一人っ子を育てる親が抱えがちな悩みや心配事ってありますよね。よく「うちの子、一人っ子だからわがままになっちゃって」なんて話も聞きますが、実際、一人っ子ならではの性格の特徴ってあるのでしょうか?明治大学文学部教授で『ひとりっ子の育て方』の著者である諸富祥彦先生にお話を伺いました。
マイペースで自己肯定感の強い一人っ子
一人っ子の親御さんは、子どものマイナス要素を一人っ子であることに結びつけて考えてしまいがちですが、実際には『ひとりっ子=わがまま』なんて、全く根拠のない説であると、諸富先生。一人で過ごす時間に慣れている分、わがままというよりマイペースなだけなんだとか。
「きょうだいがいると、ものの取り合いなどの衝突が日々発生しますから、お互いに折れ合って妥協のしどころを学ぶことができます。
一人っ子は自分のペースを崩されるような理不尽な経験をしないため、他人と上手に人間関係を築くのが苦手という面はあるかもしれません」(諸富先生)
他人とのコミュニケーション力が磨かれにくいという一方で、一人っ子は親の愛を独占できるため、きょうだいがいる子以上に「自分は両親から愛されている」と感じることができるんだとか。
「子どもが複数いる親は、優劣をつけるつもりはなくても、無意識のうちにきょうだいを比べてしまいます。その結果、子どもの心に『私は兄よりも愛されなかった』というような『きょうだい間の劣等感』が植え付けられてしまうことも。このようなコンプレックスを一生引きずって、自己否定の気持ちを抱え込んでしまう人も珍しくありません。
ほかのきょうだいと比べられることなく、親からの愛情を一身に受けることで、自己肯定感を得ることができるのは、一人っ子ならではの利点でしょうね」(諸富先生)
「自己肯定感」がしっかり育っていれば、苦境に立たされた時にもポジティブな考え方で乗り切ることができ、安定して幸せな人生を歩める可能性が高いと諸富先生。マイナスイメージが一人歩きしがちな一人っ子ですが、こんなメリットもあるんですね。
一人っ子はかわいそうじゃない!?親が注意すべき事とは?
「きょうだいがいないことで、一人で過ごす時間が多くなってしまってかわいそう」と思っていませんか?それは大人の思い込みにすぎないと諸富先生。
ひとりでいる時間は、クリエイティビティを高める絶好の機会なんだとか。
「子どもが一人で過ごす時間というのは、
思考や空想を自由にめぐらせて、自分の内面世界で豊かに遊んでいるのです。それは非常に有意義な時間なので、寂しくてかわいそうだなんて思わないであげて下さい。子どもは親のネガティブな思いを鋭く見抜いて、『自分はかわいそうな子なんだ』と思い込んでしまいます」(諸富先生)
また、
お友達とのコミュニケーションが苦手でも、親のちょっとした工夫や働きかけで補うことができるそう。
「きょうだいは『初めて出会う他人』ともいわれます。ひとりっ子は他人に出会うのがちょっと遅いだけ。初めは遅れをとっているように見えるかもしれませんが、
親が意識的に同年代の子と触れ合う機会を増やしてみて下さい。早い時期から保育園などに通わせて集団生活を送ることで、『疑似きょうだい』を作ってしまうのも効果的です」(諸富先生)
公園などで、既にいるお友達と一緒に遊びたいけど仲間に入れてもらう方法がわからない場合には、親が自ら「何してるの?」「いれて」と声をかけてみるといった、具体的な行動のモデルを示してあげるといいそうです。
一人っ子の長所を伸ばし、短所をフォローできる習い事
一人っ子の場合、親は、一人で過ごす時間が長くならないようにするためにも、早くから習い事をさせようと考える人が多いようです。諸富先生いわく、一人っ子の長所を伸ばし、短所をフォローできる、おすすめの習い事やスポーツがあるんだそう。
「総合的な感覚が育ちやすいピアノはおすすめです。頭を使いながら両手全ての指を動かすことで、器用さや運動神経の向上、美への感受性や知的な発達といった様々な良い影響があります。家で一人で過ごす時間が長く、クリエイティビティの高い一人っ子にはピッタリの習い事といえるでしょう。」
「また、
サッカーや野球、バスケットボールなど、チームプレイができるスポーツにもぜひチャレンジしてみて下さい。チームメイトとのやり取りの中で、他人との関係性を築く力を養うことができるでしょう」(諸富先生)
ただし、習い事はイヤイヤやっていても身に付かないので、無理してたくさん掛け持ちさせる必要はないとのこと。親は過度な期待をかけすぎないようにして、子ども自身が楽しんで続けられることが大切なんですね。
ちょっとマイペースだけど、自己肯定感の基盤をしっかり持って、素直にスクスクと育つ一人っ子。親としては、一人っ子であることをあまり心配しすぎず、愛情いっぱいに接してあげることが一番なのかもしれませんね。
お話を聞いたのは…
諸富 祥彦先生
明治大学文学部教授。教育カウンセラー。教育学博士。著書に『プチ虐待の心理』(青春出版社)、『スマホ依存の親が子どもを壊す』(宝島社)、『男の子の育て方』『女の子の育て方』『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版)、『10歳までの子育てのルールブック』(宝島社)、『「子どもにどう言えばいいか」わからない時に読む本』(青春出版社)などがある。
諸富先生の公式ページ
ライター紹介
宇都宮 薫
編集プロダクション勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディアなどへの執筆のほか、単行本(ビジネス書・実用書)の編集・構成を手掛ける。得意ジャンルは、出産、育児、健康、おでかけ、芸能、グルメなど。まち歩きとバイクが好き。
※2015年7月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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