チームラボの建築集団が保育園を設計した理由「建物が教育の装置になる」とは?

つくる人
たゆまぬ努力を続け、生産品に愛情を注ぎ、好奇心や探求心、情熱を常に持って暮らしている「つくる人」にお話を伺い、人として生きていくのに必要なものに迫るインタビュー。

未来:「チームラボ」はデジタルやアートのイメージが強いですが、実際にキッズラボ南流山を訪れてみると、デジタル要素がとくにないのが驚きでした。

そうですね。これからの情報化社会を生き抜くために、幼児期に「教育の装置」として学ばせておきたいこととして「多様性」と「空間把握能力」が必要だと感じているのですが、それを実現させるために必要であればデジタルを使いますし、必要なければ使わないということです。

キッズラボ南流山 ネット遊具

園内には1階の砂場から2階のネット遊具が見えるなど、立体的な遊びが随所に盛り込まれている。壁にはさまざまな原色を大胆に使ったり、多角形の通路や部屋で「中心を作らない」など多様性を自然に学べる工夫が特徴だ。

未来:なるほど、デジタル要素はあくまで手段であるということですね。それでは幼児期に学ばせたい能力として「共創」と「多様性を受け入れる」「空間把握能力」が必要だと思う理由は?

インターネットが入る以前の2000年代と今を比べると、働き方も、コミュニケーションも、全部が変わっているんです。僕らはその変化を実際に経験しているんですけど、もう忘れちゃっているぐらい当たり前になっているんですよね。

これから先も社会って大きく変わりますし、究極的には身体そのものが変化してしまっているかもしれない。今の子どもたちが大きくなるころは、我々にはもはや想像ができないくらい世の中が変化していると思います。

「多様性」という言葉は、一般的には「いろんな人と仲良くした方がいい」というふうに捉えがちです。でも、社会の問題は、とても複雑化しています。例えば、昔は営業なら営業の人だけでチームを作って、ミッションに取り組んでいく手法だったんですけど、今の複雑なものづくりの場面では、いろんな職業の人がひとつの問題に取り組まないと解決できないようになっています。

「チームラボ」という組織で見ても、いろんな職能の人が集まって、自分とは違う技術を持った人と何かを一緒に創っています。単純に仲良くすればいいのではなく(例え仲がよくなかったとしても)自分とは違う考え方や能力を持った人とモノづくり(ミッション)を進めていく。それが「多様性」であり「共創」なのです。このように「働く」というキーワードで考えたとしても、多様性が必要です。

未来:確かに「働く」ことに限らず、学校でも多様な人たちと協力しあう場面はありますし、結婚したり子どもができたりして他人と暮らすことも、多様性を認めて生きていくといえます。

つまり多様性を受け入れていかないと、生きていくうえでのいろんな問題が解決しない事が一つ。さらに「空間把握能力」とは、物体同士の空間的な関係を理解し、記憶する能力のことで、近年では「言語能力」や「数学力」に匹敵するほど重要だと言われています。

じつは人間は脳が体に指示を出しているだけでなく、体の中のあらゆる臓器や細胞がダイナミックに情報交換を繰り広げて「巨大な情報ネットワーク」を作っています。例えば、身体を動かす筋肉や骨が、記憶や空間把握能力にかかわる脳の「海馬」の発達や記憶への指示をしていることが最近の研究でわかりました。

ネズミの実験ですが、多様で複雑な空間を探索したネズミの海馬は、そうでないネズミの4万倍も多くの神経細胞を持ち、海馬の体積を15%増加させて、高い空間把握能力を持っていました。

「空間把握能力」とは、空間だけの話ではなく、立体的に世界をとらえたり、物事を考えたりする能力につながっていくものだと私たちは考えています。

くわしくは「チームラボアスレチックス 運動の森」の紹介ページに詳しく書いてありますが、実際にキッズラボ南流山の事例でいうと、園内は道がまっすぐじゃなかったりするので、大人は慣れるまですんなり歩けなかったりするんです。でも、プレオープンで初めて遊びにきてくれた子どもは、多角形でできた部屋をものすごい勢いで走って横断したり、不安定な網の上も臆せず乗ったりしていました。大人は視覚で周辺の情報を把握するんですけど、子どもは視覚で把握してるんじゃなくて、体で把握しているんです。

キッズラボ南流山 ネット遊具

未来:なるほど、「空間把握能力」はもともと子どもの頃から持っているものではあるのですが、小学校に入ると机に座って勉強することが増えることもあって、大人になるにつれてだんだん衰えやすい能力なんですね。これからの人生において重要になる「共創」と「多様性を受け入れる」ことと「空間把握能力」が、普通に遊んでいるだけで身につけられる「教育の装置」としての建物は、とても価値があるものに感じました。

「共創」や「多様性」「空間認識能力」については「なんとなく重要そう」と感じている人は多いですが、言葉にして説明するのは大人でも難しいもの。言葉にしにくいからこそ、体で覚えられる仕組みになっているというのはいいですよね。後編では河田将吾さんの子ども時代と建築家になるまでのエピソードを通して、河田さん自身が生きていくための力にしていたことを語っていただきます。また、キッズラボ南流山についてはレポート記事もありますので、ぜひご一読ください(KAZ)

「チームラボ」の建築家が母から教わった「まずいことを楽しむ」生き方とは?(インタビュー後編へ)

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5歳の息子と2歳下の妻と暮らすパパで、息子が成長していくにつれて「育児が最高におもしろい!」と気づいて、某ゲーム雑誌編集部からアクトインディに入社。発達がゆっくりな息子と向き合いながら、毎日笑いの絶えない生活を送る。子育て以外ではゲームとお酒が好き。息子の影響で鉄道にも詳しくなった。

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