そろそろ新1年生も進級した子も少しずつクラスに慣れ、徐々に授業が本格化している頃かもしれませんね。そんな新年度が始まってすぐのこの時期が、子どもたちの勉強へのモチベーションを上げるにはいいタイミングかも。そこで今、ユニークな授業で注目の小学校教師・沼田晶弘さんに子どものやる気を引き出す方法を教えてもらいました!
勉強嫌いは、勉強を勉強と思うことから始まる!
自分の子どもには将来のためにもきちんと勉強をして欲しい! と思うのが親心。でも一度、勉強が苦手と感じてしまうと、いくら親が「勉強しろ!」と目くじらを立てたところで本人をその気にさせるのは難しいものですよね。子どもを勉強嫌いにしないためにはどうしたらいいんでしょうか?
「勉強を勉強だと思ってやっているから嫌いになるんです。だって、自分が楽しいこと興味があることをやるのは嫌じゃないでしょ。あのイチローだって、きっと練習を遊びみたいに楽しんでると思いますよ。もしお子さんがすでに勉強に対して苦手意識を持っているようなら、まずは自分の好きなこと興味のあることについてとことん調べさせ、知ることのおもしろさを感じてもらうことから始めてみるといいと思います。」
「子どもたちが“知ることの楽しさに気づく”というスタートさえ切れれば、あとは自ら走り出します。僕たちは上手く走り続けられるかを見守るだけでいいんです。子どもたちが、テストでいい点を取ることも大事だけど、それよりも知ることが自分の力になり、どんどん力がついていくことが楽しいんだって思えてもらえたら、こっちのものです。」
子どもに勉強したいと思わせる2つの必殺技
とはいえ、学年が進むと苦手教科の壁にぶつかることも。もちろん、得意な教科を伸ばしてあげることは大切ですが、苦手な教科は一切やらなくていい…という訳にはいきませんよね。沼田さん曰く、そんな苦手科目を含め自ら勉強したいと思わせるには2つの技があるんだとか。
勉強する理由を伝え「どうして勉強するの?」の壁を突破!
「嫌いな教科を『勉強しなさい!』と言われて子どもが反発するのは当たり前。なんでやるのかもわからないままに『やれ!』と言うだけでは子どもの心には全く響きません。子どもの『どうして勉強するの?』という疑問にきちんと答えてあげることが大切なんです。」
「1年生〜3年生で『どうして勉強するの?』と考える子は少ないです。それはまだ学力差も小さく、みんながやったらやっただけできるようになるから。それが3年生〜4年生になると、他人と差がつく苦手教科というのができてくる。実は『どうして?』と考えるのは、ちょっとつまづいてしまっている子どものサインでもあるんです。」
「『どうして勉強するの?』と聞かれた時、多くのお父さん、お母さんが子どもだからと噛み砕いて真面目に話そうとするために上手く答えられなくなります。そんな時はきちんと現実を教えてあげればいいんです。」
「プロ野球選手になりたいと野球だけ頑張っても、結果なれない場合もあるし、途中でなりたいものが変わることだってある。そんな時、きちんと勉強していれば安心でしょ! って。子どもだから…と思って濁さずに、きちんと向き合ってストレートに伝えることが大切。親が思っている以上に子どもは理解するものです。」
「勉強」であることを隠してモチベーションアップ!
「もうひとつの方法として、勉強であることを見えなくしてしまうんです。例えば、以前に僕が担任をしたクラスでおこなった『勝手に観光大使』。普通に『地域のことを調べてまとめましょう』と言っても子どもたちは全然のってきません。」
「それを『今日からみんなを観光大使に任命します』と言うと『何?』という感じになる。さらに『資料は“パワーポイント”で作って発表』と言うと、一気に子どもたちの目の色が変わるんです。」
「ほかにも『作文コンテストで賞金を稼いで、ホテルでご飯を食べる』といったプロジェクトもありました。最初は『お金、お金!』なんて騒いでいた子どもたちも、最後には確実に自分の力になっていく喜びを感じ、楽しむようになっていたんです。その効果でみんなめちゃくちゃ作文が上手くなってましたよ。要はきっかけ! 子どもたちのやる気スイッチをONにしてくれる何かを仕掛けてあげればいいんです。」
子どものやる気を継続させるには?
さらに子どもたちのモチベーションを保つための、家での日々の接し方のポイントも教えてもらいました。
言葉かけのタイミングと順番がポイント
「大人って比較的、減点法になりがちなんです。それを普段から加点法で考えられるようにするといいですね。例えば、テストの同じ78点でも『78点しか取れなかった(22点も減点された)』と言われるのと『78点も取れた』では大きく違いますよね。まずは今できていることをきちんと褒めてあげる。その上でもう少しこうできたらいいかなという点を指摘してあげるようにしてみてください。」
「実はこの話す順番がとても重要! 最初にいいことを褒めてあげて、その上で努力ポイントを指摘すると子どもも気分よく、それをアドバイスとして受け入れることができます。逆にいきなりできなかった部分から指摘してしまうと、その後でいくら褒めたとしてもそれはもうフォローにしか聞こえないんです。大人だって同じですよね。きちんと成果を認めてもらった上でのアドバイスなら喜んで聞いて、素直にもっと頑張ろうって思えるんです。それが子どもたちのやる気UPにもつながります。」
時には目をつぶることで、子どもの可能性が広がることも
そうは言っても、どうしても自分の子どもには頑張ってほしいと思うばかりに、子どものできないところ、ダメなところばかりが気になってしまうこともありますよね。そんな時のとっておきの方法が「必殺、見ない(笑)!」と沼田さん。
「優秀で真面目なお母さんほど、子どもをよ〜く見ています。そして改善点にばかり目がいって細かく口を出してします。そんな子どもを思う行動が、逆に学習のチャンスを奪ってしまうことも少なくなりません。時には目をつぶって、思い切り子どもがやりたいようにやらせてあげましょう。そうすることで、新しい可能性が広がったり、能力を伸ばすことができるかもしれません。一切見ないのではなく、見ていてくれていると子どもが感じられるような距離感で見守ることが大切です。」
お父さん、お母さんも加点法で!
最後に沼田先生からお父さん、お母さんにひと言!
「ここまでの話をどれだけ頭でわかっていても、自分の子を前にすると上手くできないことも多いはずです。でも、そんなお父さん、お母さんも完璧な親として満点を求めずに加点法で行きましょう。子どもだけじゃなく、自分のことをちゃんと認めてあげることも大切ですよ。」
子どもと一緒にお父さん、お母さんも少しずつ成長していけるようにぜひ頑張りましょう。
お話を聞いたのは…
沼田晶弘さん
東京学芸大学附属世田谷小学校勤務。子どもの自主性を引き出す「ダンシング掃除」「クラス内閣制度」「MC型授業」などユニークな指導法で注目されている小学校教師。著書に『「やる気」を引き出す黄金ルール』(幻冬舎)、『ぬまっちのクラスが「世界一」の理由』(中央公論社)がある。
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ライター紹介
石橋 夏江
編集プロダクションverb所属。編集者・ライター。趣味は、旅行と写真とスキューバダイビング。プライベート旅でも、取材旅以上の分刻みスケジュールを組むため、友達がなかなか一緒に旅行に行ってくれないのが最近の悩み…。
※2016年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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