【森のようちえん】園庭は海と山「海の保育園」の魅力と伸びる力・カリキュラム(神奈川県逗子市「うみのこ」)

海の保育園「うみのこ」の1日のスケジュール 

朝、子どもたちと向き合う保育士の山ノ井怜生さん

 そんな「うみのこ」の1日のスタートは、9時45分。

次々に集まってきた子どもたちと保育士の山ノ井さんらの「朝の集い」からはじまります。そこで子どもたちに保育士が最初に問いかけるのは「今日、(あなたは)何をしたい?」という言葉。

問いかけられた子どもは、その日の天候や自分自身が夢中になっているものを考えながら、午前中の過ごし方を考え、選択します。

「できた!」と自分のベンガラ染めを見せてくれる子ども。和紙をやぶかないようにそっと開いてカメラにポーズ

【取材をした日のスケジュール】
9:45  登園 朝の会
10:00 うちわづくり
10:30 海へ行くグループと料理をするグループに分かれる
12:00 お昼
13:30 午睡。午睡しない子どもは皆で飼っている蚕が食べる桑の葉を取りにお散歩
15:00 おやつ
15:30 帰宅

取材した日は、前日に子どもたちが造形の時間に作った「ベンガラ染め」の和紙を使ったうちわ作りと、カレー作りの作業が用意されている日でした。もちろん環境は用意されていますが、いつも通りの外遊びを選ぶ自由もあります

この日はたまたま全員がまずうちわを作ることを選び、その後は海へ行く子と、教室に残ってカレーを作る子どもに分かれました。

「海の保育園」で伸びる力ー自分で選ぶから生まれる、考える力

うちわづくりの造形時間。自分の染めた和紙を使って作るうちわに真剣な表情の子どもたち

造形の時間を担当して2年目になる大曽根佳美さんに「うみのこ」の子どもたちの印象を聞いてみると「はっきり意思を表現します。『〇〇したい』『〇〇がすき』『〇〇が楽しい』と力強く意思を主張する力が、表現にも出ています」と、自分で選ぶことが育む力を教えてくれました。

幼稚園、小学校、中学と、毎日を自然の中で過ごす中で育まれる力が、形となって見えるとき

「うみのこ」の園庭。子どもたちが植えた野菜畑では虫取りもできる

コロナウィルスによる自粛期間中、海に繰り出すことを控えていた「うみのこ」や、「とびうおクラブ」の子どもたちは、地元養蜂家の協力で養蜂場に作らせてもらった森の基地へ向かうことが多く、地域に自生している桑の実やキイチゴ、フキノトウなどを獲って食べることに夢中になりました。

そんな子どもたちの中に、山の細い笹を切って、家庭菜園用のエコ支柱にすることを思いついた小学生がいました。休校中、たっぷりとあった時間に森を走る中で「トレイルを整備しよう!」と笹藪を開きはじめてみたら、刈った笹は資源として再利用できることに気づいたのです。

笹をエコ支柱として使いやすいように長さを整えてみると切れ端が残り、「これはエコストローに使えるな」と、アイディアはどんどん膨らみます。エコストローにはやすりをかけ、きちんと熱湯で消毒し、最終的には笹のエコ支柱を5本100円で、エコストローを1本20円で路上販売して、自分たちのトレイルランニングの遠征資金を作り出しました。

また別の小学6年生グループは、海でひろったプラスチックを集めてキーホルダーを作ったり、「消しゴムかすはマイクロプラスチックとして海を汚すから」と天然ゴム製の消しゴムを仕入れて販売したりしていました。

共同購入や、もったいない野菜の販売コーナーも園内に設置されている

「学校が休校になって『暇だなー』『自分たちでできる面白ことはないかなー』となったとき、『自分で考えて自分で動く力』がうまれました。小さなころから積み重ねた自然の中での経験が繋がって、新しいアイデアと実現する力が噴き出すように生まれていたんです。大人がコントロールしない時間が生まれたことで、子どもが本来持っている、自ら学ぶ力を見せてもらったような感覚がありました」(前出・小野寺さん)

次のページへ>「うみのこ」でなぜ「生きる力」が育まれるのか?

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出版社、教材編集を経て2013年に「いこーよ」へ。小学生の女の子2人のママ。大学院、モンテッソーリ教育教師、華道、ダイビング資格有。ライフテーマは幼児教育から小学校、中学校、高校、大学、社会人へとどのように学びをつなげていくか。特に幼児教育から中学受験への連携に日々奮闘中。

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