2020年10月30日(金)に、「ほんのハッピーセット」を販売している日本マクドナルド株式会社が、絵本の読み聞かせに関するオンラインセミナーを開催。
発達教育学の第一人者であるお茶の水女子大学名誉教授・内田伸子教授が登壇し、絵本の読み聞かせが親子にもたらす効果についてお話しされました。
想像力の形成は生後10カ月から!
子どもの言語や認知発達の研究に従事し、おもちゃや子ども向け番組の開発にも携わる内田教授によると、子どもの想像力は生後10カ月頃から養成されるとのこと。この頃になると、脳の海馬と扁桃体が一緒に働き始めることで、記憶し、それを思い出せるようになります。物を認識したり、イメージの誕生により見立て遊びをしたりするようになるのも同じ頃です。
また、環境の変化に敏感に反応して、びっくりした表情で「あれなに?」と大人の顔を見上げて問い合わせる「社会的参照(social referencing)」などの行動もみられるようになります。そこで、生後10カ月の赤ちゃんを対象に社会的参照行動についてある実験をしたところ、乳児の気質は大きく2つに分けられることがわかりました。
「物語型」の子どもと「図鑑型」の子ども
実験の内容は、生後10カ月の赤ちゃんとお母さん100組にプレイルームで遊んでもらい、犬型ロボットを提示。驚いたときの赤ちゃんの反応を観察するというもの。
ロボットが現れたときに、お母さんの顔を見上げた(社会的参照行動をとった)子どもが約6割だったのに対し、見上げなかった子どもは約4割でした。その後、子どもが1歳半になったときに同じ実験を繰り返したところ、その割合は変化せず、それぞれ同じ反応を示しました。つまり、生後10カ月で社会的参照行動をとらなかった子どもは、1歳半でも同じ反応を見せることが多かったのです。
そこでさらに調査を行ったところ、社会的参照をした子どもとしなかった子どもで、習得している語彙に違いがあることがわかりました。社会的参照をした子どもの発語語彙の65パーセントは「おいち(し)いね」「きれいね」というような挨拶や感情表現の言葉で、残りが名詞でした。反対に、社会的参照をしなかった子どもの発話語彙の95パーセントは名詞で、残りの5パーセントが「落っこった」「行っちゃった」などの動詞でした。
内田教授は、社会的参照をした子ども、つまり挨拶や感情表現の言葉を多く習得していた子どもを「物語型」、発語語彙のほとんどが名刺だった子どもを「図鑑型」と命名しています。この物語型、図鑑型を分ける原因は、父親か母親の遺伝情報から受け継いだもので、個性の核となる気質の違いです。
物語型は人間関係に敏感なタイプで、ままごとや絵本を好む傾向にあります。また、図鑑型はモノの動きや変化、因果的な成り立ちに敏感なタイプで、プラレールなどの動きがある遊びや図鑑を好む傾向にあります。物語型には女の子が多く、図鑑型には男の子が多いという性差があるものの、子どもは幼児初期から敏感なものや関心を持つものが分かれるということがわかります。子どもがどちらなのか見極めて、興味関心にあわせたものを選んであげたいですね。