子育て中の多くの人が、子どもに絵本を読ませていると思います。発達障害の息子がいる我が家も例外ではなく、たくさんの絵本に触れさせてきました。最初はなかなか一緒に最後まで読んでくれないことに悩んでいましたが、そうではない「楽しむ姿勢」を見つけて息子との時間がより充実するようになったエピソードです。
初めて楽しんだ絵本は「のりものつみき」
息子は赤ちゃんのときは絵本にあまり興味がなく、おそらく初めて絵本を楽しんだのが1歳ごろに読んだ「のりものつみき」(作:よねづ ゆうすけ、講談社)です。これは仕掛け絵本になっていて、「つみきで のりもの なにつくる?」と積み木のイラストが描かれたページをめくると、クルマやバスなどの乗り物が登場するというもの。厚紙でできていたので赤ちゃんの指でもめくりやすく、穴が開いていて次のページが見えているところがお気に入りでした。

表紙のところが取れてしまうくらい、何度も読んだ絵本です。
次に好きだったのは「わたしのワンピース」(えとぶん:にしまきかやこ、こぐま社)。ワンピースの模様が次々と変わっていき、主人公が「ラララン ロロロン わたしににあうかしら」というところが好きでした。「だるまさんが」(さく:かがくい ひろし、ブロンズ新社)など、いくつか好きな絵本ができてきたところで、妻があることに気がつきました。
息子は絵本の特定のページや印象的なワードが好きで、それ以外のページは飛ばしてしまう。つまり絵本にある物語には興味がないのです。のちに自閉症の傾向の1つだとわかるのですが、読み手としては物語を飛ばされてちょっと悲しい気持ちになっていました。
絵本の世界を息子と2人で旅する
物語に興味がないなら、そもそも物語がない絵本はないのかと探して見つけたのが「もけら もけら」(ぶん:山下洋輔、え:元永定正、福音館書店)です。ジャズピアニストが担当した絵本の文章は「もけら もけら」「ころ もこ めか」「もけけ け け け」のように、文章よりも音を楽しむ絵本だと思いました。
文章ではないので、発音や声の大小なども読み手の自由。毎回違う変化をつけて、この絵本を読んだところ、当時2歳の息子はとても気に入ってくれました。毎晩、寝る前に僕の前に「もけら もけら」を持ってきて、膝の上にちょこんと座ります。モダンアート作家が描く不思議な世界を、「音読」という名の演奏をBGMに息子と旅をしました。
膝とお腹あたりに息子の体温をじんわりと感じながら、ページをめくって読むたびに息子がはじけるような笑い声をたてます。大型本だったので、2歳の子どもには視界いっぱいに絵本の世界が広がっていたのもよかったのではないでしょうか。
絵本のチョイス、音読の仕方、読むタイミングなどの試行錯誤が一致した瞬間です。僕は、この時間がとても好きでした。慣れてくるとこの絵本も飛ばすようになりましたが、文字通りボロボロになるまで読みました。