宿題の定番「音読」はなぜ大事? 黙読との効果の違いも紹介!

子どもの宿題で、国語の教科書を声に出して読む「音読」がよく出されるかと思います。なぜ、この音読が大切なのでしょうか。音読のメリットや子どもが音読を練習するときに気をつけることを教育評論家の親野智可等先生に教えていただきました。

声に出して読むと黙読より理解が深まる

なぜ音読がよいのでしょうか? 黙読とは大きな違いがあるのでしょうか?

「黙読の場合は、目を通して情報が頭に入りますが、音読すると同じ情報が耳を通して頭に入ります。それによって、黙読の場合とは違う理解の仕方ができるのです」

「例えば、大人でも電子機器の取扱説明書や保険の証書などはなかなか意味が読み取れないときがあります。そういうとき、声に出して読んでみると意味がわかることがあります」

「声に出して文章を読むと、黙読しているときは気づかなかったことに気づくことができます。自分の出した声を自分の耳で聞くことで、黙読の時には読み流していた言葉に意識が働いて理解が深まることはよくあります

音読の上達で黙読も速くなる!

また、子どもが音読をする習慣をつけることによって、授業中に先生の出す問題の答えがよくわかるようになるそう。

「音読することで、教科書の文章の全体が頭に入るため、どこに何が書いてあるかすぐわかるので、理解しやすくなります。特に、国語であれば問題の答えやヒントが、文章の中に隠れているので効果は高いです」

「さらに、音読がすらすらできるようになると、普段の黙読も速くなります。加えて、音読することで文章の語彙や言い回しを体得し、使いこなせるようになるので、語彙力の向上にも役立ちます」

ほかにも、声帯の筋肉が鍛えられるのでハリのある元気な声が出るようになる、脳の前頭葉が刺激されて活発になって行動力が上がる、『セロトニン』という幸せホルモンが分泌されてストレス解消になる、唾液が多く分泌されることにより虫歯予防や風邪ウィルスなどの予防になるなど、成績アップ以外でのいい影響も多いそうです

音読の効果的な方法は「追い読み」から!

音読といっても、むやみやたらにさせてもダメなのだそう。では、効果的な方法はどんなやり方なのでしょうか。

始めは大人が読んであげて、それに続いて子どもに読ませる『追い読み』から始めるのが最適です

例えば、大人が「これは」と読んだら、子どもに「これは」と読んでもらいます。だんだん慣れてくれば区切りを少なくして、「これは、わたしが小さい時に」まで一気に読み、子どもが後を追うようにします。これを『追い読み』と言うそう。

さらに慣れれば、一文を一気に読むようにします。

少しずつ、少しずつ、ステップアップしていくのがコツです。そして、最初の一文を完璧に上手に読めるようにします。ほとんど暗記してしまうくらいにするのがベストです」

『追い読み』ができるようになったら、2番目の一文を同じ手順で練習して、同じくらい完璧に音読できるようにします。この繰り返しで、できる部分を少しずつ増やしていく『部分完成法』へステップアップするとよいそうです

上手に読める部分が少しずつ増えていくので、どの子も自信を持って取り組むことができ、向上の喜びを味わうことができるのです。

読み・書き障害の場合もあるので子どもの観察をしっかりと

子どもによっては、「文章を読むこと」や「文字を書くこと」に困難を感じる子もいるようです。その場合は、学習障害(LD)の1つでもある『読み・書き障害(ディスレクシア)』の可能性も考えてほしいとのこと。実際に、音読ができなくて、親子で悩んでいる人も少なくないそうです。

LDの小学生は、クラスに2〜3人いると言われています。文字を認識できなかったり、『みかん』を『み』『か』『ん』などの一音ずつしか読めなかったり、小さい『っ』や音を伸ばす『−』などが認識できずに読めないなどがありましたら、ディスレクシアの可能性があります」

「ディスレクシアの場合は、子どもが怠けているわけではありません。不必要に叱るのではなく、その子の状態に応じたサポートをしてあげてください。例えば、iPadで文字を拡大して書き取りをするアプリなどもあるので、それを使って読み書きの練習をしてみるのも一つの手です。また、タブレット端末で利用できる専門の教科書や、音読指導アプリ、ニンテンドーDSのソフト『楽引辞典』などの情報器機を使ってサポートすることもできます」

音読が困難な子の場合、教科書を拡大コピーして読みやすくしてあげるのも有効な手段だそう。また、『追い読み』が効果的な場合もあるそうです

音読の様子を録音すると上達スピードもアップ

物語全体を上手に読めるようになってきたら、マンネリ化しないために、さらに楽しく音読できるように、いろいろと変化をつけてみるとよいそうです。

完璧読み

最初から読み始めて、一度もつかえたり、読み間違えたりしないでどこまで読めるか挑戦する方法です。つかえたり、読み間違えたりしたら、そこにしるしをつけて終了します。子どもが悔しがっている場合は、あと何回か挑戦させても良いでしょう。「どこまで読めるか新記録を出したい」という気持ちが出るので緊張感が出てきます。

暗記読み

子どもは繰り返し読んでいると自然に暗記してしまいます。特に物語文だとよく暗記できます。どこまで暗記できるかチャレンジしてみましょう

表現読み(朗読)

場面の様子や気持ちが表れる読み方、つまり朗読です。これによって、思い切り表現する楽しさを味わうことができます。また、表現への自信が育ち、日常生活でも自分の気持ちを豊かに表現できるようになります

このようにいろいろな読み方がありますが、ときどき子どもの音読を録音して聞かせてあげると、自分の音読の良いところや直したいところが見つかります

「初めて読んだときのものと、何十回も練習したあとのものを聞き比べさせると、自分が上手になったことが実感できて、もっと頑張る気持ちにさせることができるでしょう。上達のスピードも早くなると思います」

音読の上達は、個人差が非常に大きいので、早く始めればいいというものではないそうです。無理に始めると苦手意識を持ってしまって逆効果になる場合もあります。

「また、子どもがうまくできなくても叱らないでください。叱ることで、その子の自己肯定感をボロボロにしてしまい、伸びる芽を摘み取ってしまうこともあります

「絵本や図鑑などを見ていて、声に出して読んでいたら、大いにほめてあげるといいでしょう。大事なのは楽しみながらやることと、たくさんほめてあげることです。そうすれば、子どもは音読が好きになりますし、自信を持てるようになります」

音読が習慣になると、子どもの国語の成績が良くなったり、表現力が豊かな子に育ちそうですね。ぜひ、子どもと一緒に音読習慣を身につけてみてください。

お話を聞いたのは…
親野智 可等さん
公立小学校で23年間教師を務め、現在は教育評論家として、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村で教育講演会を開催。
ブログ「親力講座」、ツイッター、メルマガなどで発信中。著書も多数。
親野智可等さん公式サイト「親力」

ライター紹介
宮平 なつき
フリーライター。美容、健康、ダイエット、恋愛、結婚、子育て、教育、インテリアなど、“女性のライフスタイル”にまつわる記事や著名人のインタビュー記事を主に執筆。趣味は、スポーツ観戦と旅行。最近の最も気になることは、甥と姪の成長。

※2017年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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