医学・環境情報学などの有志の医師や専門家が正しい新型コロナウイルスに関する情報などを発信する「みんながヒーロープロジェクト」と「未来へいこーよ」が手を組んで、ママパパがコロナ禍で本当に知りたい正しい情報や知識を「Q&A」で紹介していきます。
今回は、帝京大学教職大学院准教授で教育学に詳しい中村雅子先生に、「自粛明けの子供の生活と学習」について答えてもらいました。
Q.長期自粛が終わり、学校が再開した時に、子供のメンタルはどうなる可能性がありますか?
【回答者】中村先生

「子供たちは、先生や友達と会えてうれしいことでしょう。学校の先生が、安心して学校に通えるように、分散登校を取り入れながら、少しずつもとの学校の生活に戻していきますので、急がずに見守ってあげましょう」
「再開されても、まだコロナ禍で漠然とした不安もあり、少しのことでも子供が急に泣いたり、過剰に甘えたりする場合もありますが、ごく当たり前のことと思って、叱ったり心配しすぎたりしないようにしましょう」
「子供は、不安を言葉でうまく表現することはできませんから、体調の変化やちょっとしたつぶやきを見逃さず、受け止めてあげることが大切です」
「子供が不適応を起こすのは、自分の中に不安をため込み、誰にも言えない状態が続く時です。そうならないためには、笑顔が出るような楽しい雑談をして、リラックスさせてあげてください。親の笑顔につられるように、子供は良いことも不安なことも話してくれるでしょう。コミュニケーションを欠かさないことが何より大事です」
Q.自粛明けに子供と接するときに、安心させる接し方や声掛けがあったら教えてください
【回答者】中村先生
「子供は雰囲気に非常に敏感です。『あなたのことをまるごと愛しているよ、認めているよ』という雰囲気を作るようにしてみましょう」
「雰囲気とは、言葉そのものではなく、笑顔などの柔和な表情や明るい声のトーンなどです。非言語のコミュニケーションと言われるものですが、言葉以上に大きなものが伝わることが明らかにされています。『あなたの話にとても関心があり、もっと聞きたいと思っているよ』という気持ちが伝わるようにしてみましょう」
「また、ちょっとしたコツとしては、言葉は短く少なく、促す言葉を使うようにすることで、子供は安心して話をしやすくなります。話し始めることができれば、子供は話すことで安定し、聞いてもらえた手ごたえで、さらに安定していきます。親の気持ちを押し付けたりしないように心がけ、相槌を打ちながら聞くのもいいですね」
Q.自粛中にあまり勉強していたとはいえませんが、大丈夫でしょうか?
【回答者】中村先生

「学校の授業は、話し合ったり、発表したりする時間が授業の大半を占めているので、学校と同じ時間だけ机で勉強できていなかったとしても、心配しすぎることはありません」
「小学校の授業は1単位時間を45分として1日平均5単位時間を学習することになっており、そのうち音楽や体育を除くと国語や算数は1日2~3単位時間(3×45分)ですから、休校中に自宅で机に座って勉強する時間は、低学年なら1日45分を2回程度、中学年なら3回程度、高学年なら4回程度が目安です。その時間を机に向かえていれば、十分だと考えてよいでしょう」
「また、一般的に小学校1年生の集中の限界は15分と言われています。学校ではこの45分を15分ずつにわけて課題を出すこともよくあることです。それを考えれば、テレビの教育番組を見た時間も含めて45分程度になっていれば大丈夫と言えるでしょう」
Q.自粛明けからしばらくは、学校での学習時間は短いですが、自宅などでどのように取り組めば良いでしょうか?
【回答者】中村先生
「自宅学習の最大のポイントは、目標を与えることです。誰でも目標なく頑張ることはできません。まずは子供と相談して、自粛明けの一日のスケジュールを作りましょう。学校の時間割を確認しながら、学習と運動、休憩、食事などメリハリのあるスケジュールを作ると良いですね」
「スケジュールができたら、一日の終わりに振り返ってみましょう。あまり厳密に考えず、『大体できている』と感じられた項目に〇を付けたり、シールを貼ったりして、できたことを『見える化』していくと、大いに励みになり、子供の満足感も高まります。とはいえ、最も大切なことはできたことを親が褒めてあげることです」
「学校も時間割があり、チャイムがあることで、けじめがつき、集中できます。また、教師に褒められると頑張る気持ちがわいてきます。自宅でもそのようなことを心がけると学習がスムーズに進みます」
休み明けの子供の生活や学習について教えていただきました。少しずつソフトランディングをさせていきたいですね。ぜひ参考にしてください。

中村雅子先生(教育学・健康教育)
帝京大学教職大学院准教授 。横浜国立大学教育学部卒業、小学校勤務(43年)ののち、東京都教育委員会(10年)、都立教育研究所にて、学校経営、教育相談、幼児教育、人権教育等を担当。その後、小学校校長(15年)として、健康教育、人権教育、家庭科教育、英語教育、特別支援教育を推進。また、全国情緒障害教育研究会会長を5年間務めた。現在、帝京大学教職大学院において、教育と医療連携の推進、教育の制度と経営、教職論、教育課程論などを担当するとともに、スマートキッズ発達支援研究所所長を務める。