「胎内記憶」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「母親のおなかにいたときの記憶」というイメージはつきますが、具体的にどういうものなのか、それが親子関係にどう結びつくのか、理解している人は少ないのでは?ちょっと気になる胎内記憶のこと、お話しします。
3人に1人の子どもが持つ胎内記憶
「おなかの中にいる赤ちゃんには意識があって、外で起こっていることを理解し、ちゃんと記憶している。これが胎内記憶です。」
そう話すのは、胎内記憶のドキュメンタリー映画「かみさまとのやくそく」で監督を務めた、荻久保則男さん。「胎内記憶はある」と主張する人がいる一方、「そもそも胎児に意識なんてない。だから記憶なんてできない」と否定する人もいるそうです。人の記憶は、完全には科学で説明されていないため、このような意見の違いが出てくるのでしょうね。
「映画に出演していただいた胎内記憶研究の第一人者、池川明医師によれば、数千人の子供を対象にアンケートを実施したところ、3人に1人の子どもが胎内記憶を持っていることが分かった、とのことです。それだけたくさんの子どもが『覚えている』と話すのであれば、わざわざ否定する必要もないと思います。」
3歳~4歳が胎内記憶を聞き出すチャンス!
ところで、胎内記憶について、子どもたちはどんなことを話すのでしょう。荻久保さんによると、次のような話をする子が多いと言います。
「お風呂の中みたいで気持ちよかった」
「お喋りしている声が聞こえていた」
どうやら、おなかの中で目は閉じていても、外の様子を認識しているようです。
ちなみに、
胎内記憶を話す年齢は、ママと過ごす時間が長く、語彙も豊富になってきた3歳~4歳が多いとか。
「成長して、友達と遊ぶ時間が増えるとともに、子どもたちは社会性を学ぶ段階に入ります。そうなると、自然と胎内での記憶を忘れてしまうのか、話さなくなる子が多いようです。」
ママとたくさん会話をするようになる時期が、胎内記憶を聞き出すチャンス!というわけですね。
「ママも知ってるよ」が聞き出すコツ
しかし、ママから聞こうとしても「おかしなことを言う」と親に思われたくないのか、なかなか話さない子どももいるとか。荻久保さんは、胎内記憶のことを子どもに聞くときは、ちょっとしたコツがあると話します。
「『ママのおなかの中って、どんな感じだった?』などと聞くよりも、例えば、いっしょにお風呂に入っているとき『ママのおなかの中みたいで気持ちいいね』などと、自分に胎内記憶があることを、
さもお母さんも知っているという風に話すのがおすすめです。」
ママも知っているんだ、と感じることで、子どもたちは思っていることをありのままに安心して話すことができるのだそう。そして、
いろいろと話しはじめたら「それはママも知らなかったな」「そうなんだ」と、興味をもって聞いてあげることが大切だといいます。
「『嘘でしょ』などと否定すると、子どもは口を閉ざしてしまいます。
お母さんは味方だと感じることで、より話しやすくなるようですよ。」
どうしても本当なの?と疑ってしまう内容もあるかもしれませんが、子どもが話すことが事実なのか、空想なのかは、あまり大切なことではないということですね。子どもが話したいことを、ありのままに聞いてあげることで、そこに親子の信頼関係が生まれるようです。
ママと子どもならではの信頼関係を作る
胎内記憶を聞くことは、親子の絆を深めるきっかけにもなると荻久保さん。
「妊娠中は、お母さんと赤ちゃんが時間を共有するとき。それを、生まれたあとも胎内記憶として共有することで、親子の間に共感が芽生えるようです。映画の撮影を通して、
その共感の意識が、親子ならではの深い信頼関係を作るのだと感じました。」
中には「お空からお母さんを見て、お母さんの子どもになりたいと思って生まれてきたんだよ」と話す子どももいるとか。
「神秘的な話をしても否定せずに受け入れてあげてほしいですね。胎内記憶を聞くことで、絆が深まる親子が増えてくれればと思います。」
科学的な根拠はまだ証明されていないため、否定的な意見も多い「胎内記憶」ですが、母親と子どもだけが共有している約10カ月という妊娠期間を、もし子どもが覚えていてくれるなら、そんな楽しいことはありませんね。もし機会があれば、子どもたちに胎内記憶を聞いてみてはいかがでしょうか。
お話を聞いたのは…
荻久 保則男さん
劇映画やドキュメンタリー番組の撮影スタッフとして活躍後、映画監督に。制作・撮影・編集まで手がけた、胎内記憶とインナーチャイルドをテーマとした作品「かみさまとのやくそく」が、現在ロングラン上映中。
映画『かみさまとのやくそく』公式サイト
ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。
※こちらは2015年3月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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