2歳から遊べるボードゲーム「しゃかしゃかみっけ」を開発した上條飛鳥さんにインタビュー! 「子ども向けのボードゲーム」を作ろうとしたきっかけや、2歳でも遊べるように工夫した点を語っていただきました。さらに実際に2歳児がいるスタッフに試作品で遊んでもらった体験レポートや、0歳と4歳のパパとして上條さんが子育てで意識していることなどもあわせて伺いました。

「しゃかしゃかみっけ」を開発した上條飛鳥さん
2歳でも遊べる理由とこだわり
未来:まずは「しゃかしゃかみっけ」がどんなゲームかを教えていただけますか?
上條さん(以下、敬称略):「しゃかしゃかみっけ」は、透明なプラスチックのボールの中に「トークン」と呼ばれる木駒(木製の駒)のおもちゃがたくさん入ったおもちゃです。さまざまなイラストが描かれたカードと、砂時計がセットになっており、いろいろな遊び方ができます。例えば、カードをめくって出たイラストと同じ形のトークンを、ボールをしゃかしゃか振りながら見つけていく遊びは2歳くらいの小さいお子さんでも楽しめると思います。カードには見つけやすさを表す難易度の★が設定されていて、砂時計の砂が落ちる2分間に見つけた★の数を競うのが基本のルールです。

「しゃかしゃかみっけ」にはトークンが入ったボールと砂時計、カード、説明書が付属。説明書には簡単に遊び方がわかるマンガも掲載
未来:2歳はちょうどいろいろなものの名前がわかってくる時期なので、たくさんあるトークンの中から知っているものを探し出したり、知らなかったものを知るきっかけにもなりそうですね。
上條:ありがとうございます。基本の遊び方以外にも「カードを使って同じ色や★の数などのグループで分ける」「出たカードのイラストでお話を作る」などの遊びも提案しています。説明書に書かれているもの以外でも自由に遊んでいただけます。
未来:トークンが詰まったボールを動かすだけでも楽しいので、2歳以下の赤ちゃんでも持って動かして楽しめそうです。
上條:そのあたりも意識しています。ぶら下げる紐がボールについているので、ベビーカーやリュックなどにつけたりして持ち運ぶことも可能です。
未来:2歳から遊べるようにするために、一番意識したのはどのようなところでしょうか?
上條:やはり、子どもが乱暴に扱っても壊れないことですね。トークンは小さいものもあるので、開発する際はボールが壊れてトークンが子どもが口に入ることがないように、とても気を使いました。最初はガチャガチャのカプセルの大きなものを用意して、半球形のパーツを組み合わせて作ってみたのですが、どうしても強度的に問題が出てしまいます。今のボールは「クリスマスボール」という、クリスマスツリーに飾るオーナメントを使っています。これだと外から力が加わっても凹んで吸収してくれるので壊れにくいのです。
未来:トークンを入れる口のところの金具もしっかりしたものを使っていますね。
上條:そこもかなり開発が難しかったところです。使う接着剤はもちろん、子どもが遊んでケガがないように工夫しています。
目の前の子どもたちと日々扱う商品がつながった
未来:「しゃかしゃかみっけ」を作ろうと思ったのはどうしてでしょうか?
上條:じつは今回、初めてボードゲームを作ったんです。私が「しゃかしゃかみっけ」にも入っているトークンを用いたアクセサリーの制作・販売をする仕事をしていることもあり、もともといろんなボードゲームで自分自身がよく遊んでいます。我が家には0歳と5歳の子どもがおり、あるとき子どもの面倒を見ながら家で仕事をしていたんです。そのときに、家にたくさんあるトークンと、きょうだいで遊ぶ子どもの姿が脳内で重なって「しゃかしゃかみっけ」のイメージが浮かんできたのがきっかけです。
未来:ちなみに「トークン」は一般的にどのような使われ方をしているんですか?
上條:一番有名なのはボードゲームの駒や、ゲームで使う「体力」や「お金」などの「カウンター」として使われています。いろんな種類があるので、コレクションとして集めたり、お店のロゴなどをプリントして名刺代わりに配ったりしている人もいます。
未来:初めてボードゲームを作られたということですが、ルール自体はどのように決めたのでしょうか?
上條:ボードゲームが好きなので、カードを使って出たイラストのトークンを探す、という遊び方はすぐに決まりました。また、トークンを使ったアクセサリーの制作・販売をしている仕事柄、ボードゲームを作っている友だちが多く、試作品を友だちのお子さんに遊んでもらいました。制限時間内に見つけたトークンの★の数によって4段階のランクで表彰できるようになっているのですが、このランク分けはテストプレイしていただいた小学生のお子さんたちの記録が元になっています。
上條:また、試作品を子どもに自由に遊ばせているとルールを勝手に作って遊びの幅を広げてくれることがあります。先ほど紹介した「物語を作る」遊びや「グループごとに並べる」遊びは、そこからヒントを得ています。
実際に2歳・5歳・8歳の女の子が遊んでみた感想は?
未来:じつは試作品を弊社で8歳と5歳、2歳の三姉妹がいるIさんのご家庭で1カ月使ってもらいました。実際に遊ばせてみてどうでしたか?
Iさん(以下、敬称略):2歳の娘は、紐がついていて1人で持てるのと、カラフルなおもちゃが入っていて動く様子が見えることと、振るとシャカシャカ音がするので一目で気に入りました。ボールを持つだけで、テンションが上がり、歩きながら楽しそうにしていました。ただ、持ち手の長さがあるので、どうしても振り回して遊んでしまい、周りにぶつけようとするので、1人だけで持たせるのはなるべく避けました。
上條:喜んでいただけてうれしいです。
未来:カードを使って遊ぶところはうまくできましたか?
I:「かわいい絵が書いてあるカードがたくさんある」というだけで、2歳児にはもの珍しく、カードを見たい、いっぱい広げたい、という気持ちになるようで、ボールでシャカシャカして遊んだ次は、カードをバラバラにして遊ぶのが好きなようでした。2歳児にも直感的にわかりやすいカード「カニ」「トリ(アヒル)」「ハンバーガー」「おばけ」「プレゼント」「きいろ」「お馬さん(ペガサス)」などが気に入ったようで、それをよく探していました。
I:遊ぶ際に、「どこかな?」「みつかるかな~?」と探す素振りをすると、「ドコ~?」「いないね~」「◯◯さーん」など、一緒に探すことを楽しんでいる感じがあり、イラストと同じものがボールの中に見つかったときは「あった~!」「みーつけた!」などと嬉しそうにしていました。
未来:想定どおり2歳でも楽しめているようですね。
I:ただ、いくつか気に入った絵柄を探したあとは、次のアイテムを探そうとこちらがカードを示しても飽きてしまうことが多く、我が家の2歳児は「長時間集中して見つかるまで探す」、「時間内に探す」「1つ見つけたら次のアイテムを探す」、というところまではまだ難しいようでした。気になるカードの絵柄を指さして、「コレは(何)?」と聞いて周りが答える遊びに興味を示していました。
上條:そういう遊び方もいいですね。
I:娘の場合、ほかのおもちゃなどに興味関心がコロコロ変わってしまうので、親やきょうだいが、「コレで一緒に遊ぼう」と常に隣にいる状態で遊んでいました。カードや砂時計が無くならないように注意が必要ですが、おでかけのときに持っていくのもよさそうです。
未来:上の二人のお姉ちゃんは「しゃかしゃかみっけ」を見たときにどんな反応でしたか?
I:5歳の娘は遊び方をとくに説明しなくてもすぐに遊べました。「砂時計を使って時間内に見つける」というのが新鮮で、残り時間が可視化できるのがよかったみたいです。制限時間は2分と短いので「あ~! もう終わっちゃった」とがっかりするものの、それがモチベーションにつながって何回も挑戦していました。8歳の娘は一目見たときから「かわいい~!」ととても気に入っていて、負けず嫌いなので妹や親に負けないように集中して探していました。
上條:年齢が上がっても夢中で遊んでくれたようでよかったです。
I:親目線でいうと、私からとくに遊び方を教えなくても子どもが想像力を働かせて遊んでいるところが素敵だと思います。ルールが子どもにもわかりやすくて、カードには形しか書いていないので、子どもが好きなように「呼び名」を決められるのも想像力がふくらむ要素でよかったです。
上條:そうですね。「しゃかしゃかみっけ」は今お話いただいた想像力をはじめ、好奇心や観察力が伸びていくおもちゃだと感じています。いろんな角度から自分の持っているものを動かしてみるというのは、そこそこ脳の刺激になるのかなと思いますね。ぜひ小さいお子さんや小学生のみなさんに遊んでもらいたいですね。
子どもに「どうしたらいいんだっけ?」と考えさせる
未来:テレビゲームやスマホのゲームなどのデジタルゲームと比べて、ボードゲームにはどんな魅力があるとお考えですか?
上條:私もデジタルゲームをよくやるんですけど、最近のゲームはとくに「次に何をしてください」と全部書いてあったり、行く場所が点滅していたりと、すごく親切で「迷わずに遊べる」というよさがあると思います。さらに華やかな映像や音楽、演出で楽しませてくれるのが魅力なんですけど、ボードゲームの場合は勝手に光ったりしないんですね(笑)。
未来:確かに親切ではないですね。
上條:いい結果を出すためには自分で考えないといけないし、ほとんどのゲームの場合は説明書をちゃんと読んで理解しないと始めることすらできません。ボードゲームを遊ぶには論理的思考力や理解力が必要で、遊んでいくなかでこれらが自然に身についていくことがボードゲームのよいところだと思います。また、1人で遊べないものが多いので、必然的に友だちと一緒に同じ時間に同じことで遊ぶというのもいいところですね。
未来:論理的思考力や理解力だけでなく、「しゃかしゃかみっけ」やボードゲームは想像力や好奇心が育つものが多いですね。そういうボードゲームが好きな上條さんがどんな子育てをしているのかが気になります。子育てでとくに意識していることはどんなことですか?
上條:「言葉の選び方」にはすごく気を使っています。声をかけるときに命令口調にしないということをルールにしていて「〇〇しなさい」「ダメです」のような否定語を可能な限り減らしています。
未来:そういうときはどういうふうに声がけをしているんですか?
上條:「そうなると、こっちは悲しくなるよ」とか「これをやるには、次どうしたらいいんだっけ?」という形で振ってみたりして可能な限り、本人に考えさせるようにしていますね。
未来:なるほど、確かに自分で次の行動を考えて決める、という習慣は、小さいうちから身に着いているといいですよね。
上條:もちろん、すべてそうできるわけではないんですけど(笑)、できるだけそうしています。
未来:普段ボードゲームで論理的思考力や理解力が身についていると「考える習慣」も早く身につくかもしれませんね。最後に、この記事を読んでいるボードゲームでまだ遊んだことがない方に向けてメッセージをお願いします。
上條:今の世の中には、デジタルで遊ぶゲームがたくさんありますが「しゃかしゃかみっけ」はまさにアナログな、ボードゲームらしいゲームだと思います。ぜひお子さんと手に取って遊んでみて、これをきっかけにそのほかにもいろいろな種類があるボードゲームで遊んでいただけたらうれしいなと思います。
ゲームマーケット2022秋とオンライン販売で買える!
「しゃかしゃかみっけ」は2022年10月29日(土)~30日に行われるボードゲームの販売イベント「ゲームマーケット2022秋」にて予約販売を予定しています。購入したい方は、公式サイトの予約フォームより予約申込をしてください(予約販売は40個まで。応募者多数の場合は抽選。当日予約販売以外の少量販売あり※完売)。2022年10月31日現在、「CAMPFIRE」にてクラウドファンディングで入手可能です。詳しくは公式サイトや公式Twitterなどをご覧ください。
ゲームマーケット2022秋公式サイト
「しゃかしゃかみっけ」公式サイト
上條さんがトークンを使ったアクセサリーを販売している「With Token」公式Twitter
「2歳から遊べるボードゲーム「しゃかしゃかみっけ」を全国に届けたい!」クラウドファンディングサイト
上條飛鳥さん プロフィール
外資系企業に勤める傍ら、占い師歴20年のキャリアを持つ占いの先生。「With Token」にてトークンを使ったアクセサリーの制作・販売を行っている。ボードゲームの開発は今回が初めて。
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