「宿題やったの?」はNG!? やる気をアップさせる声かけ

「宿題やったの?」などと声をかけても、返事をしなかったり、返事だけして結局動かなかったり。なかなか子どもが動かないと、つい「早くしなさい!」と怒鳴ってしまう…そんな方も多いのではないでしょうか。どんなふうに声をかければ、子どもはやる気を出してくれるのでしょうか。専門家に聞きました。

子どもは予測を立てるのが苦手

そもそも、なぜ子どもはやるべきことを後回しにしてしまうのでしょうか。

『今やらないとあとで困る』など、先の見通しを立てるのが苦手だからです。わかりやすく言うと、『今が良ければそれでいい』のです(笑)。」

こう答えてくれたのは、子育てカウンセラーの東(ひがし)ちひろさん。

「19時から見たいテレビがあるからそれまでに宿題を片付ける」といった時間配分やスケジューリングが子どもは極めて苦手なのだとか。予測を上手に立てられないから「今やらないとあとで困る」という実感が沸きづらいのだと言います。

「だから、今見ているテレビが面白ければずっとそれを見てしまうし、遊びたかったら、それを優先するのです。大人からしたら『毎日のことなんだからわかるでしょ!』と思いますが、小学校低学年くらいの年齢では、まだまだわからないケースが多いのです。」

先の見通しを立てる能力は、大人になるにつれて成長していくものなのだそう。とはいえ、ママとしてはすべてを子どものペースで進めるわけにもいきません。強引にでも大人の言うことを聞かせたほうがいいのでしょうか。

考えさせる声かけが自主的な動きにつながる

子どもは気持ちや行動の切り替えも苦手です。テレビや遊びに集中しているのに、急に中断されると、気持ちを切り替えられずに腹を立ててしまいかねません。これでは『やる気』は起こりませんよね。」

確かに、集中しているのに急にシャットアウトされたら、大人でも腹が立ってしまうもの。では、どうすれば子どもが気持ちを上手に切り替え、やる気になるのでしょうか。

事前にそのあとの見通しを示してあげるのがいいですね。テレビを30分見たら宿題をするという約束であれば、テレビを見ようとしているときや、番組が終わりそうなタイミングで『これを見たら何をするんだっけ?』と声かけをすると良いと思います。」

ポイントは、「1回だけではなく何度か声をかける」ことと、「子ども自身に考えさせる声かけをする」こと

「『車は急に止まれない』と同じで、一度言われたからといって急に気持ちは変えられません。また、『宿題するんじゃなかったっけ?』と大人がやるべきことを示すのではなく、『何をするんだっけ?』と問いかけ、子どもが自分で答えを出したほうが、自主的な動きにつながりやすいと思いますよ。」

子どもの性格別「効果的な声かけ」

さらに東さんによると、声かけのあとに続ける言葉も、子どもの性格に合わせて調整すると良いそう。「すぐに反発する子」「返事はするけど動かない子」など、子どもの性格別に効果的な言葉を教えてもらいました。

すぐに反発する子

「今日の宿題は何からやるの?」と、さらに考えさせる

すぐに反発する子は、攻撃されていると感じると、相手を責め返して自分を守ろうとする傾向が強いそうです。「宿題やったの!?」などの言葉は責められていると感じる可能性があるので、ここでも考えさせる声かけが有効なのだそうです。

返事はするけど行動を起こさない子

「晩ご飯までに○○と○○の宿題をやっちゃおうか」など、するべきことを細分化して教えてあげる

実行力が弱かったり、どこから手をつけていいのかわからなくて動けない可能性があるのが、このタイプの子ども。「まずはドリルからやっちゃう?」など、やるべきことを細分化してあげれば、「それならなんとかなりそう」と思い、行動しやすくなるそうです。

「できない」「もういい」などすぐに諦める子

するべきことを細分化して教えてあげたあとに、「ここまでできたら、ママに見せてね」と細かくゴールを設定してあげる

すぐに諦める子は、本当に「できない」と思っている子と、面倒だから後回しにしたい子の2パターンが考えられるそう。どちらにしても、ゴールを遠く感じると「無理」「面倒臭い」という気持ちが強くなるので、すぐに到達できるようなゴールを細かく作ってあげると良いそうです。

「褒める」「メリットを示す」がやる気アップのポイント

では、声かけをして自主的に動いたはいいけれど、すぐに飽きて違うことを始めたり、声かけをしてもなお、動いてくれない場合などはどうすれば良いのでしょうか。

すぐに飽きるケース

集中してやっているときに「がんばっているね」など、がんばりを認める声かけをする

「小学校低学年くらいの年齢は、褒められて、認められることがやる気に大きくつながります。ママはどうしても、集中力が切れたところに目を向けがちですが、『できていること』に目を向けて褒めてあげると、やる気が継続しやすくなります。」

やっぱり動かないケース

「先にやっちゃったら、あとでゆっくりテレビが見られるよ」など、宿題を先にやることのメリットをのぞかせる声かけをする

「先に済ませておくとあとで楽になる」という見通しが立っていないので、言葉でメリットに気付かせてあげます。

「褒める」「メリットを示す」が、子どもの背中を押す二大ポイントなのですね。

子どものがんばりを否定する声かけはNG!

それでは逆に、親が声かけで言ってはいけないNGワードはあるのでしょうか。

「『いい加減にやらないで』『全然進んでないじゃない』などの言葉は良くないですね。子どもからすれば、ママは自分を一番よく知ってくれている存在。そのママが否定的な言葉を言うと子どもは傷ついてしまいます。」

また、ママにとっては「やって当たり前」でも、子どもにとっては、「難しいことに挑戦する=当たり前のことではない」と東さんは言います。

「だからこそ、がんばりを認めてあげることが大切。『だいぶ進んだね』『早く終わったね、さすが!』といった具合に褒めてあげれば、『もっとがんばろう』というモチベーションにつながりますよ。」

親の声かけ次第で、子どものやる気も変わってくるもの。子どもの苦手な部分は親がフォローし、がんばりは褒めてあげて、少しずつ子ども自身で行動できるようになるといいですね。

★この記事のポイント★

  1. 子どもは予測を立てるのが苦手。「今やらないとあとで困る」がわからない。
  2. 事前に見通しを示し、子ども自身に考えさせる声かけをするのがベスト。
  3. 子どもの性格によって、効果的な声かけの内容は異なる。
  4. 「褒める」「メリットを示す」が、子どものやる気アップの二大ポイント。
  5. 子どものがんばりは否定せず、認めることが大切。

※参考書籍

お話を聞いたのは…
東 ちひろさん
一般社団法人子育て心理学協会代表理事。元、幼稚園講師、小学校教諭。現在は、全国で子育て心理学講座を開講し、子育てママをサポートできる子育て心理学インストラクターを養成中。「子どもが伸びる!魔法のコーチング」(学陽書房)など著書多数。
東ちひろマザーズセラピー「子育て心理学」
[1歳~6歳]9割は「叱ること」ではありません

ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

※2016年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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