運動会や発表会の本番に強い子と弱い子の違いは何? 緊張の理由や克服術も紹介

子どもの成長が見られる運動会や発表会は、パパやママにとっても楽しみな行事の一つ。ただ、練習ではできていたのに、緊張などから本番の競技や出し物になると力を発揮できない子どもも多いですよね。一方で、本番で普段以上に力を発揮する子もいます。

本番に強い子と弱い子では何が違うのでしょうか? また、緊張をうまく克服する方法はあるのでしょうか? 東京成徳大学こども学部で発達心理学について教える富山尚子教授に聞きました。

緊張するまでの思考のパターンは子どもによって違う

大勢の前で何かをするとき、緊張して普段の力が出せない子もいれば、逆に堂々とパフォーマンスできる子もいます。緊張しやすい子とそうでない子は、一体何が違うのでしょうか。

「本番に向けて同じように準備をしていても、その結果を予測するときの思考パターンには人によって違いがあります。ある程度練習して『これだけ練習したんだから大丈夫!』と思える子もいれば、どれだけ練習をしても不安が消えない子もいます。不安な気持ちのまま本番を迎える子は、やはり緊張が高まる傾向が強いと感じます。」

「とはいえ、この思考パターンは経験によって、良い方向にも悪い方向にも少しずつ変わっていきます。本番でどんな結果であっても、『うまくいった』『上手にできたところもある』と子ども自身が思えるように親がフォローできれば、緊張する場面を経験するごとに、徐々に緊張を克服できるようになるはずです」

「できていた」ところを認めてあげる

富山さんによると、緊張した場面での結果に周りの大人がどんなフィードバックをするかが、その後の思考パターンに影響を与えるのだとか。

「緊張しながら本番に臨んだ結果、『自分なりにうまくできた!』と思えれば、次は『ここまでやればきっとうまくいく』と考えられるようになる場合が多いです。このような経験を重ねていくことで、少しずつ緊張に慣れていけると思います。」

「逆に、子ども自身が『うまくいかなった』と思う経験が重なると、その経験がマイナスに作用して、次も『うまくいかないのでは…?』と、さらに緊張してしまいます。また、失敗した理由は自分の能力不足だと子どもが感じてしまうと、『僕は何をやってもダメなんだ…』と無力感が形成されてしまうこともあります」

緊張しながら本番に臨む我が子を見守る親は、子どもが本番でうまくできていたところを見つけて、それをきちんと伝えてあげることが大切ですね。

「たとえば、大勢の前で歌を歌う場面で、歌い出しがうまくいかなかった場合に、そのほかの部分はちゃんと歌えていたのに『失敗した』と捉える子もいます」

「そんなときは『でも、サビの部分はすごくうまく歌えていたよ。そこは、がんばって練習したところだもんね』と、良かったところを見つけて伝えてあげましょう。そのあとで、『じゃあ次は、歌い出しのところをもっと練習したら、全部うまく歌えるかもしれないよ』とアドバイスをしてあげる。そうすると、子どもは自信がついていくと思います」

では、まったくうまくできなくて、子どもが落ち込んでいるときは?

「『ステージに上がっているだけでうれしかったよ!』『かわいかった!』などと言って抱きしめてあげれば、きっと子どもは喜びます。緊張しながらもステージに上がったことは、それ自体が褒めてあげられることですから」

「できたこと」を認めてあげて、子どもの自信に繋げられれば、少しずつ緊張を乗り越えていくことができそうですね。

失敗も経験の一つ

また、「失敗する」という経験も子どもにとっては大切だそう。

「人間は、失敗体験を少なからずしたほうが、粘り強さが出ると言われています。失敗をしても、それを克服するために次は頑張ろうと思うこと、実際に克服する経験を重ねることで、『頑張ればできるようになるかもしれない』という粘り強さが生まれます」

失敗をしてそれを乗り越えていく経験が、子どもを少しずつ強くさせてくれるようです。

「うまくいかなかったところを自覚して、練習してそれを乗り越えるのも経験。また、うまくいったところを自覚して、自信をつけていくのも経験です。つまり、失敗も成功も子どもにとっては大切な経験の一つ。それを積み重ねていくことで、緊張とうまく付き合う力が養われていくのだと思います」

本番前はどれくらいできそうかを確認

失敗も成功も子どもにとっては大切な経験。とはいえ、運動会や発表会などの本番前には、できるだけ子どもの緊張を和らげてあげたいものです。本番前に子どもの緊張を和らげる効果的な声がけなどはあるのでしょうか。

「難しい局面を粘り強く克服していくためには、自分の状況を客観的に見る力が必要です。これは年長さんくらいになると少しずつ養われてきます。本番前に『どれくらいできそう?』などと声をかけ、本人が『このくらいはできそう』と考える手助けをしてあげると、緊張が和らぎやすいと思います」

たとえば、歌を歌うのであれば「どこまで歌えそう?」と聞いてみて、子どもが「全部ダメかも…」と言ったら、「そっか、でもサビの部分は歌えるかな?」などと誘導してあげましょう。

そこで「サビは大丈夫だと思う」と答えれば、「じゃあ、そこはがんばろう!」と声をかけます。子どもは自分ができそうなところを再確認すると、比較的落ち着くケースが多いようです。

もしそこで、「やっぱり全部無理!」という答えだったら、「じゃあ今日は、うまく歌えなくてもいいか」と落ち着かせ、「みんなと一緒にステージに出るのはどう?」と、子どもができそうなことを言ってあげると良いそうです。

では逆に、余計に緊張させてしまう声がけはあるのでしょうか?

「プレッシャーを与えてしまうような言葉はNGです。『おばあちゃんも見に来ているんだからがんばって!』『あなたなら絶対にできるはずなんだから』などの言葉は、子どもをさらに緊張させてしまうことがあるので気をつけるようにしましょう」

本番に弱いのは緊張だけが原因ではない!?

最後に富山さんは、本番でいつもの力が出せないのは、緊張のせいばかりではないこともあると話します。

「そもそも、大勢の前で何かをすることが本当に苦手な子もいますし、みんなで一緒に何かをすることに馴染めない子もいます。つまり、本番に向けてのやる気には個人差が大きいのです」

「運動会や発表会に出ること自体が苦手という場合は、練習にはなんとなく参加していても、本番でいつもと違うことをしてしまうといったケースもあります。そんなときは強制してもできない部分が多いので、参加したこと自体を褒めてあげるとか、できるだけその行事を今後も楽しめるようにフォローしてあげてほしいですね」

子どもの発表を見守る親は、子どもができるだけイベントを楽しめるようにフォローしてあげたいですね。

お話を聞いたのは…
富山 尚子先生
東京成徳大学子ども学部子ども学科教授、博士(人文科学)
認知発達心理学を専門とし、人間の感情とその行動の関連について、発達的見地から検討することに興味をもっている。また、子どもや親の環境への適応の問題など、子育てに関わる問題や、「学ぶ」ための心理的要因についても興味をもつ。
東京成徳大学子ども学部

ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

※こちらは2017年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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