幼児期の子育てでは、つい「まだできないだろう」と大人のほうが先回りしてやってしまいがちですよね。息子は発達障害なのでよりその傾向が強かったのですが、いろいろなことに挑戦させてみようと思いました。そのなかのひとつが「お風呂で背中を流してもらう」ことだったんです。
えっ、もうそれできるんだ?
以前、せっけんが流れていく様子が楽しくなった5歳の息子が、ついにお風呂で自分の体を洗えるようになった話を書きました。この話の最後にも書きましたが、意外に「息子にもできる」ことを大人が「まだできないだろう」と先回りして考えているのかも? と思うようになり、身近なことからいろいろと挑戦させるようにしています。
そこでお風呂で僕の背中を洗うのを、思い切って息子に頼んでみました。ボディーソープがついたボディタオルを「これを持って」と渡し、背中を向けて「ゴシゴシして」と。すると、息子は「ごしごし」と言いながら背中を洗ってくれます。えええっーー、普通にできちゃうのーーー!(驚)
ボディタオル越しに、息子の手の体温が背中に伝わります。息子の「ごしごし」という声とともに、ぬくもりが少しずつ広がっていきます。他人に背中を洗ってもらう気持ちよさと、洗ってくれているのが、自閉症スペクトラム障害でまだ会話もうまくできない5歳の息子であるという現実。
実際に風呂場で起こっていることなのに、にわかに信じられない不思議な気持ちでした。
おむつ替えや歯磨き、お風呂に入る、ご飯を食べさせる、寝かしつけ…と僕や妻が息子に「やってきた」ことは数多くあります。当たり前のようにいろいろなことをやってきて、その都度息子は笑顔になってくれたり、抱きついてくれたりしただけでも十分うれしかったんです。でも、ここまで行動として何かを「やってくれた」のは初めてです。
今までやったこと、声をかけたこと、注いできた気持ちが「背中を洗う」というひとつの行動の結果として出た気がしました。背中にわずかに残る感触が、今度は心のほうもじんわりとあたためてくれています。こういうことができるようになったんだなあ…。
また、息子にとっては僕に初めて「頼られた」ことがうれしかったのかも? それを実際にやってあげたら思っていた以上に「僕が喜んでくれた」というのもうれしかったんじゃないかと思います。「人が喜ぶことをやると、自分もうれしい」という「人とのかかわり」の基本的なことをこの体験から学んでくれたようです。
そのまま洗うのを息子に任せていると、右肩のあたりはぜんぜん「ごしごし」してくれません。そこで「ここもおねがいしまーす」というと「ごしごし」と言いながらやってくれます。シャワーで背中を流すのも上手にできました。