しとしとと雨が降り続く梅雨の季節、家の中でどうやって過ごそうか頭を悩ませてしまいますね。そんな時こそ、子供に絵本の楽しさを知ってもらう絶好のチャンスです。読み聞かせのベテランである千代田図書館の大塚さんに、【季節の絵本連載・第3回】として、「雨の日に親子で楽しめる本」についてお聞きしました。
傘や長靴、雨の音など、いつもとはちょっと違う楽しさ
「晴れや曇りの日とは異なる、ちょっとした非日常感を絵本を通じて子供たちに再発見させてあげましょう」と大塚さん。雨の日しか使えない長靴や傘などをテーマにした絵本や、雨の音をリズミカルに表現した絵本を選べば、子どもも興味を持ちやすくなります。
3歳未満におすすめの絵本
『あめかな!』
(作・絵:U.G.サトー/出版社:福音館書店/本体価格:700円+税/発行年月:2009年05月)
赤、青、紫、群青、エメラルド…様々な色の雨と、桃色の光。空が曇って雨が降り、やがて晴れるまでをダイナミックな抽象画と子どもが大好きな擬音で描いた一冊。
<おすすめポイント>
水彩で大胆に描かれたきれいな色使いは、それだけで子どもの心をとらえるはず。お話が進むにつれて、ぽつりぽつり、ざあざあ、など雨にもいろいろな形や音の違いがあることがわかります。まだ言葉が使えない年齢でも、色と音で感覚的に楽しめるのがポイントです。
3歳前後におすすめの絵本
『あめこんこん』
(作:松谷 みよ子/絵:武田 美穂/出版社:講談社/本体価格:950円+税/発行年月:1995年6月)
モモちゃんはいいものを買ってもらいました。新しい、真っ赤な傘と長靴です。初めての自分の傘と長靴、早く使ってみたくてたまらないけど、雨は降っていません。そこでモモちゃんはお庭で雨ふりごっこをすることにしました。すると「入れて」という声が聞こえて…?
<おすすめポイント>
新しい傘と長靴という特別感のあるアイテムにモモちゃんがわくわくする様子は、そのまま子供自身を投影して、同じ気持ちを味わえることでしょう。ごっこ遊びの中の、かえるやかたつむりとのほっこりするやりとりから、雨の日は楽しいものなんだな、という気持ちがわいてきます。
4歳前後におすすめの絵本
『あめふり』
(作・絵:さとう わきこ/出版社:福音館書店/本体価格:800円+税/発行年月:1987年9月)
毎日毎日雨ばかり降っています。とうとう怒った「ばばばあちゃん」は、雲の上の雷たちに「よおし、こっちもかんがえがあるよ」と奇想天外な方法で仕返しを図ります。ストーブと暖炉に薪のほかに色々なものを入れ、最後にはなんと唐辛子を入れてしまいました。さて、これからどうなるのでしょう…?
<おすすめポイント>
「雨は雷たちが降らせている」「雲を洗濯する」などの奇抜な発想がとても魅力的で、子どもも大人も楽しめるストーリーです。かみなりたちが空から落ちてくる様子を縦に描いたページは、迫力満点! いつも元気で痛快な「ばばばあちゃん」と一緒にかみなりをやっつけてしまえば、ジメジメ気分になりがちの梅雨に元気をもらえることでしょう。
5歳以上におすすめの絵本
『おじさんのかさ』
(作・絵:佐野 洋子/出版社:講談社/本体価格:1400円+税/発行年月:1992年5月
おじさんは立派な傘を持っていました。いつも傘を持っているのに、傘が濡れるのがいやで、雨が降っても決して傘をさしません。ある雨の日、子どもたちが「あめがふったら ポンポロロン あめがふったら ピッチャンチャン」と歌っているのを聞き、おじさんはとうとう傘を広げてみて…。
<おすすめポイント>
傘を汚さないできれいなままで持っていたいという「ものを大切にする気持ち」と、傘は濡れてしまったけど役に立ったということから「ものは使われてこそ大切にされている」という両方が子供に伝わると思います。この絵本を読んだ後子供たちは、おじさんのように傘を広げて歌に出てくる軽快な雨音を確かめたくなるかもしれません。
『ピーターのてがみ』
(作・絵:佐野 洋子/出版社:講談社/本体価格:1400円+税/発行年月:1992年5月)
雨の日に、エイミーあてに書いた誕生日会の招待状を出しに行くピーター。風にあおられて、手紙が飛んで行ってしまいます。そこにちょうど向こうから歩いてきたエイミーが手紙を拾いそうになってしまい…招待状は無事届き、予定通り誕生日会は開かれるのでしょうか?
<おすすめポイント>
雨の日に一人でおでかけすること、それだけで子どもにとってはちょっとした冒険です。風雨の中で招待状を持ったピーターの気持ちになって、一緒にドキドキワクワクできることでしょう。「手紙を出す」というテーマも、他者との関わりに興味を持ち始めた年齢にぴったり。雨の日の色使いと、鮮やかな黄色のレインコートの対比が子供の目を引き付けます。
まとめ
「雨」を絵本で楽しんだ後、実際に雨の中を歩いてみましょう。子どもと一緒なら大人も再発見できるものがたくさんあるのではないでしょうか。
雨が降っている日に、子供を連れているとつい足早になってしまいがち。たまには少しゆっくり歩いて、絵本で見た雨の音や匂いについて語りかけたり、濡れた葉の下にいる生き物を見つけたりして、梅雨の楽しい思い出を増やしてみてはいかがですか。
お話を聞いたのは…
千代田区立千代田図書館
平日は夜10時まで開館し、街案内も行うコンシェルジュサービスや電子書籍の貸出を行う千代田Web図書館、子ども向けから大人向けまで様々なイベントを開催するなど、画期的なサービスを実施。
住所:千代田区九段南1-2-1千代田区役所9・10F 電話番号:03-5211-4289・4290
月~金 10:00~22:00/土 10:00~19:00 日・祝・12月29日~12月31日 10:00~17:00 ※夏期は9時開館となる期間あり。
休館日:第4日曜日、1月1日~1月3日、特別整理期間
千代田区立千代田図書館
ライター紹介
吉田 飛鳥
子どもを持ってからというもの、これまで生きてきた世界が色んな意味で全く別のものに見える、ライター兼一男一女の母。旅行が大好きな夫婦のもとに産まれてきた子どもたちは、2人とも1歳前から何度も飛行機を経験。子どもと一緒のおでかけ時に感じるリアルな声をお届けします。
※2016年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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