスト教離れの進むフランスでは、私立校の宗教色も徐々に薄くなっています。公立校との違いは、より各児童の学力向上に力を入れているという点です。当然学費もかかってきますので、裕福な家庭の子どもが通っている事になります。

公立の学費は無料。給食費は家庭の収入と兄妹の数による指数があり、ほぼ一食1人あたり無料から10ユーロ(約1,280円)くらいまでと差があります。

【労働環境】一番優れているのは「育児環境」!

トゥールーズの街並み(イメージ)

ここ数年、フランスはヨーロッパの中でも高い出生率を誇ります。出産や育児に関しても、フランス女性は日本に比べると恵まれていると言えます。産休育休が確保されているだけでなく、フルタイム勤務のうち75%就業、残りの25%は休めるというシステムにもあります。誰にとがめられる事もなく、子どものために休みが取得しやすい環境が整っています。

水曜は午前中で終わる公立の学校が多いのですが、それに合わせて水曜の午後に仕事をしない働くママが周りに多くいます。

2週間の学業休暇が2カ月に1度やってくる「バカンスの国」

「フランス=バカンス」という印象があるかと思いますが、実際に2カ月に一度は2週間の学業休暇があります。ですが、休日の過ごし方や家での子育ては、日本以上に家庭によりけりです。

貧富の差もあり、週末やバカンスに予算を掛けられない家庭もあれば、プール付きの豪邸に暮らす家庭、週末に海辺のセカンドハウスに出かける家庭、長期休暇に海外に行く家庭などさまざまです。

【医療】医療費は100%カバー 歯科矯正も保障内

社会主義思想のベースがあるフランスでは、医療費は100%社会保障でカバーされます。事故や病気はもちろん、歯科矯正も社会保障内なので、50代以下で歯並びの悪いフランス人はほぼいません。その分、フランスの税金は日本と比べると高いです。中流階級にかかる負担が大きく、社会問題にもなっています。

また、ほとんどの人が民間の保険に入っています。民間保険では、入院の際の個室利用、コンタクトレンズやメガネ、大人の歯科代など、社会保険でカバーされない医療費をカバーできます。

【子育て】「頑張らない適当育児」がフランス流

「すべては人それぞれ」「子どもは自由奔放」という考えを持ち、子育ても「ほどよく」「いい加減」の適当が1番とする親が多いです。美食家のイメージがあるかもしれませんが、家庭の食事はわりと適当だったりします。夕ごはんは、トマトとバターで和えたパスタとヨーグルトで終わることや、朝はココアとマドレーヌなどです。

離乳食も日本には及びませんし、離乳食が終わったあと、栄養のバランスなどをきちんと考えて毎日食事を作っている人も少ないと感じます。個人的には、栄養バランスを考えて料理をするフランス人に会ったことがありません。私自身は「母の味」で育ってきたので、時に罪悪感を抱くこともありましたが、子どもたちはすくすく育ってくれています。

パパは「昭和のお父さん」タイプが多い

フランスのパパが全て子煩悩とはいえません。子ども好きかそうでないかで、父親の子育てへの協力には個人差があります。イクメンはフランスでも人によりけりで、私の周りだと10人中1人くらいです。

さらに、「共働き夫婦でも家事育児は母親中心」「料理は基本的に女性の仕事」という考え方の「昭和のお父さん」を思わせるタイプのパパが日本以上にいるかもしれません。

また、日本の子育て現場では使われることが少ない悪い言葉を言ったりしても、それは「成長の過程だから当然」というのがフランス風です。宿題をしないとか、身だしなみがきちんとしていなくても、最終的には子どもの自立を助けることが親の役割という考え方が根付いています。ですので、最低限のことをしていれば、親が何を感じることもなく、母親に負担がかからないのがフランスの母業です。

フランスでの育児歴は11年になりますが、フランス風「適当育児」に抵抗がなくなってからは、日々の子育てが随分と楽に、楽しくなりました。

以上が、フランスの子育て事情です。次回は中国編をお届けします。

ライター
兒玉 ゆきこ
1971年生、宮崎出身。立教大学文学部日本文学科卒。仏遊学後、仏外資企業の広報、ハウスメーカーにてインテリアコーディネーター等の職歴を経てフリーライターに転身。文化一般、グルメから時事、政治に対応執筆。 2004年よりフランストゥールーズに在住。8歳と11歳の娘の母業の傍ら、現在、文化事業に関する広報と運営管理のMBA取得すべく20代の若者たちとキャンパスライフを満喫中。
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※2018年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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