「どうして計算はできるのに文章題が解けないの?」とお悩みのママは少なくないはず。でもそれは、日本語を正しく読み解けていないからかもしれませんよ。「国語力」を鍛えるためにはどうすればいいのでしょうか? 20年以上教育現場で子どもたちを指導してきた「花まる学習会」代表の高濱正伸さんにお話を聞きました。
そもそも「国語力」とはどんな能力なの?
生まれたときから生活の中心にある、国語。小学生以降は皆さんも教科書を音読したり、作文を書いたりした記憶があるはず。そうした普段の生活の中での学びや国語の授業で養われる『国語力』は、具体的にどんなときに役立つ力なのでしょうか?
「『国語力』とは、単語の意味を理解し文章を正しく読み取るほか、豊かな表現をする力のことで、国語だけではなくあらゆる学問の土台となります。国語力をしっかり身につけていないと、算数や理科などの文章題も、出題内容や何を問われているのかがわからずに解けないわけです。」
なるほど。国語力の有無が全教科の学力に影響するといっても過言ではないのですね。
さらに、国語力は学力だけではなく、日常生活にも影響するそう。
「国語力を身につけると、物事を論理的に考えられるようになります。人の話をよく理解できる上、自分の考えをわかりやすく伝えることができるなど、社会生活で重要なコミュニケーション能力の向上にもつながります。」
国語力は、基礎学力を伸ばすだけではなく、社会で生きていく上で大切な力といえそうですね。
「国語力」を伸ばすために、よりよい親の関わり方とは?
では、子どもの国語力を伸ばすために、親はどのようにサポートすればいいのでしょうか?
子どもの見本=親。正しい言葉づかいに気を付けよう
「まずは家族間の会話で、正しい言葉づかいをすることが何よりも大切です。正しい言葉づかいとは、辞書に載っている言葉を正確につかうこと。反対に、正しくない言葉とは『〜ていうか』『私的には』などです。子どもの国語力が伸びる家庭では、言葉づかいがおかしいと『今の変だよね』と親が指摘する習慣がありますが、国語力が伸びない家庭は、親が平気で正しくない言葉をつかっています。」
子どもは親の真似をするため、まずは親が言葉づかいに気をつける必要があります。また、ちょっとしたことでも指摘を繰り返すことで、正しい言葉づかいが家庭の文化として育まれていくそう。
「指摘するときは、きつい言い方ではなく、『今のはこうだよね』とさりげなく伝えるのがベター。文化として根付いてくると、自然と兄弟姉妹でもきちんと指摘し合うようになります。」
会話は気持ちの共有&言葉のキャッチボールを心がけよう
また、親の質問に対して正確に答えさせることも大切だと高濱さん。
「子どもの国語力が伸びる家庭は『今日は何を勉強したの?』『算数だよ』『わからないところはあった?』など、きちんと言葉のキャッチボールができています。でも、伸びない家庭では『今日は何を勉強したの?』『ていうかハラ減った』『そういえばお父さん、今日は遅くなるって言っていたよね』など、相手の言葉を受け止めず、それぞれが言いたいことを言い合う状況が許されてしまっています。」
「そうならないためにも、子どもに今日あったことなどを聞いて、『そうなの?』『すごいね』と共感し、気持ちを分かち合う習慣をつけましょう。」
子どもの努力は否定や比較することなく、温かく見守ろう
一方、親がやってはいけないことは、どんなことでしょうか?
「一番やってはいけないのが、子どもの作文に文句をつけたり、他の子どもと比較したりすること。特に母親はきょうだいやほかの子と比べて指摘しがちなので注意しましょう。」
子どもが自分の心の内をありのままに表現できるよう、温かく見守るのが大切ですね。
年齢別のおすすめ「国語力」トレーニング方法
それでは、具体的に「国語力」を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか? 年齢に合わせて親子で一緒に取り組めるトレーニング方法を高濱さんに聞きました!
0歳〜2歳におすすめのトレーニング方法
・たくさんお話ししてあげる
「耳にした言葉はどんどん覚える時期なので、正しい言葉で話しかけるのが大事です。子どもがまだ話せなくても、言葉を発することで共感してもらえる喜びや一緒にいる喜びを味わえるようにしてあげましょう。」
3歳〜4歳におすすめのトレーニング方法
・絵本の読み聞かせ
「絵本は読書の入口になります。読書をする習慣がある子どもには、国語力がある子どもが多いですね。まずは絵本の読み聞かせをすることを習慣化しましょう。」
・外遊び
「外遊びに連れて行きましょう。近所の公園などで、走ったり跳んだりした経験を通して、『“風をきって走る”ってこういうことなんだ』と言葉の理解が深まります。また、多くの友達と関わることで、楽しさだけにとどまらない、憎らしさやかわいそうなどの感情や心の動きを、幅広く体験しておくことも大切です。実際に感じていないことはなかなか理解できるものではありません。体験して初めていろいろな感情がわかるようになります。」
5歳〜6歳におすすめのトレーニング方法
・しりとり
「しりとりで勝つには、語彙力が必要です。しりとりでたくさん言葉をつなげられる子どもは、しっかり国語力を身につけている子が多いですね。楽しみながら取り組む中で、自然と語彙力もアップしていきます。」
・山手線ゲーム
「知識量が必要な山手線ゲーム。親子で楽しくゲームをしながら、今まで知らなかった言葉を覚えられます。」
小学生以上におすすめのトレーニング方法
・日記をつける
「その日の印象に残ったことを書く習慣がつくように指導しましょう。一日一行でもいいので書き留めるクセをつけることで、自分の想いにも向き合えますし、それを言葉で表していく中で豊かな表現力が身についていきます。」
・音読打率ゲーム
「文章を音読して、いかに正確に読めるかを競うゲームです。音読する力は国語力にも直結する大事な力で、このゲームは集中して正確に読む練習になります。つっかえたり、読み間違えたりした回数が少ない人が勝ち。子どもたちのやる気を引き出すため、楽しく盛り上げるのがコツですよ。」
またこうした親子の関わりあいとともに、小学生以上では漢字学習が大切だそう。
「漢字は国語力の土台になります。小学生になったら、子どもが嫌がっても、漢字学習だけはとにかくやらせてください。最初は嫌でも、やればやった分だけ身についてくるので、だんだん楽しくなってきますよ。」
学力向上だけではなく、社会生活にも役立つ「国語力」。親子で一緒に「国語力」を鍛えてみましょう。
★この記事のポイント★
- 読解力・表現力など、『国語力』はあらゆる学問の土台
- 国語力を伸ばすためには、家庭での親子の関わり方が大切
- 語りかけ、読み聞かせ、言葉遊び、読み書き…と年齢にあったトレーニングで国語力を伸ばそう
※参考書籍
お話を聞いたのは…
高濱 正伸さん
花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。
「数理的思考力」「国語力」「野外体験」を重視した、幼稚園児から小学生向けの学習教室「花まる学習会」を設立。
保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど。『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『小3までに育てたい算数脳』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。
株式会社 こうゆう
ライター紹介
堀内 優子_おふぃすともとも
大阪生まれ、大阪育ちのフリーライター。大学卒業後、丸の内OLとして約2年間勤務。しかし「自分ならではのクリエイティブなことがしたい!」という思いから大阪に戻り、ライターの世界に入る。話題のお店に行くのが好きで、グルメ系のライティングが得意。海外ドラマ(特に英国ドラマ)にハマっている。
※2016年11月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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