幼児が着ぐるみを怖がるのはなぜ? 「怖い」を好奇心に変えるコツ

アニメキャラクターの人形や、かわいい動物のぬいぐるみが大好きな子どもたち。大きな着ぐるみに会えたらさぞ喜ぶかと思いきや、意外なことに大号泣! という経験、ありませんか。人形は好きでも着ぐるみが怖い、という子がいるのはなぜなのでしょうか。子ども発達学の専門家に解説していただきました。

「着ぐるみ怖い〜!」アニメや人形は大好きなのにどうして?

「大人から見れば、着ぐるみは単に大きいぬいぐるみですよね。でも、子どもから見た場合、着ぐるみは、ぬいぐるみやいつものアニメキャラクターとはまったく別の物として映る場合があるのです。着ぐるみを怖がるのはそのせいでしょう。」

神戸松蔭女子学院大学・子ども発達学の教授、寺見陽子さんはこのように話します。

同じ顔や姿をしたキャラクターが、まったくの別物に感じられるとは不思議ですね。なぜ着ぐるみだけに怖さを感じてしまうのでしょうか?

「絵本やアニメで見るキャラクターは、平面的で小さいですよね。ところが、着ぐるみになったキャラクターは、立体的なうえ巨大になっています。子どもが覚えているのは、あくまでも絵本やアニメの中のキャラクター。たとえ姿そのものは一緒でも、いつも親しんでいたキャラクターと同じものだとは思えないのです。だから着ぐるみを見たとき、まず『何これ!?』という感想を持ちます。さらには『知らない巨人がいきなり目の前に現れた!』とすら感じるかもしれません。そりゃ、怖いですよね(笑)。」

ただの臆病とはちょっと違う。怖がるのも発達の証!

着ぐるみを怖がって大泣きされてしまうと、親は戸惑いますし、着ぐるみ(の中の人)にも申し訳なく思ってしまうものですが、子どもの発達の過程上は正常なことだと寺見さんは言います。

「怖いと感じるのも子どもの発達の証。肯定的にとらえていいんですよ。子どもが着ぐるみを怖がる背景にはいろいろな要件が絡んでいますが、中でも大きく関連しているのは、『奥行きの理解』の発達です。」

「生まれたばかりの赤ちゃんは物を平面としてしか認識できませんが、生後8カ月〜9カ月頃になると、自他を区別し、視点の変化から、物を立体として認識するようになります。この感覚が育ってくると同時に、高さや大きさに対する怖さが出てくるので、ガラス張りの床を渡れなくなったり、よじのぼった棚の上から降りられなくなったりします。着ぐるみについては、その大きさと立体感を理解できるからこそ、怖いと感じるわけです。」

なるほど。物を立体的に知覚できるようになって初めて、着ぐるみの大きさに驚いたり怖がったりという現象が現れてくるのですね。

「そうです。奥行きの理解が未熟な時期は、着ぐるみを見ても『何か大きなモノがあるな』くらいの認識だと思います。しかし、乳児期を過ぎ、奥行きを理解できる年頃になると、経験したことの記憶から因果関係(こうしたら、こうなる)を理解する力もついてきます。だから、キャラクターをテレビの中で動くものと理解していたり、ぬいぐるみをイコール小さいものとして覚えていたりすると、動きも大きさも違う着ぐるみに戸惑ってしまうのです。」

とはいえ、みんながみんな、着ぐるみを怖がるわけではないようですが…。

「それは発達の問題ではなく、その子の性格や特性によるものでしょう。個人的には、その子の育つ環境の影響が大きいと思っています。注意深く神経質に育てられれば慎重に、良くも悪くも大らかに育てられればあまり物怖じしなくなるという感じですね。」

「怖い!」を好奇心に変えてあげる、親からのひと押し

では、実際に着ぐるみを見て怖がっている子には、どうしてあげればいいでしょうか?

「怖がっているからと遠ざけてしまうのではなく、まずは『怖くないよ』という演出をしてみては。大きなものに上から見下ろされると怖いので、肩車したり、着ぐるみさんにしゃがんでもらったりして、なるべく目線をそろえる。そして状況を見ながら、『怖い』を『興味』に変える方向に持っていくのが大切です。『大きいけれど大丈夫なんだ』と思ってもらえたらいいですね。」

また、奥行きの理解が始まるころからが「本当に教育が大切なとき」だと寺見さん。

「このころから、自分の体験と感情と認知が結びつきやすくなるからです。びっくりするような事柄に出会ったとき、それを怖がるだけではなく、興味を持って関わってみようという心を育ててあげる。それが大事なのではないでしょうか。それによって、好奇心、興味・関心、積極性、自発性が育ち、やがて知的な発達へとつながると思います。」

ただし、「着ぐるみに関しては、どうしても怖ければ避け続けてもいい」と寺見さん。

「着ぐるみと触れ合わなかったからといって、その子の発達が止まるわけではありませんから。ちなみに、個人差はありますがだいたい3歳を過ぎてくると、自分のイメージの中のキャラクターと着ぐるみは別だと認識でき、怖がらなくなりますよ。」

着ぐるみを怖いと思うのも発達。怖くなくなるのも発達。そのときそのときの子どもの感情を成長のひとつとして受け止めてあげれば、親も大らかな気持ちでいられますよね。もし余裕があれば、怖くても勇気を持てるよう、子どもの背中を少し押してあげることも、親の大事な仕事かもしれません。

ライター紹介
岡本 有紗
2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

※2016年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。

この記事を読んでいる人は「好奇心」に関するこんな記事も読んでいます
・年齢別「子どもを伸ばす」コツ 乳幼児の好奇心育む「秘密道具」とは?
・子どもの好奇心をもっと育む! 幼児&小学生向け「おでかけ」のコツ
・発達障害の4歳息子が「おままごと」を! そこで見つけた心の成長とは?
・幼児や小学生におすすめ! 「おでかけノート」のアイデア&実例を紹介
・子どもの好奇心に火をつける「クッキング」【あそびのたね連載】
・【未来へいこーよ】が育むココロのスキル(非認知能力)について

SHARE ON
Facebook
Twitter
みらいこ編集部が子育てに関する記事を紹介します。

RELATED ARTICLEあなたにおすすめの記事

  1. おすすめ「乳幼児向け図鑑」5選 イラスト満載&100円の超格安も

  2. どの時期にどれで遊ばせる? 専門家が赤ちゃんからのおもちゃ選びを解説

  3. 【世界の子育て:ネパール】2歳からの超早期教育を熱望する理由とは?

  4. 【世界の子育て:フランス】学校は宿題禁止&ママ快適の労働環境

  5. 子どものスキー・スノボデビューは何歳から? アンケート結果を紹介!

  6. 子どものスマホ、いつから持たせる? 使い方・SNS・我が家のルール

    子どものスマホ、いつから持たせる? 使い方・SNS・我が家のルール

  1. A joyful family dancing together in a living room, arms raised and smiling at the camera.

    「いつでも遊んでいいよ」と言えるゲーム機。広告もゲーム内課金も…

    2026.09.30

  2. Young boy in a red cap runs in a race, with a blurred crowd watching in the background.

    運動会・発表会でつい他の子と比べてしまう…そんなときに大切なこと…

    2026.09.18

  3. Large moon sculpture at night towering over a city street festival with crowds and tall buildings nearby.

    中秋の名月を見上げながら親子で合唱! 無料で参加できるムーンア…

    2026.09.17

  4. Instructor with a name badge leads a workshop at a booth, while a presenter shows notes on a clipboard to several seated children; posters on the wall in the background.

    【いこーよサイエンス私学フェア2026 レポート】12校の生徒と先生が…

    2026.09.17

  5. Six people (three adults, three children) pose for a photo, each holding large round signs with colorful smiley faces in front of a wooden wall with writing and balloons nearby.

    【いこーよフェスタ2026 レポート】「好き」を語る大人と出会い、子…

    2026.09.17

  1. Bright blue electric passenger train on tracks under a clear blue sky, overhead power lines above.

    貸切ロマンスカーが1日限定の教室に 9月22日「走るAOiスクール」開…

  2. やりぬく力を育む絵本

    【年齢別】図書館司書に聞いた、子どもの「やりぬく力」を育てるお…

  3. 子どもの運動神経を伸ばすベストな方法は? 遺伝や工夫も紹介!

  4. やらない子育て

    通知表の成績が気になったら?結果より「プロセス」に注目してみよ…

  5. やらない子育て

    「やっぱり辞めたい」と言われたら…習い事は1か月で辞めてもいい?…

みらいこSNSをフォロー

子どもの未来を考える子育てサイト「未来へいこーよ」をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む