トップアスリートの親に学ぶ!子供をメダリストに育てる方法

たとえメダルに届かなくても、日の丸を背負い、ひたむきに挑戦し続けるトップアスリートの姿は、いつでも私たちの胸を熱くしてくれます。そんなトップアスリートを育てた親たちは、どんなことに気を付けて子どもを教育していたのでしょうか。専門家に聞きました。

トップアスリートの親の教育上の3つの共通点

「トップアスリートの親たちには、子育てにおいて多くの共通点があります。」

こう答えてくれたのは、「天才は親が作る」「天才を作る親たちのルール」などの著書で知られる、スポーツジャーナリストの吉井妙子さん。吉井さんが、トップアスリートの親たちへの取材を通して感じた、子育てにおける主な共通点を教えてもらいました。

  • 親自身がその競技が好き、もしくは親しんでいた
  • 子どもに考えさせる言葉がけをしてきた
  • 子育てそのものを心から楽しんでいる

「住んでいる地域や、親の職業、家族構成などに違いはあっても、これらの項目はほぼ共通しています」と、吉井さん。

中でも、「親自身がその競技が好き」かどうかは、子どもが将来、競技種目を選ぶ上で重要なポイントになると言います。

子どもが選ぶのは「親が好きな競技」

「親自身も、自分が好きなスポーツだと、つい熱心になります。子どもは、親が楽しそうにスポーツをしている姿を見て、『楽しそうだから、自分もやってみたい』と思うもの。そして、親と一緒にその競技に取り組むことで、子どもはさらにそのスポーツを『楽しい』『おもしろい』『好き』と感じるようになるのです。」

トップアスリートの親たちは、遊びの中でさまざまなスポーツを子どもに経験させていますが、子どもが最終的に選ぶ競技は、パパやママが一番楽しそうにしていたスポーツなのだそう。「私が取材した選手には、このパターンから外れた選手はいません」と吉井さんは断言します。

「子どもって、親が喜んでくれることが一番の幸せなんです。スポーツをしながらでも、無意識に親の顔を見て『ママがうれしそう』などと感じているもの。だからどんな競技を経験してみても、最後には親の好きな競技を選ぶのです。」

親が興味のないスポーツを子どもにさせても、関心の薄さが子どもに伝わり、子どもは「楽しい」と感じにくいそう。「子どもがやりたいのならしょうがないな」などという気持ちでいると、子どもはそれを察知して、その競技への興味が薄れていくのです。

「好き」という気持ちが上達をサポートする

とはいえ、親としては、子どもに向いているスポーツがあるならそれをさせたいという気持ちもあります。得意分野を見つける方法はあるのでしょうか。

「人によって、瞬発力と持久力、どちらが優位かという傾向はありますが、そうした生来の体質的なものよりも私は、“ゴールデンエイジ”を迎える前に、その競技を『好き』と脳にインプットさせるほうが大切だと思います。」

ゴールデンエイジとは、主に9歳〜12歳頃の運動能力が大きく伸びる時期のこと。このときに効果的なトレーニングをすれば大きな成長が期待できると言われています。

「ゴールデンエイジを迎えたときに、練習を飽きずに楽しく続けるためには、『この競技が好き』『楽しい』という気持ちがベースにあることが大切です。脳の仕組みから考えても、好きなことなら一生懸命吸収しようとしますからね。さらに、スポーツの上達には子どもが苦手な繰り返し練習が欠かせませんが、飽きずにそれを続ける心を支えるのも、やはり『好き』という気持ちなのです。」

自分で考えさせれば責任感が生まれる

しかし、いくら好きでも、すぐに飽きてしまうのも子どもの特徴。根気よく練習を続けさせるにはどうすればよいのでしょうか。

「例えば米メジャーリーグで活躍しているイチロー選手のお父様は、練習に飽きたときは無理強いせずに、相撲やかけっこに誘っていたそうです。そうしていろんなことをして遊んだ上で『やっぱり野球をしているときが一番かっこいいね』などと言うと『やっぱり野球をやる』と答えていたそう。そういう親の褒め方も継続させる一つのポイントだと思います。」

練習に飽きたからといって「やりなさい!」なんて無理強いすると、せっかく好きだったスポーツが嫌いになってしまうかも…。無理強いせずに、上手に褒めながら「楽しい」を継続させることが大切なようです。

「また、うまくいかないときに『こうしなさい、ああしなさい』と言うのではなく、自分で考えさせるクセをつけているのもトップアスリートの親の特徴です。」

「どうすればいいと思う?」とまず聞き、もし答えられなければ「ママはこう思うけど、あなたはどう思う?」などと質問の仕方を変えるのが考えさせるポイント。そこで「そうだね」と答えれば、たとえ親が提案したことでも、そこに子どもの意志が生まれます。

「自分で考え、納得したことなら、責任を持って取り組めるようになります。こうした『自分で考える力』は、子どもが成長した後も、あらゆる困難に立ち向かう力になるのです。」

子ども中心の生活を送れるかどうかがカギ

では、子どもが一つの競技を選んだとき、親としてできること、考えるべきことには、どのようなことがあるのでしょうか。

「まず、子どもが『この競技をやりたい』と言った時点で、『多少自分の時間を犠牲にしてでも子どもに付き合う』という覚悟が持てるかどうか。これが大きな分岐点だと思います。」

子どもの練習の送り迎えをするためにも、仕事が終わったらまっすぐ家に帰る。どんなに多忙でも、休みの日は子どもにとことん付き合うなど、トップアスリートの親たちは、睡眠時間やあらゆる付き合いを犠牲にしてでも、子ども中心の生活を送ってきた例が大半だそう。

親も子育て&子どものサポートを楽しむことが大切

「さらにどの親も、それを犠牲とは思っていないのも特徴です。『今思えば、成長した息子(娘)の活躍以上に、子育ての時間が楽しかった』と、みんな口を揃えます。」

離れた教室への毎日の送り迎えやお弁当作りなど、親でなければできないサポートはたくさんありますが、これらを心から楽しめる愛情が、何よりも大切なポイント。

「どんな選手にも、結果が追いつかなかったり、ライバルに負けたりして、競技をやめたくなる時期が必ずあります。そこで踏ん張りになるのが、献身的に支えてきてくれた親の姿。くじけそうな気持ちに歯止めをかけるのは、いつだってサポートしてくれた親の存在なのです。」

五輪でメダルを取った選手の多くが「親に感謝しています」と口にするのは、こうした背景があるからこそ。トップアスリートを育てるのは、心から子育てを楽しむ親の愛情なのですね。

スポーツを通して人生が豊かに

最後に吉井さんは、「たとえトップアスリートになれなくても、スポーツに一生懸命打ち込み、親の愛情に支えられた子どもは豊かな人生を送れる」と話します。

「阪神タイガースの藤浪晋太郎投手のお父様が、とても印象的なお話をされていました。『万が一、怪我などで野球の道が閉ざされても、晋太郎は努力の仕方を知っているから違う道に進んでもがんばっていける』と。」

普通なら諦めてしまいそうなところで踏ん張る力や、打開策を見つけるために考える力は、スポーツにとことん打ち込んだからこそ身につく力。これは、社会でも応用が利く大きな武器になります。

さらに、親の愛情に包まれて育つことで、「人に愛される人」になるとも吉井さん。

「親に愛された経験があるから、卑屈になることなく人を愛せる。だから人にも愛されるようになるのです。すると自然と周りに人が集まり、人生が楽しく豊かになるのです。」

子どもの人生が豊かになることは、親にとっては何よりの喜び。スポーツを通して子育てを心から楽しむことは、子どもの将来そのものをキラキラと輝かせることにつながるのですね。

お話を聞いたのは…
吉井 妙子さん
朝日新聞社を退社後、1991年からスポーツジャーナリストとして独立。「帰らざる季節——中嶋悟F1五年目の真実」で91年度ミズノスポーツライター賞受賞。一般のスポーツルポとは一線を画す、物事の本質に切り込む独自の手法で定評がある。スポーツに限らず人物ノンフィクションを手がけ、経済や芸術の分野でも幅広く執筆。「神の肉体 清水宏保」「天才は親が作る」など著書多数。
吉井さんの著書『サクラサク 女子7人制ラグビー日本代表サクラセブンズ オリンピックへの挑戦』

ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

※2016年8月にいこーよで公開された記事の再掲です。

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