【世界の子育て:スペイン】学校選びや休み事情を現地からレポート!

文化や習慣が違えば、子育ての常識も変わるもの。そこで、世界の子育て事情を国別にシリーズで紹介していきます。海外ではどんな子育てが行われているのか、実際に現地で暮らすママに実情を明かしてもらいます。

今回は、スペイン・バルセロナ在住で2人の子どもがいる中森有紀さんに現地の実情を聞きました! 「情熱の国」と言われるスペインの教育や子育て事情、パパママの労働環境などを見ていきましょう。

アメリカの子育ては日本とこんなに違う! 日米の育児事情&比較

【学校教育】2歳の時点で教育方針を検討

スペインの育児事情を紹介!

スペインの教育システムは、まず幼稚園3年+小学校6年。その後、中学4年、高校2年と続きます。生後4カ月で保育園に入り、2歳ごろから幼稚園などの学校探しを始めるため、3歳以降の就学率が95%。ほぼ100%に近いことにびっくりしました!

ただ、日本のように校区でわかりやすく区切られているわけでないので、親は公立・半公立・私立の中から教育方針、宗教(カトリックもしくは無宗教など)、言語などを基準にして学校を選びます。

スペインは地方によって文化も主要言語も異なるため、学校選びの際も言語は重要です。公用語としては4つの言語が存在して、3歳から英語の授業が始まる学校も多数あります。

私立の場合は、0歳児から高校までエスカレーター式になっている学校もあり、親が早い段階で教育方針に関して考えなければならないので大変です。ただ、スペインには転勤というシステムがないため、私立に通うと、幼馴染が大きくなるまで親戚のように一緒に育っていくパターンが多いのも特徴のひとつ。自分の州から出たことがないという大人にもよく会います。それほど自分の土地に誇りを持っているというのは、すばらしいことなのかもしれません。

ちなみに、公立に進んだ場合、中学4年までの義務教育にかかる費用は無料です。

自己主張できる子を育てる教育

スペインの教育で重要なポイントの1つに「自己主張ができること」というものがあります。どんなに性格がおとなしい人でも、自分の意見をきちんと言える教育を受けています。

たとえば、保育園2歳のクラスでは、クラスメイトが持ち回りで自分たちのクラスのマスコット(ぬいぐるみやお人形など)を持ち帰り、週末一緒に過ごすという取り組みをしています。マスコットを持って近所の公園に遊びに行ったり、スーパーに買い物に行ったりして、その様子を写真に撮ります。大きな画用紙に何枚も写真を貼って学校に持って行き、クラスのみんなの前で「どういう週末を過ごしたか」について発表します。

「たった2歳でそんなことができるの?」と驚かれるかもしれませんが、スペインの子どもたちは、きちんと自分で発表ができています。

【生活】のんびりとした時間が流れる「スペイン時間」

幼稚園の年少さんクラス(3歳)から小学校6年間は、朝9時から夕方5時までみっちり授業があります。小学生の学校の行き帰りはパパママや祖父母、もしくはベビーシッターなどが必ず付き添うのが社会のルールです。

昼休みは1時間半から2時間ほどあり、家に一度お昼ごはんを食べに帰る子どもと学校に残って給食を食べる子に分かれます。この行き帰りもパパママなどの付き添いが必要なため、学校と家を1日4往復する親もいます。

ちなみに、学校で給食を食べる場合は、担任の先生に代わって、アルバイトのようなアシスタントの先生が子どもたちの面倒を見ます。これは学校の先生の労働時間が長いためで、このようなシステムで学校の先生の労働条件が守られています。

放課後には、そのまま学校でスポーツや楽器、英語など習い事ができるところも多く、共働きで帰りが遅いパパママには大助かりです。

夏休みは約3カ月も!

バカンスを利用して日本に帰ることもあります

さらに、子どもたちの夏休みは6月半ばから9月初めごろまで約3カ月もあります。その期間、祖父母が子どもたちの面倒を見ることもあれば、子どもを学童保育に行かせたり、サマーキャンプに参加させたりします。

夏休みの宿題もほとんどなく、田舎にあるセカンドハウスに行ってのんびり過ごす家庭が多いのが、うらやましいところ。豪華な海外旅行に行って、たくさんお金を使うわけでもないのですが、「暮らしが豊かというのは、こういうことではないかな」と思います。

【労働環境】利用しやすい有休・産休・育休制度

スペインでは、法律で「1年のうち1カ月の有給休暇を取得すること」が義務付けられていて、多くの人が夏にバカンスをとります。全員が必ず有休を取るので、嫌味を言う上司や同僚はいません。

日本にも出産休暇と育児休暇の制度がありますが、スペインにもあります。ママは産後4カ月間、パパは2017年まで2週間でしたが、2018年から1カ月になりました。有休同様に、産休や育休を取る同僚に対して、文句を言う人がいないのがスペインのいいところ。

さらに、子どもが生後9カ月になるまでは、授乳期間として毎日1時間の時短が認められています。共働きが多いスペインでは、産後4カ月ですぐ職場復帰する人もいれば、1年ほどの育児休暇をとって休む人もいます。最長3年まで無給ですが父親でも母親でも育児休暇が法律で認められています。

金曜は午後半休が多い

普段は1日8時間労働が基本。夫婦ともにフルタイムで働く家庭が多いです。金曜は午後半休で14時か15時に終わる会社も多く、夏になると仕事終わりにビーチに直行する同僚も多いです。

【医療】出産&産後の医療費は無料

スペインで出産する場合、公立の病院に通う場合は、妊娠期間中のエコー検査、診察、出産、産後検診などは全て無料です。40年ほど前から無痛分娩が一般的となっているため、麻酔代も無料でカバーされています。日本のように普通分娩で出産する人はわずかです。

公立病院は基本的に医療費無料

基本的に公立の病院に行く場合は、医療費は子どもから大人まですべて無料。一部の任意の注射を除いて、子どもの予防接種の注射代も検診も無料です。薬代については、住む州や世帯収入や薬の種類などによって負担額が変わりますが、4割から5割負担するのが一般的です。

【子育て】すぐにヘルプを頼める子育て環境

近所の公園はこんな雰囲気です

スペインの夏は22時ごろまで外が明るく、小さな子どもでも22時過ぎまで近所の公園で遊ぶ姿が見られます。深夜にベビーカーを押しながら地域のお祭りに参加している夫婦がいても、誰も変な目で見たりしません。授乳も公園、レストランでもどこでもOKという雰囲気で、周りも大らかに子育てするパパママを見守ります。

<地域のお祭りで開かれる絵画コンテスト>チョークで地面に絵を描きます

また、若いパパママは共働きが多いため、祖父母の出番が多いです。仲の良い家庭が多く、親類同士が近所に固まって住む傾向があります。祖父母がいない場合でも、お手伝いさんやベビーシッターさんを雇うのが一般的です。周りを頼りながら子育てをするのがスペイン流です。

子育て中のお母さんでも、平日は習い事をしたり、ジムに行ったり、自分の趣味の時間を作り出して、ストレスをためないような努力をしています。また、子どもを祖父母やベビーシッターに預けてでも、週末デートや記念日デートなどをして夫婦の時間を大切にします。これは日本のパパママも真似したいところですよね。

みんなで集まって食事をします

そして毎週日曜になると、おばあちゃんのおいしいご飯を食べるために、家族や親戚が大集合する家庭も多いです! 有名なスペイン料理にパエリアがありますが、日曜のご馳走メニューです。

日曜はお店も閉まっているため、スペインでは「ゆっくり家族と過ごす日」という位置づけです。親戚の小さい子どもに触れる機会の多いスペイン人は、街中でも小さい子を連れているパパママに対し、みな親切です。

子どもにずっと話しかけるスペインのママたち

スペイン人の基本的な性格を一言で言い表すなら「おしゃべり」。スペインのママは妊娠中からずっと子どもに向かって話しかけます。ベビーカーを押しながらも、必ず赤ちゃんに向かってしゃべり続けて歩いています。その影響もあって、子どもは早く言葉を覚えるのかもしれません。

また、「ほっぺにキス」があいさつのスペインでは、家族の間でもとにかくキスをします! 朝起きてキス、いってきます・おかえりのキス、おやすみのキス。キスといっしょに「大好きだよ」「愛してるよ」と必ず言葉にして伝えます。子どもたちはその言葉に安心感を与えられて、育っていきます。

以上がスペインの子育て事情です。所変わればやり方も変わってくるものですが、本当にたくさんの違いがありますね。次回はフィンランド編をお届けします。

ライター紹介
中森 有紀
スペイン・バルセロナ在住の通訳、ライター。12歳と9歳の2児の母。いつも天気が良いバルセロナでスペイン語とカタルーニャ語と日本語の三ヶ国語を駆使して子育て奮闘中。趣味は料理、カラオケ、サッカー観戦、映画鑑賞。
ブログ:うきうきバルセロナ

※2018年4月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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