近頃話題のプログラミング教育。小学生を対象にしたものが多いようですが、幼児から参加できるワークショップもあるのです。プログラミングというと難しそうに感じますが、子どもにとっては遊びと同じ感覚のようです。
幼稚園児でも楽しめるプログラミング
プログラミングというと、難しい「プログラミング言語」を書かなくてはいけないと考えてしまうのでは? ところが、必ずしもそうではないようです。アプリなどのボタンを使って、自分が意図したようにコンピュータを動かしたり計算させることができれば、それも立派なプログラミング。
幼児から参加できるプログラミングのワークショップを開催しているのは、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」渋谷校。まずは、子ども達が参加している様子を見学させてもらいました。
その日の内容は、iPadの「ScratchJr」という無料アプリを使って、動く絵本を作るというもの。
このアプリは、文字すら読めなくても、アイコンをパズルのピースのように繋げてプログラミングができます。ワークショップの参加は少人数で設定しており、当日は4月からの年長児が2人、小学1年生が1人の計3人。対して講師は2人と手厚いサポートです。最初に、講師が見本の作品を見せ、その後、使い方を説明していきます。
まずは、キャラクターを動かすところから。矢印のアイコンをいくつかつなげると、自分の好きなように動き始めます。左右に動いたり、回転したり、画面の外へ飛んで行ってしまったり。子ども達はそれだけで楽しそうです。
その後、キャラクターや動きのバリエーションを増やし、他のシーンも作っていきます。直感的に操作できるので、「できない!」などと辛くなってしまう子どもはいません。ロケットや地球をさまざまな方向に動かす子、恐竜をたくさん登場させる子、妖精と男の子のロマンチックなお話を作る子もいました。
お話ができあがって、時間前に満足して手を止めた子どもが1人、他の2人は時間ぎりぎりまでいろいろな動きを付けて楽しんでいました。最後にそれぞれの子どもが親御さんに見せます。とても満足したような表情が印象的でした。
子ども達に感想を聞くと、総じて「楽しかった。またやりたい」という答え。「恐竜がたくさん増やせて楽しかった」「声を出せるのがよかった」など、ニコニコして答えてくれました。親御さんは「子どもがゲームに夢中なので、作る方にも興味を持ってもらいたかった」など、ゲームばかりに向きがちな子どもの興味を、うまくシフトしてあげたいという意図があるようです。
子どもがプログラミングを楽しむメリットは?
「もともと小学校高学年向けに開催していたのですが、『低学年や幼児向けにも開いてほしい』というニーズが多くて始めたのです。」とお話しくださったのは、LITALICOワンダーの島田悠司さん。
「LITALICOワンダーでは、ブロックで組み立てたロボットをプログラミングして動かしたり、3Dプリンターを使ってものづくりをするなど、さまざまなコースがあります。
世間でニュースになりがちな“英才教育”的な観点よりは、造形教室に近いと考えています。ものづくりの新しいツールということです。」
確かに、子ども達の真剣な表情は、お絵かきや工作をしているときと同じように見えます。創造性を発揮できる場として、ゲームにはない要素がたくさんありそうです。
「学校の勉強では、どうしても答えを求められますが、図工やプログラミングは好きなようにやっていいのです。先ほどのワークショップでも、全員違う作品を作りましたが、それぞれに違う良さがあり、強みがあります。『人と違ってもいい』というマインドは一生役に立つと思います。」
確かに、先ほどのワークショップでは、お絵かきなどをしてキャラクター作りに精を出す子や、動きに興味を持つ子、お話作りが上手な子など、さまざまでした。
幼児期に始めることで、子どもの隠れた能力を引き出せる
現在の学校教育では、中学生からプログラミングの授業が始まります。それよりもずっと早い幼児期にスタートすることは、子どもにとってどのような意味があるのでしょうか。
「子ども達は、いずれiPadやパソコンに出会います。現代の日本では、ほぼ避けられないことですよね。最初の出会いによって、iPadやパソコンを『ゲームや動画再生をするためのもの』と考えるか、『自分で好きなようにものづくりができるツール』と考えるかで、その後の行動が変わってくるのではないでしょうか。」
親としては、後者だと考えてもらいたいもの。現代っ子のデジタルネイティブという特性は、「ものづくり」というキーワードと掛け合わせることで、大きな力になるのかもしれません。
「また、図工や絵が苦手な子どもでも、iPadならキレイに作れる、失敗したときに戻せるとわかると、絵を描いたり何かを作ったりするのが好きになる可能性もあるのです。」
手先の器用さが優れていなくても、プログラミングを通してアイデアやセンスを発揮できるかもしれないのですね。たくさんある子どもの可能性を、ある方向に伸ばせるひとつの分野ということなのでしょう。
自宅でもプログラミングを楽しめる
LITALICOワンダーで利用していたのは、iPadの無料アプリなので、自宅でも同じように楽しめます。
「『ScratchJr』のアプリは、年中くらいから始められると思います。パソコンでも、オンライン上で利用できる『Scratch』(https://scratch.mit.edu/)があり、こちらも無料です。アプリと比べると、よりプログラミング言語に近いものになっており、しっかり理解できるようになるのは小学校2〜3年生くらいからでしょうか。」
年齢はあくまでもめやすで、当然ながら個人差があるとのこと。「Scratch」のホームページで、子ども達はいろいろな作品を見せ合ったりしているそうです。
取材してみてわかったのは、島田さんも言うとおり、「英才教育」ではないということ。
絵を描いたり工作をしたりするのと同様に、子ども達が楽しく才能を開花させていくための、新しい表現ツールのようです。子どもは、パソコンで文字が打ちたければローマ字もどんどん勉強します。「やりたいこと」があるから学ぶのだと、改めて教えられたのでした。
お話を聞いたのは…
島田 悠司さん
テクノロジーを活かして社会課題を解決したいと2013年新卒でLITALICOに入社。入社1年目で、新規事業チームのリーダーに抜擢され「IT×ものづくり教室LITALICOワンダー」を一から立ち上げる。1号店である渋谷校教室長を経て、現在、LITALICOワンダー事業部にて事業推進/地域連携を担当。
LITALICOワンダー公式サイト
ライター紹介
栃尾 江美
1975年生まれ。コンピュータ会社勤務から、2005年にライターへ。アバンギャルド/WOOTS所属。雑誌や書籍、Web、広告など、ライトな読み物から堅めの記事までこなします。やんちゃな2人の男児がいる4人家族。子どもには、自分が大切にしているものを伝えたいと日々模索中。自然や生き物、本物の音楽や芸術に触れながら育ってくれるといいな。
※こちらは2015年4月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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