大学生や新入社員がなる病気だと思われがちな五月病。実は、幼児や小学生でも五月病になるってご存知ですか? そもそも、五月病ってなぜ起こるのでしょうか。その対処法は? 専門家に聞いてみました。
環境の変化が原因
「実は五月病は、病院で正式に使われる医学用語ではありません。つまり、病院で五月病だと診断されることはないのです。」
そう話すのは、谷町こどもセンター(大阪市)の所長を務める、臨床心理士の日下紀子さん。医学用語ではないため、正式な定義もないのだといいます。
では、一般的に言われている五月病とはどういうものなのでしょうか。
「環境の変化に順応しようとがんばりすぎると、心の緊張がずっと続き、ストレスが蓄積されていきます。それがゴールデンウィークなどの長期休暇に入ることで気が緩み、張り詰めていた糸が切れてしまうのです。そこで表れる無気力や気分の落ち込みといった症状を、総称して五月病と呼んでいます。ですから、子どもでも五月病になる可能性は十分あります。」
幼稚園や保育園への入園、小学校入学などは、子どもにとって大きな環境の変化。緊張や不安を感じてもおかしくありませんよね。
五月病になりやすい性格
日下さんは、子どもの性格に注目してほしいと話します。
「真面目でがんばり屋さんな子どもほど『きちんとやろう』という気持ちが強いもの。だからこそ、自分でも気づかないうちにストレスを溜め込んで、心が疲れてしまうのです。」
糸が張り詰めている分、プツリと切れたときの反動も大きそう。
「学校が始まっても、心の疲れが回復していないと症状は続きます。環境の変化があった場合は、休日の子どもの様子に注意してあげてほしいですね。」
チェックしたいSOSのサイン
子どもの五月病のサインには、次のようなものがあります。
- 表情がなんだか暗い。喜怒哀楽が感じられない
- 口数が減った
- 寝つきが悪い
- 食欲不振
- それまで好きだったテレビやおもちゃに興味を示さない
- 行動的でなくなる
- 園や小学校に行きたがらない
- 不機嫌になりやすい
「こうした症状は、子ども自身も原因がわからず戸惑っているものです。だからこそ、ママが早く気付いてあげることが大切です。」
早期発見が、症状を軽減させることにつながるそうです。
先生には隠さないで伝える
では、五月病のサインに気づいたら、どんなフォローをしてあげればよいのでしょうか。
「心と体のエネルギーが下がっている状態なので、まずはのんびりと過ごさせてあげること。充電期間だと思って、やりたがらないことがあれば少し手伝ってあげるくらいがいいでしょう。」
食後のお片付けや翌日の学校や園の準備など、いつもなら自分でできることをやらなくても、あんまり怒らないでほしいと日下さん。リラックスできる環境を、おうちに作ってあげることが大切なのだといいます。
また、園や小学校の先生と連携を取るのも効果的な対処法だとか。
「先生に子どもの状況を話しておけば、いつもと様子が違っていても理解してもらえます。学校と家庭の両方から見守ってあげられればより安心ですね。」
疲れた心にそっと寄り添っていけば、自然と治っていくのが五月病の特徴。
「個人差はありますが、1~2週間程度で元気を取り戻す子どもが多いようです。新しい環境にも慣れてきて、自分にちょうどいいがんばり方も覚えますよ。」
ママの言葉で気持ちが軽くなる
五月病の予防は、ママの声かけがポイントなのだそうです。
「例えば、宿題がなかなか片付かないときなどは、『だんだん慣れてくるよ』『焦らなくていいよ』と声をかけてあげてください。ママのそうした言葉が、子どものプレッシャーを軽くしてくれます。」
新しいルールに適応しようとがんばっている時期だからこそ、家では『○○しなさい!』と、プレッシャーを増やさないようにしてあげてほしいと日下さん。
「成長の歩みは、人によって歩幅が違うもの。子どもの歩幅に合わせながら、焦らずに見守ってあげてくださいね。」
お話を聞いたのは…
日下 紀子さん
臨床心理士。教育学博士。精神科の診療所で臨床心理士として活躍後、親子のカウンセリングを行う「谷町こどもセンター」(大阪市)へ入所。現在は所長として、12名の臨床心理士と共に、日々親子の成長をサポートしている。
ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。
※2015年5月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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