【学びの最前線】100年続く最先端アクティブラーニング! シュタイナー教育で伸びる力

子ども1人ひとりをかけがえのない存在として育むと言われるシュタイナー教育とはどのような教育なのでしょうか? そんな疑問に今井重孝・青山学院大学名誉教授(専門領域:教育学)は、 「100年前から子ども1人ひとりがテーマを深く学びすすめる最先端のアクティブラーニングを行っている教育法です」と答えます。シュタイナー教育の魅力や伸びる力について今井名誉教授に詳しくお伺いしました。

シュタイナー教育とは?

今井重孝名誉教授

未来へいこーよ(以下、未来):「シュタイナー教育」とはどのような教育でしょうか? 概要を教えてください。

今井名誉教授「シュタイナー教育とは、100年ほど前に主にドイツ語圏で活動した哲学者ルドルフ・シュタイナー(1861〜11925)が提唱した教育で、子ども一人ひとりの個性を尊重し、個人が持つ能力を最大限に引き出す教育法です。 子どもの成長の段階を7年周期で捉え、その年齢にふさわしい教育プログラムで学ばせることで、(思考)と(感情)と肢体(意志)のバランスが取れた人間形成を目指しています」

「シュタイナー教育」の子どものとらえ方とは?

未来:具体的にシュタイナー教育の7年周期の子どものとらえ方や年齢により伸ばす力が異なるアプローチとはどのようなものでしょうか?

「シュタイナー教育では、赤ちゃんから21歳の成人までの間に7年周期で子どもの発達は大きく質的に変容すると考え、それぞれの時期に発達する力を育成できる教育手法を工夫することで、21歳になったときにバランスのとれた暖かみのある成人の育成を目指しています」

子どもの意が出てくるのを見守る/0歳~7歳の子どもに大切なこと

「なかでも大切なのが『育成の段階』とされる0歳~7歳の時期です。この時期は、いくら思考に働きかけても、また感情に訴えかけて叱っても、子どもは動きません。むしろ、あれをやれ、これをやれと大人がコントロールをしていると、子どもの中にある『意志』の力が落ちてしまって、指示待ちをするようになるだけでなく、『意志』を発揮できない子どもになってしまいます

写真提供(イメージ)/NPO法人南沢シュタイナー子ども園

「シュタイナー幼稚園では、この時期には本人の中から出てくる『やりたいこと』を安心してできるように、危険がない環境を整えるのが先生の役割です。さらに、子ども自身を先生自身よりも素晴らしい能力を生まれつき持っている存在として認めることを大切にしており、子どもの中にある『意志(やりたい気持ち)』が出てくるのを見守り、それを大切に伸ばします」

芸術教育を通じて子どもの感情表現や共感性を育む/7歳~14歳の子どもに大切なこと

「7歳~14歳は『感情を育成する段階』です。シュタイナー教育では、この段階を感情の豊かさを伸ばす時期だと考えます。の力感情の豊かさ思考の力は成長するに従って順番に発達していくので、感情を育むべき7歳~14歳の時期に十分に感情を育まないと、バランスが崩れて14歳以降の思考の時期に深く考えることができなくなってしまいます。そのためこの時期のシュタイナー教育は、芸術的教育を中心にしたアクティブラーニングが行われます」

「芸術的教育を行う理由は、美には普遍性があり、美を味わう体験が非常に大切なだけでなく、学びの中で自分の感じたことを芸術で表現し、それぞれの子どもの表現をお互いに尊重しあう経験が子どもの中に共感性や自信を育むからです。例えば理科でも自然の美しさなど芸術的な視点で学びます。国語であれば詩など、そして算数でも美しさの視点での学びがあります。このように芸術科目以外の教科の学習でも、芸術的な要素を組み込んだ授業を行うことで、この年齢層の子どもたちの感情の豊かさが育まれるのです」

写真(イメージ)/PIXTA(シュタイナー学校ではありません)

7歳~14歳の年齢にあたるこの時期にも、最近の日本の教育の中では、グループディスカッションや、ディベートがよく用いられていますが、シュタイナー教育では、感情の教育の時期に、論理的思考をさせるのは、感情の教育を阻害する恐れがあるので、しないほうが良いとされています。例えば、小学生がディスカッションをしている場面で、自分で考えたり感じたりしたことを言うのではなく『親が言っていることを考えずに真似して言う』や、『先生が導きたい答えを当てにいくことの方に頭を使って発言をしている』場面を見ることはないでしょうか。このようになってしまうと、14歳以降の思考の教育にも、支障が出ると考えられているのです」

アクティブラーニングで本来この年齢層の子どもに育成する必要があるのは、主に感情や感性に働きかけることなのです。自分自身で考えることは、まだできないのです。感情や感性に働きかけることができるのは、先生の生徒に対する暖かな眼差しであったり、優しい声がけであったり、心のこもった語りかけであったりします。また、自分の授業の中に芸術的要素を取り入れることが効果的なのです

感情の発達の途中にある年齢段階においては意見を戦わせるよりも、それぞれの感じたことがいいという前提に立って、友達が感じたことに共感し、感じたことや気持ちを伝えあったり表現したりといったことが大事だと、考えられているのです。それぞれの人の発言は、それぞれみな正解なのだという教育を受けると、自分が尊重されていると感じられる子どもになります。こうしたシュタイナー教育のアクティブラーニングが今注目されて、世の中から素晴らしいという評価を受けはじめているのだと思います」

次のページへ>子どもが面倒な問いに「適当に考える」のはなぜ?

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出版社、教材編集を経て2013年に「いこーよ」へ。小学生の女の子2人のママ。大学院、モンテッソーリ教育教師、華道、ダイビング資格有。ライフテーマは幼児教育から小学校、中学校、高校、大学、社会人へとどのように学びをつなげていくか。特に幼児教育から中学受験への連携に日々奮闘中。

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