離れた相手に音で想いを届ける鳩時計型のlotデバイス「OQTA(オクタ)」。「相手のことを想っている気持ちだけを届けたい」という、今までの通信手段では難しかった「気持ちを伝える鳩時計」が、親子関係に与えた影響とは? 今回は実際にOQTAを使った家族のお話から、言語と距離と時間を越えて「思いやり」を互いに感じあえる新しいコミュケーションツールの魅力を紹介します。
「OQTA」とは?
「OQTA」は時刻では鳴かず、スマホでアプリのボタンを押した数だけ鳴る鳩時計です。実家の両親など、日々の生活のなかで、とくに用事などはないけれど誰かを思い出したことはありますよね? そんなときに言葉と時間を使わず、相手に「ポッポー」という鳩の鳴き声で「想い」を送れるのがこのデバイスです。
発売から3年、買いやすい価格になったことを記念に実施されたイベントでは、実際に購入したユーザーがOQTAを自分の両親に送ったことで生じた変化を語ってくれました。
不仲だった両親と週1でビデオ通話するように(高橋晋平さん)
「未来へいこーよ」でも、インタビューで登場した「おもちゃクリエーター」の高橋晋平さん。彼は3年ちょっと前に「おもしろい会社があるから」と言われて行ってみたところ、「OQTA」の試作品を見てすごく感激したそうです。

「OQTA」の試作品を見る高橋晋平さん(写真左)
当時の高橋さんは、自分の両親とうまくコミュニケーションが取れなくなっていて、それで何十年も悩んでいました。用事があるときには電話をするのですが、それだと年に3回程度。回数はかなり少ないのです。「OQTAがあったら、もしかしたら(両親との関係が)変われるかもしれない」そう思った高橋晋平さんは、「なんとかこのプロジェクトを一緒に広めさせていただけないか」とOQTAの開発に協力しました。
「だも心臓さ悪いべ」というも、うれしそう
そしてOQTAが完成し、いよいよご両親のところへ持って行きます。とはいえ、疎遠になっていた両親の家に置きにいくだけでも勇気がいること。「仕事だから」という言い訳をして、リビングに置かせてもらうことにしました。
秋田県で暮らす高橋さんのお母さんがOQTAの仕様を聞いたとき「だも心臓さ悪いべ」と言いながらも、お母さんが明らかにうれしそうな様子で、「その瞬間に何がこれから起きるかわかった」という高橋さんは、毎日スマホから鳩を鳴かせました。
3カ月後くらいに秋田に帰ったときに「鳴いているか?」と聞いたら、お母さんは「鳴いてる。これもう持ち帰られたら寂しいかもしれない」と言いました。高橋さんにとってその言葉は、とてもうれしいものでした。最近では、両親にパソコンを購入し、週に1回ビデオ通話をするように。高橋さんと両親にとっては、これはとんでもない変化だったそう。それからも毎日のように鳩を鳴かせています。
日常の中になくてはならないもの(菊地大幹(だいき)さん)
OQTAを使い始めて、2年8カ月の菊池大幹さん。高校卒業のタイミングから実家と離れて暮らしていて、普段は電話もせずに帰省も1年に1度くらい。一言でいうと「希薄な関係」でした。それもあって電話や会ったときに口喧嘩になったり、もめたりすることも多かったそうです。

菊地大幹さん
そんな菊地さんは、OQTAを両親と祖父母が暮らす実家に設置し、毎日鳩時計を鳴らしていました。菊地さん本人はあまり両親や祖父母のリアクションを期待していなかったのですが、あるとき、祖母がつけている日記に「鳩が鳴った回数」を記録していることを知り、じつは祖父母や両親がすごく喜んでいたことに気がつきました。それ以来、OQTAが日常の中に「無くてはならないもの」になりました。
亡くなってからも想いを送るように
菊地さんは1年前に祖父が他界しました。生前毎日鳴らしていた菊地さんは、亡くなってからも、毎日変わらずに想いをOQTAに乗せて届けています。寂しさやノスタルジーとは別に、今自分がこうして生きていることに対する感謝みたいなものも込めて、この世にはいない祖父に向かって毎日鳴らしているそうです。
また、ある日に実家の固定電話から着信があり、心配しながら出たら、祖母から「さっき、鳩を鳴らしてくれてありがとう」と言われたことに、菊地さんは驚きました。鳴らしたのは数時間前のこと。それをわざわざ伝えてくれるために電話をくれたのは、鳩が鳴くことが気持ちをきちんと運んでくれているからです。それはOQTAがくれた思いがけないコミュニケーションでした。
三姉妹で言葉以上の想いを伝えています(大野由以さん)
大野由以さんは、3年前に茨城で一人暮らしをする母親にOQTAを送りました。前職は広報の仕事をしていて、繁忙期で仕事でイライラすることが多かった大野さん。それまでもお母さんと話す時間はたくさんあったので、仕事の相談などもしてもらっていたのですが、仕事の相談が増えると「わかっていても反論してしまう」ことがあったそうです。

大野由以さん
OQTAをプレゼントしたとき、お母さんからは「森の近くにいるような気持ちになるかわいらしい声だね」と言ってもらい、すぐに気に入ったようでした。実際にボタンを押すと、自分が穏やかな気持ちでリラックスするのを実感。お母さんのほうも「今鳴ったということはということは、娘の気持ちにゆとりがあるんだな」と思ってもらえるようになりました。自分に対しても、周りに対しても優しくなれるのがOQTAです。
「今あなたのことを想っているよ」という気持ちを即座に伝えられる
大野さんはイベントで「言葉を伝える手段はすごくあふれていて、言葉を使えば使うほど誤解を生みます。ただ呼びかけたいだけ、という気持ちになるときもある。それって、あとじゃなくて、その瞬間伝えたいと思うものですよね。OQTAは今あなたのことを想っているよ、というのを即座に届けられます。今伝えたいという気持ちをかなえてくれる、言葉以上のコミュニケーションを与えられる存在です」と語っています。
OQTAには、1台の鳩時計を鳴らせるスマホのアカウントを8人まで設定できる「サークル」機能があります。大野さんはその後、三姉妹で押せるようにしました。すると、誰かが鳴らしたあとに家族のLINEにお母さんから「ポッポー」と鳴ったことを教えてくれるように。そこからまたコミュニケーションが始まって、新しいおもしろさが広がっています。