映画「アナと雪の女王」で雪の女王エルサがみせた魔法のように、雪には実際に「魔法がかかる」ほどの魅力が詰まっています。雪は冷たくて、ツルツル滑るし、手の平におくと溶けるし、握ると固まる。子どもにとっては、不思議の連続です。せっかくなら、本物の雪の世界へ親子でお出かけしませんか?
そんな不思議な雪の世界でどんな魔法がかかるのか、和洋女子大学 こども発達学類 こども発達学専修 教授の太田光洋先生にお話を聞いてみました。
雪の世界の魔法とは?
想像力や表現力が豊かになり、こころが育つ魔法!
雪の中での子ども遊びは、遊びのプランやイメージをふくらませ「今度はこうしてみよう」とか「たくさん雪だるまを作ろう」などと考えながら、全身を使って取り組んでいきます。そしてそれをお母さんやお父さんに見せたいという気持ちになることが、表現の第一歩といえます。伝えたいことがあって、伝えたい人がいることで表現や言葉が豊かになり、感性豊かなこころの成長につながっていきます。
こころの成長に大きく影響するものの一つに、「大人が子どもにかける言葉」があります。例えば親子で一緒にソリで滑った後、子どもが感じたことや小さな反応を受けとめて、ぜひその瞬間の気持ちを言葉にして伝えてみましょう。
「最初は少しだけ怖くてドキドキしたけど、一緒に滑ってみるととっても楽しかったね」など、できるだけ具体的に伝えてください。
この声掛けから、ドキドキするってこういうこと、一緒に滑りきった喜びってこういうこと、といった感情を言葉とセットにして心にとどめていきます。言葉を習得することによって、知識だけでなく、達成感、信頼感、一体感、高揚感などのさまざまな感情も豊かにしていくのです。
また「雪」の表現に関しても、「サラサラしてるね」、「太陽の光に当たるとキラキラ光るね」、「目に入る世界全部が真っ白でまぶしいね」など、多様な言葉をかけてあげることでも、感性が磨かれていきます。気持ちや物事を表現する言葉の種類が多ければ多いほど、表現力が豊かになり、こころの成長につながるのです。なので、決して「ソリ滑り、やばかったね」「すごかったね」というひと言では済まさないでくださいね(笑)。
雪の世界の体験によるカラダの感覚を育む魔法!
雪の世界では、普段とは違う色々なカラダの動きと感覚を体験することができます。
固まった雪の上を歩くとツルツル滑り、新雪の上をあるくとズボっと沈みますよね。これらは、カラダの感覚を養うのにとても良い経験になります。ツルツル滑らないように重心をしっかり落としたり、沈んだ足をよいしょ!と持ち上げたり、普段の生活では意識しないような体の使い方をするので、無意識のうちにカラダも育まれていくと言えますね。幼児期の子どもの運動能力は、スポーツよりも「遊びの中」で多様な動きを経験することで、より育まれるということが知られています。
また、真っ白に広がる銀世界での雪遊びは、何より子どもの気持ちを開放的にします。これも、雪が子どもを魅了する魔法といえるかもしれません。
雪の世界で、親は子どもとどのように関われば良いですか?
スキー場に行ったときの子どもの反応によって異なります。
真っ白に広がる銀世界を目の前にしたとき、(一瞬ですが)子どもはまず驚き、何かわくわくした、開放的な気持ちを持つことが多いようです。雪の魔法をかけるためには、子供の反応に応じた親の対応もとても大事だとか。
【1】雪の世界に夢中に飛び込んでいく子供の場合
まず、近くで、子どもが夢中になってどんなことをするかしばらく見守ってあげてください。雪は子どもが働きかけた通りに応えてくれます。両手で丸く固めれば雪玉ができますし、なめたり息を吹きかければ溶けたりもします。全身を使ってダイナミックな遊びもできますし、山やかまくらを作ることも簡単です。
そんな時に「親が近くで見守ってくれている」と感じることで、子どもは安心感をもって遊びに集中することができます。また、夢中になって遊んでいることを肯定的に受けとめてもらうことで、自信を持つようになります。
つまり、親の愛情をしっかり感じることで、子どもは積極的にものごとに働きかけ、行動範囲をどんどん広げていくことができます。そんなのびのびと遊んでいる姿から、親も知らなかったその子らしさを知ることもできるかもしれませんね。
【2】少し驚いて、なかなか動き出せない子供の場合
まずは一緒に雪に触れてみましょう。親が実際に雪で遊んでいる様子を見せてあげてください。雪をギュッと固めて雪団子を作って見せたり、雪の上にゴロンと転がってみたり、雪だるまも良いかもしれません。楽しそうな親の姿に触発されて「自分もやってみたい」という気持ちを引き出すことができます。
子どもが雪と遊び始めたら、【1】と同じようにしばらく近くで見守ってみましょう。そして、どんな遊びに興味があるかを見極めて、一緒に遊んでみましょう。初めてのことに慎重な子であっても、親がちょっと寄り添って一緒に取り組むことで、安心して遊べるようになるものです。普段の生活にもいえることですね。
まとめ
親子ででかける雪遊び。真っ白に広がる銀世界で、子どもがどんな顔を見せるのか、何に夢中になって、そこから何を得て戻ってくるのか。その無垢な瞳で、何を見つめているのかな……。雪の魔法で、どんな風に成長するのかな。
その姿を想像するだけでとってもドキドキワクワクする、親にとっても魔法のような魅力が、雪遊びには詰まっています。そんな魔法がとけないうちに、ぜひ、家族でスキー場にお出かけしてみてくださいね。
お話を聞いたのは…
太田 光洋先生
和洋女子大学こども発達学類教授。旭川大学女子短期大学部教授、旭川大学附属幼稚園長、シンガポール国立大学客員研究員、九州女子大学教授などを経て、現職。現在、保育文化学会を設立し、保育者、保育学生、研究者を対象に保育現場での遊びや活動の紹介、保育と子育て支援に関する研修などを行っている。「保育言論」「実践としての保育学―現代に生きる子どものための保育」など著書多数。
ライター紹介
島袋 芙貴乃
沖縄生まれ、沖縄育ち。東京生活9年目。編集畑で図太く育ち、2014年11月から「いこーよ」にジョイン。心に愛と太陽を。海山川、星、月、朝日、夕日、虹etc.自然に関わること、きゅんっとすることが好き。お米派。幼稚園教諭一種免許保有。
※こちらは2014年12月にいこーよで公開された記事の再掲です。