大人でも、男性と女性では考え方や性格が違うように、子どもでも男女で基本的な性格が異なるもの。それでは、男の子と女の子では効果的な叱り方も変わるのでしょうか? 男の子、女の子それぞれが、すんなり受け入れてくれる効果的な叱り方について専門家に聞きました。
男の子は「行動」女の子は「言葉」でお友達と仲良くなる
そもそも、男の子と女の子では、性格にどういった違いがあるのでしょうか。
「もっとも違いが見られるのは社会性の発達です。具体的に言うと、人と親密な関係を築く方法が、男の子と女の子では違うんですよ。」
こう答えてくれたのは、NPO法人子育て学協会会長で、チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美さん。
「例えば女の子は『あなたは髪の毛が長いね。私と同じだね。』など、共通項を見つけるような会話を通じてお友達を作っていきます。一方で男の子は、誰かが走り出したら自分も一緒に走るという具合に、同じ行動をとることで仲良くなっていくのです。」
女の子が共感や協調を「言葉」で理解するのに対し、男の子は「行動」で理解するのがポイント。だから男の子は、叱るときも褒めるときも、声のトーンや表情などを少しオーバーに表現したほうがわかりやすいのだと言います。逆に女の子は、言葉そのものを理解できるので、落ち着いた口調でも大丈夫だそう。
小さな頃から、男女では性格にずいぶん違いがあるものなのですね。
男の子と女の子、性格の違いで叱り方もこんなに違う!?
さらに山本さんは、子どもを叱るときに注意したい男女の性格の違いについても教えてくれました。
男の子は「プライド」を傷つけないこと
「男の子を叱るときに気をつけてほしいのが、絶対に人前で恥をかかせてはいけないということ。男の子は3歳くらいから、相手にどう見られているのかをとても気にし始めます。『僕ってすごいんだぞ』と思いたいのが、男の子の本質なんです。」
人前で叱ると、男の子は「ママは自分がかっこ悪いところを人に見せつける人だ」と思って、ママの言うことを聞かなくなってしまうのだとか。
女の子は「言われなくてもわかっている」を表に出して
一方で女の子は「人と比較をしない」ことが重要だと言います。
「女の子は男の子よりも、物事を客観的に見られます。だから、お友達より自分の描いた絵が下手だと感じたらその絵を隠す、といった行動をとるのです。つまり、自分の状況は人に言われなくてもわかっているということ。それなのに『あの子はちゃんとできるのに』なんて比較をされたら、『そんなことわかってる!』と反発したくなるのです。」
男の子はプライドを傷つけないこと、女の子は「わかっている」前提で話をするのが、叱り方のポイントのようです。
男女別の具体的な叱り方
では具体的に、男の子と女の子では、効果的な叱り方がどう変わるのでしょうか。「スーパーで走りまわる子どもを叱る」というシチュエーションで、男女別の叱り方を教えてもらいました。
【男の子の場合】「ママの感情が言葉以外でも伝わるように」
- まず人目につかない場所に連れていく
- 最初の一言目で「ここって走っていいのかしら?」など、子どもが考えるような言葉がけをする
- 真剣な表情で目線を合わせ、声のトーンも落として、ママの感情が言葉以外でも伝わるように叱る
男の子のプライドを傷つけないためには、叱る場所が大切。また、男の子は女の子ほど客観的に物事を見られないので、なぜ怒られているのか、基本的にはわかっていないことが多いのだといいます。だから、「ここって走っていいのかしら?」とまず聞くことで「あ…ここは鬼ごっこする場所じゃなかったんだ」などと改めて考えるそう。
さらに、最初の一言目にズバッと叱るのもポイントの一つ。「こら」「だめでしょ」なんて優しい口調で注意しても、ママの感情が伝わらない上、遊んでくれていると勘違いしかねません。
【女の子の場合】「わかっている前提で優しい口調」で話すこと
- 「本当はわかっているんだよね」と最初に必ず言う
- 優しい口調、言葉選びを心がける
女の子は基本的に、なぜママが怒っているのかわかっているので、まずは「わかってるよね〜」と言ってあげること。それだけで「うるさいな!わかってるよ」という反発心を抑えられます。さらに女の子は、言葉の吸収力が高いがゆえに、ママの使う強い言葉を真似してしまう傾向が。
「『いいかげんにしなさい!』などの強い言葉をママが使うと、女の子はそれを友達にも使います。そうした強い言葉は、人間関係のトラブルを招く要因にもなりかねません。」
「男の子に力の加減を教えるように、言葉の発達が早い女の子には『言葉の取り扱い方』をちゃんと教える必要がある」と山本さん。例えば「嫌い」ではなく「苦手」など、優しい言葉を教えてあげることで、まわりのお友達にもそうした言葉を使える子どもに育つそうです。
確かに言葉は大きな武器。使い方を間違えると人を傷つけてしまいます。だからこそ女の子の前では、叱るときでも、ママ自身が言葉の選び方に気をつける必要があるのですね。
長時間、感情的に叱るのはNG
男女で異なる叱り方のコツ。とはいえ、共通する「叱るときの注意点」もあるそうです。
「まず絶対にやめてほしいのは、『長時間、感情的に怒る』こと。感情をあらわにして長時間怒ると、子どもはなぜ怒られているのかを理解する前に恐怖心が出てしまいます。すると、怒られた内容よりも『怖かった』『不安だった』という気持ちだけが心に残ることになります。」
「叱る」と「怒る」の違いは、「諭す」要素が入っているかどうか。諭すのが「叱る」であれば、「怒る」はただ感情的に怒鳴ることと同じだ、と山本さんは言います。
「とはいえ親だって人間ですから、ついカッとなって怒鳴ってしまうことだってあると思います。そこで覚えておいてほしいのが『叱るときは、子どもの体に触れながら叱る』ということ。手を握るなど、体が触れている状態だと、人は不思議と怒りのボルテージが下がるのです。」
また、子ども自身も、ママの体に触れているだけで安心感が得られ、不安感が和らぎます。
「さらに、最後に必ず『あなたのために言っているんだよ』という、期待を感じる一言を忘れないでほしい」と山本さん。
「パパママだって、できれば子どもを叱りたくはない。でも、『この子が将来困らないように、教えておかなくてはいけない』と思うからこそ叱るのです。期待を持っているから叱るんだ、ということを最後でいいから伝えれば、親の愛情がちゃんと子どもに伝わり、不安や恐怖心だけが心に残ることを防げますよ。」
男女別の叱り方でかしこく叱った後は、期待を感じる言葉でママの愛情を伝えてあげればよいのですね。
お話を聞いたのは…
山本 直美さん
チャイルド・ファミリーコンサルタント。株式会社アイ・エス・シー代表。NPO法人子育て学協会会長。日本女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。幼稚園教諭を経て、95年にアイ・エス・シーを設立。保護者と子どものための教室『リトルパルズ』を開設し、現在は「ウィズブック保育園」を開設、運営し、独自の教育プログラムや保護者向けの子育てに関する学びを提供している。08年にはNPO法人子育て学協会を設立、キッザニアのプログラム監修などの実績がある。『子どものココロとアタマを育む毎日7分、絵本レッスン』ほか著書多数。
子育て学協会
ライター紹介
近藤 浩己
1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。
※2016年9月にいこーよで公開された記事の再掲です。
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