【世界の子育て:米国】教科書や成績が電子化! 子どもの肥満が深刻

文化や習慣が違えば、子育ての常識も変わるもの。そこで、世界の子育て事情を国別にシリーズで紹介していきます。海外ではどんな子育てが行われているのか、実際に現地で暮らすママに実情を明かしてもらいます。

今回は、アメリカ・ミシガン州デトロイト郊外在住で、2人の子どもを育てる谷口輝世子さんに現地の実情を聞きました! さまざまな国籍の人が集まり、多様性が進んでいるアメリカ。最近の教育や子育て事情、パパママの労働環境などを紹介します。

【学校生活】学校行事への参加も保護者の裁量次第

学校の外か内側に米国旗を掲げているところが多いミシガン州の公立校

ミシガン州では、5歳から12年生(日本の高3)までの公教育は無償で受けられます。ですが、義務教育期間自体は、1年生(6歳)から9年生(16歳)までです。ミシガン州の高校は4年制のため、9年生から12年生までが高校に通っています。そのため、高校には全員が進学しますが、日本と同様に義務教育が終了すると中途退学する生徒もいます。

米国と日本の子育てを比べると、米国の方が保護者の裁量に任されている部分が大きいと感じます。特に学校生活では、その傾向が強いと思います。たとえば、学校主催の遠足や映画鑑賞に参加するかどうかは、保護者が決めます。大半の家庭では、学校が子どもを遠足や映画鑑賞に連れていくことに同意し、書類に署名をして提出します。

ですが、宗教上や家庭の教育方針などで遠足や映画鑑賞に行きたくない人は、無理に行く必要はありません。そのような生徒に対して、学校側はその時間、校内で行う別のプログラムを用意します。

ちなみに私の次男は、以前に一度、映画鑑賞会の保護者同意書を提出するのを忘れてしまい、行けなかったことがありました。そのときは別室で工作などをしたり、小さなパーティーを開いたりするようです。学校は、遠足や行事に参加しないことを選択した子どもたちのために、代替プログラムを提供する義務があります。

学校生活の様子や成績は電子化で管理

学校教育では電子化が進んでいます。日本では、重いランドセルや学生かばんを持って通学することがニュースで取り上げられていますが、米国では教科書も電子化されています。

私の子どもが通う公立校では、学校内ではこれまで通り、分厚い教科書で授業を行なっていますが、自宅に持ち帰る必要はありません。自宅ではパソコンで、画面上の教科書を見ながら宿題をしています。

また、「レポートカード」と呼ばれる通知表も電子化されています。親はパスワードを持っていて、ログインするといつでも閲覧可能です。レポートカードには、日々の宿題につけられた点数から、遅刻回数、学校の食堂で何時に何を買ったのかまで記録されています。あまりにも細かすぎて、こんなことまで親に知らされる子どもたちを少し気の毒に思います。

現在、11年生の長男が小学校に入学した時は、学校からの通知表には紙が使われていました。ですが、この10年間で、パソコンを所有する家庭が大多数になったという判断で、学校も電子化に方向転換しました。実際に多くの家庭がパソコンを所有しています。

家庭にパソコンがない場合は不便を強いられますが、市の公共図書館に数多く設置されているパソコンを利用するか、学校に個別対応してもらうようにします。私の家でもパソコンが故障した時には、図書館を利用しました。

子ども肥満問題は深刻

米国では、大人だけでなく子どもの肥満も社会問題になっています。原因は、バランスの欠けた食生活と運動習慣だと言われています。

スーパーで売られているランチボックス

学校のカフェテリアには、サラダバーがあるものの、ピザ、チキンナゲット、チョコレート牛乳などで食事を済ませる子どもが多いようです。私の子どもはお弁当を持って行っていますが、サンドイッチとバナナ、牛乳という日もあります。米国の食生活は豊かではなく、問題もありますが、日本のように完ぺきなお弁当は求められないので、家事が苦手な私でも重圧を感じることはありません。

運動習慣の面では、通知表や教科書の電子化とともに、子どもの遊びも電子端末を使ったものが主流になっています。体を動かした遊びの機会を増やし、肥満を防ぐことも米国の大きな課題です。

【生活と子育て】子育ての必需アイテムは「自動車」

子どもたちは黄色のスクールバスで通学します

アメリカは国土の広い国です。ニューヨークなど一部の都市は公共交通網が発達していますが、それ以外のほとんどの地域では、移動するのに自動車を使います。また、学校へは徒歩かスクールバスで通いますが、夕方からの習い事や「アフタースクール」と呼ばれる日本の学童のようなところへは、親が必ず車で迎えに行きます。

理由は、ミシガン州では、安全のために12歳までは子どもを1人だけの状態にさせないことが推奨されているから。また、いくつかの州では、12歳以下の子どもだけで留守番させないなど、法律で定められています。小学生であっても、子どもだけの状態にすると、保護者の育児放棄が疑われることがあります。このような事情もあり、日本と比べて親子で過ごす時間が長いと思います。

スポーツで過ごす休日

メジャーリーグチームが野球教室を開催。試合当日にも関わらずグラウンドを開放するのが米国らしい

各家庭によって、子どもがどんなスポーツに取り組むかはいろいろです。私の2人の息子は、小学校低学年のときからスポーツをしていて、週末は練習の送迎や試合観戦をしているうちに終わっていきます。

子どもへの応援が過熱することが多いため、子ども用野球場に保護者向けに警告メッセージが掲示されていることも

日本と違って、米国の子どものスポーツはシーズン制です。たとえば、運動好きの子どものなかには、秋はサッカー、冬はアイスホッケー、春夏は野球とシーズンごとにまったく違うスポーツに取り組むことも多いです。

スポーツごとに別のチームでプレーするので、行く先々でチームメートと保護者の顔ぶれも変わります。お付き合いや人脈の広がりができる貴重な機会にもなります。

【労働環境】仕事と子育ての両立は夫婦で協力 職場での交渉も当たり前

ミシガン州の出産休暇は、普通分娩で6週間、帝王切開で8週間です。保育所も生後6週間から通えるところが多いです。また、子どもの誕生や養子縁組から1年間は、父親、母親に関わらず12週間の育児休暇を取得できますが、無給のケースが多いようです。そういった事情もあって、私の周りでは、出産から6週間で職場に復帰する人が大半でした。

前述したように、子どもが放課後に学校外で何かをしようと思えば、親の送迎が必要になります。そのため、夫婦で勤務時間の調整をします。たとえば、夫は朝9時から出勤し、妻は朝7時出勤にする家庭なら、朝の子どもの世話担当は夫、夕方の子どもの世話担当は妻が行うなどです。

子育てに配慮した労働環境ではありませんが、米国人は子育てと両立できるように、会社や上司と交渉している人が多いように感じます。

【医療】高額な医療費 民間医療保険への加入は必須

米国の医療費は高額で、子どもの医療費についても例外ではありません。日本の各自治体が行っているような一定の年齢まで医療費負担が小さくなったり、無料になったりすることはありません。同じ治療を受けても、加入している民間医療保険によって、支払う金額が変わります。

私の家庭では毎年、どのような健康保険プランを購入するかを検討します。プランと保険料の違いによって、同じ気管支炎にかかっても、200ドル(約2万2,800円)ほど支払ったこともあれば、10ドル(約1,140円)の自己負担で済んだこともあります。

出産費用については?

出産費用も同様で、加入している保険の種類によって支払額が異なります。私は普通分娩で、病院には2泊しましたが、自己負担額は数万円で済みました。低所得者には「メディケイド」という保険があり、自己負担額は少額です。

子どもの予防接種については?

ちなみに、「学校での生活は保護者裁量が多い」と紹介しましたが、州の法律で受けるように定められた予防接種は別です。これらを受けていなければ、公立学校では原則的に受け入れてもらえません。新生児から18歳までスケジュールに沿って、接種します。法で定められた予防接種を保健所で接種する場合は無料です。

【宗教】多様な宗教が受け入れられる社会

米国では、さまざまな宗教を信仰している人が一緒に生活を送っています。私の周りではキリスト教を信仰している人が多いですが、ユダヤ教やイスラム教を信仰している人もいます。

親しい子どもの洗礼や、ユダヤ教で13歳になったときの行事「バーミツバ」などに招待してもらうこともあります。私は日本で生まれ育ち、特定の宗教を信仰していません。また、それぞれの宗教に関する大事な儀式の知識もありません。ですので、初めての場合は、事前に詳しい人にどのような服装で、どのようなお祝いをするのかを教えてもらいました。

これは宗教に限ったことではありませんが、米国外で生まれ育った人も大勢いるので、いろいろな国で、どのように育ってきたのかを毎日の暮らしのなかで聞かせてもらうのも楽しいことです。

以上が、アメリカ本土の子育て事情です。次回は赤道ギニア編をお届けします。

ライター紹介
谷口 輝世子
米国ミシガン州在住スポーツライター。1971年、大阪市生まれ。1994年からデイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えている。著書『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)
谷口輝世子 米国発スポーツいろいろ通信。

※2018年10月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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