中村元さんが語る「常識は間違っている」から始まる新しいアイディア

つくる人
たゆまぬ努力を続け、生産品に愛情を注ぎ、好奇心や探求心、情熱を常に持って暮らしている「つくる人」にお話を伺い、人として生きていくのに必要なものに迫るインタビュー。

中村元さん 水族館 水族館プロデューサー 水塊

弱点だからこそ、他にはない強みが生まれる

サンシャイン水族館も「よっぽど」の弱点を強みに生かした例。高層ビルの最上階なので重量制限があり、水量の多い水槽は設置できないという致命的な弱点がありました。さらに水族館の半分は屋上が占めているんだけど、建築基準法上、屋根やテントもつけられないから、夏は直射日光が暑すぎてお客さんは嫌がり、雨にも弱い。この最悪の弱点をどうしたらいいか。

それまでは、その制約への対応のために、水のないアシカショーをやったり、小動物の展示をしていたけど、それでは弱点に従っているだけ。僕はこの弱点を活かして、都会のオアシスにしよう!ということを思いつきました。水量が多い水槽が設置できないなら、浅い水槽にしよう

一躍有名になった「天空のペンギン」の水槽は20センチの深さ。ペンギンが立ったらカラダが半分出ちゃうんですけどね(笑)。屋根がつけられないから、この浅い水槽を頭上に置いて、空を借景にした日よけ雨よけにした。ついでにもともとあったビルの外壁を取り払って、水槽そのものを壁にしたら、向こうにどこまでも続く青空が透けて広さの借景となり水槽が広く見えるし、風よけにもなる。さらに雨除けの通路にもなる、頭上の川のようなペリカン水槽も作った。いずれも水槽だから展示物扱いになって建築基準法にもひっかからないんですよ。

世の中は凡才によって成り立っている

未来:お客さんを喜ばせることがゴールなんだと常に考えているからアイディアが出るんでしょうか。

僕は凡才だからいろいろ覚えたり考えたりできない。だから常に問題点だけを頭に置いているんです。その問題解決のために、今まで経験してきた関係なさそうなものをつなげて考えているからなんでしょうね。凡才が思いつくことって、どこか別の分野でもう思いつかれて実現されてることなんですよ。

演劇の奥行き演出をみて水槽の演出を考えついたのも、今まであったものを自分のやりたいことにつなげたということだと思います。世の中のたいていの進歩っていうのは、そういう凡才がやったことの積み重ねなんです。そういう意味では、世の中は凡才によって成り立っているのかもしれない。凡才バンザイ!ですね(笑)。

撮影協力:サンシャイン水族館

インタビューアーのコメント
「弱点を弱点だと思うのは常識に囚われているから。よほどの弱点こそが強みなんだ」という中村さんの考え方に自分の視点の狭さを痛感しました。「世の中のたいていの進歩は、凡才がやったことの積み重ね」という言葉にも、大きく勇気づけられたインタビューでした。

・前編「好奇心を育み、多様性を体験させる水族館の秘密指令とは」

・中編「弱点は克服するな、長所は無理して伸ばすな」という逆転の発想が強いワケ

中村元さんプロフィール 中村元さんは、飼育員、副館長などを経て21年間、三重県にある「鳥羽水族館」で水族館の仕事に従事。その後は、日本で唯一の「水族館プロデューサー」として、サンシャイン水族館、マリホ水族館、北の大地の水族館、新江ノ島水族館など多数の水族館の再建やリニューアルを手掛ける。水族館に関する一般向けの書籍を多数執筆をする傍ら、夢の扉+(TBS)、マツコの知らない世界(TBS)などテレビにも多数出演。
 
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中学受験を経験した辞典体質の高2息子とダンスに夢中な和み系の小6娘の子育て中。仕事モードと同じく、効率とマルチタスクを家族にもつい求めてしまうことを時々反省している。稀に見るほどの方向音痴。日記を毎日書かないと落ち着かないため、いつでも持ち歩いている。

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