江戸時代には寺子屋としても慕われていたお寺で「現代の寺子屋イベント」を実施しました! 午前中は大人が座禅、子どもは禅の修行のひとつ「作務」として、けんちん汁作り(精進料理が発祥)や掃除を担当、午後は大人と子どもが一緒に地元の伝統的な生産品「越生うちわ作り」を行いました。非日常空間でたくさんの挑戦をして、新鮮な驚きや笑顔が見られたイベントの模様を、参加者のアンケートとともに紹介!
【座禅体験】静寂の中で風の流れや鳥の声を聴いて心身をリフレッシュ
イベントを実施したのは、鎌倉時代に臨済宗の大本山・建長寺の末寺として建てられた埼玉県越生町の正法寺。大人の参加者はまず、本堂で座禅を行いました。正法寺の住職・岩田智道(ちどう)さんに途中休憩をはさみつつ約50分間指導していただきます。
座禅で足を組むと姿勢が安定し、胸を開くようにしてあごを引くと呼吸が楽に、深くできるようになります。座禅は昔からあるものですが、じつはすごく理にかなった姿勢なのです。また、専用のクッションを敷くことで足のしびれが軽減されるようになっています。
住職の案内に従って姿勢を正し、視線を一定に保ちながら意識を外側に向けていくと、風が流れていくのを肌で感じるようになり、鳥や虫が鳴く声が聞こえてくる、静かで穏やかな時間がやってきます。参加者からも「心地よい時間」や「心が洗われる」という感想をいただき、よいリフレッシュになったようでした。
<アンケートより>
・身体が硬過ぎて足を組むことすらできませんでしたが、清浄な空気の中で息を整えて姿勢を正して静かな時を過ごし、心が洗われる体験でした。
・思った以上に大変で、いかに毎日姿勢が悪いかがわかった。姿勢が正しいとホントに体が温かくなるので驚いた。
・余裕で座禅が組めると思っていましたが、かなりキツかったです。自分の体の歪みや硬さと向き合う事が出来ました。座禅の良さを教えて頂き、またチャレンジしたいと思いました。次の日筋肉痛でした(笑)。とても良い経験でした!
・初めての体験で脚の組み方、目を閉じるのではなく見開く、なぜ警策(座禅時にお坊さんが使う棒)で肩を叩くのかなどを学ぶことができて新鮮でした。自然の中で、風を感じ小鳥のさえずりを聴きながら、和尚様のお話を聞きながら心地よい時間を過ごすことがてきて浄化されました。
【作務体験1】精進料理がルーツの「けんちん汁」作り
大人たちが座禅をしている間、子どもたちはまず「けんちん汁作り」にとりかかりました。じつはけんちん汁の「けんちん」とは「建長寺汁」が語源で、建長寺を創始した蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が崩れた豆腐や野菜を煮込んだ汁が由来ともいわれています(諸説あります)。正法寺は建長寺の末寺にあたり「けんちん汁」にも縁があるお寺なのです。
作務体験をする子どもたちは、一日弟子入りの証としてスタッフと同じ「手ぬぐい」を頭につけています。手ぬぐいの巻き方も、お寺で作務を行うときに実践しているやり方です。包丁を持つのが初めての子もいるので、まずは持ち方から教えていきます。教えるのは住職のご家族と弊社スタッフです。いちょう切りや乱切りなど、複数の切り方を教えました。
野菜を炒めるところでは、自分が切った野菜を鍋に投入するところまでを子どもたちが行います。
けんちん汁に油が入っているのは、根や野菜の端の固いところを美味しく食べるために油で炒めたことが由来になっています。ニンジンやゴボウ、豆腐、こんにゃくなど具だくさんのけんちん汁になりました。
使った包丁やまな板を洗ったり、テーブルを拭いたりと「片づけと次の準備」をするのも料理の大事な仕事です。ここも子どもたちが担当しました。
<アンケートより>
・子どもは料理がほぼ初体験でした。
・家族とはお料理しますが、なかなかお友達とお料理をする機会がないので、お料理の場面ではがんばったようです。楽しくできたと話していました。
【作務体験2】お地蔵さんや石像を洗う! 花や芝を植える体験も
けんちん汁の野菜が柔らかくなるまでの間、子どもたちにお寺の修行である「作務」として取り組んでもらったのが、お地蔵様や大黒様などの石像を洗うこと。
雨風による汚れやコケなどをタワシで落としながら、洗い方を教えてくれていた住職の息子さんと娘さんに「これはなんていうの?」「どういう神様?」など、たくさん質問をしていたのが印象的でした。お寺だからできる貴重な体験に、子どもたちのテンションも上がったようです。
石像を洗ったあとは、彼岸花を植えたり、コケを植えたりする土仕事をしました。正法寺は、いつでも気軽に来訪できるお寺です。自分が植えた植物が半年後や一年後にどうなっているのか見にくるのも楽しそうですね。
【昼食】おにぎりを作ってお寺の作法に従って食べる
土仕事がひと段落したら、家族ごとにおにぎりを作って本堂で食べます。大きなおひつから食べられるぶんだけご飯を手に取り、おにぎりにします。
けんちん汁をよそってもらうときも、お寺のお坊さんが実践している方法で「もっと欲しい」と「十分です」を手の合図で伝えます。会話をしなくても意志が伝わるので、コロナ禍にも合っている方法です。
食事は大人と子どもが向かいあう形で食べます。これはお寺の作法で「子どもが大人のふるまいを見ながら食べられるように」という意味があります。
参加者がご飯を食べている器は持鉢(じはつ)と呼ばれるもので、マトリョーシカのように重ねてひとつにできます。最後は食べ終わったお茶碗に、熱いほうじ茶をかけて飲み、ふきんで拭き取るのがお寺の作法。無駄なくキレイにできるだけでなく、ほうじ茶は殺菌成分があり、日々使っているとこれだけでカビなどは生えないのだとか。お坊さんは1人1つ専用の持鉢を持っているそうです。
<アンケートより>
・おにぎり作るのが楽しかったそうです。
・おわんの洗い方など知らなかったことを知って体験でき、面白かったです。
・お食事後にお漬けものなどでお茶碗や器をほうじ茶を入れてきれいにすることは初めてで、知らなかったことを知り、食べるときにもきれいになるように気をつけて食べるという話を姉たちにも話し、自分でも気にかけて食べるようになった。
・普段のスタイルとは違った場所でお膳を使いきちんと食事に向き合うことができたように思いました。じっくり、子供たちが頑張って切ってくれたお野菜やこんにゃくやお豆腐を見て感動し感謝して、この時を過ごすことができたことにも感謝の気持ちでいっぱいでした。
・食の細い娘がご飯が残った時、おにぎりにして完食しました。
・無駄を出さない食事法に心打たれてしまいました。いかに普段、贅沢で無駄な事をしていたか、自分と向き合う事ができました。子供もご飯粒を残さず綺麗に食べていました。違う形であれ、無駄を無くしていく事に取り組んで行きたいです。